注一 労働者トハ力役マタハ智能ヲモッテ公私ノ生産業ニ雇傭セラルル者ヲイウ。シタガッテ軍人・官吏・教師等ハ労働者ニアラズ。タトエバ巡査ガ生活権利ヲ主張スル時ハソノ所属タル内務省ガ決定スベク、教師ガ増給運動ヲナス時ハ文部省ガ解決スべシ。労働省ノ与カルトコロニアラズ。 |
労働賃銀
労働賃銀ハ自由契約ヲ原則トス。
ソノ争議ハ前掲ノ法律ノ下ニ労働省コレヲ決定ス。
注一 自由契約トセル所以ハ国民ノ自由ヲスべテニ通ゼル原則トシテ国家ノ干渉ヲ背理ト認ムルニヨル。真理ハ一社会主義ノ専有ニアラズシテ自由主義経済学ノ理想ニマタ犯スべカラザルモノアリ。等シク労働者トイウモ各人ノ能率ニ差等アリ。特ニ将来日本領土内ニ居住シマタハ国民権ヲ取得スル者多キ時、国家ガ一々ノ異民族ニツキソノ能率ト賃銀トニ干渉シ得ベキニアラズ。現今ニオイテハ資本制度ノ圧迫ニヨリテ労働者ハ自由契約ノ名ノ下ニ全然自由ヲ拘束セラレタル賃銀契約ヲナシツツアリ。シカモ改造後ノ労働者ハ真個ソノ自由ヲ保持シテイササカノ損傷ナカルべキハ論ナシ。 |
労働時間
労働時間ハ一律ニ八時間制トシ日曜祭日ヲ休業シテ賃銀ヲ支払ウべシ。
農業労働者ハ農期繁忙中労働時間ノ延長ニ応ジテ賃銀ヲ加算スべシ。
注 説明ノ要ナシ。タダシ余ノ時間ヲモッテ修養ニ享楽ニ自由ナル人権ニ基ヅキテ、家庭的労働ヲナシマタ他ノ営業ヲナスハ等シク個人ノ自由ナリ。 |
労働者ノ利益配当
私人生産ニ雇傭セラルル労働者ハソノ純益ノニ分ノ一ヲ配当セラルベシ。
コノ配当ハ智能的労働者およびカ役的労働者ヲ総括シタルモノニシテ、各自ノ俸給賃銀ニ比例シテ分配ス。
労働者ハソノ代表ヲ選ビテ事業ノ経営計画オヨビ収支決算ニ干与ス。
農業労働者ト地主トノ間マタコレニ同ジ。
国家的生産ニ雇傭セラルル労働者ハコノ利益配当ニ代フルベキ半期ゴトノ給付ヲ得ベシ。事業ノ経営収支決算ニ干与スル代リニ衆議院ヲ通ジテ国民トシテ国家ノ全生産ニ発言スベシ。
注一 労働者ハソノ労働ヲ売却スルモノナリトハ旧派経済学ノ誤説ナリ。企業家ガソノ企業的能力ヲソノ資本タル機械・鉱山・土地等ニ加エテ利益ヲ計ルト同ジク、労働者ハソレラノ資本ニ労働ヲ加エテ利益ヲ計ル者ナリ。機械ソノモノハ人類ノ知識ヲ結晶シタリ祖先ノ遺産タリ、社会ノ共同的産物タリ。鉱山土地等ソノモノハ全ク自然ノ存在ニシテソレヲ所有セシムルスベテノ力ハ国家ナリ。シカシテコレラノ資本ヨリ利益ヲ得ントシテココニ各種ノ人力ヲ要ス。企業家ハ企業的能力ヲ提供シ労働者ハ智能的力役的能力ヲ提供ス。労働者ノ月給マタハ日給ハ企業家ノ年俸ト等シク作業中ノ生活費ノミ。一方ノ提供者ニハ生活費ノミヲ与エテソノ提供ノタメニ生レタル利益ヲ与エズ他方ノ提供者ノミ、生活費ノホカニスべテノ利益ヲ専有スべシトハ、ソノ不合理ニシテ無智ナルコトホトンド下等動物ノ社会組織トイウノホカナシ。労働者ガ経営計画ニ参与スルノ権ハコノ一方ノ提供者トシテナリ。 |
労働的株主制ノ立法
私人生産業中株式組織ノ事業ハソレニ雇傭サルル肉体的精神的労働者ヲシテ、ミズカラソノ株主タリ得ル権利ヲ設定スべシ。
注一 コレ自己ノ労働ト自己ノ資本トガ不可分的ニ活動スルモノナリ。事業ニ対スル分担者トシテノ当然ナル権利ニ基ヅキテ制定サルベシ。別個生産能率ヲモ思考スベシ。 |
借地農業者ノ擁護
私有地限度内ノ小地主ニ対シテ土地ヲ借料スル小作人ヲ擁護スルタメニ、国家ハ別個国民人権ノ基本ニ立テル法律ヲ制定スべシ。
注一 限度以上ノ土地ヲ分有セシムル大本ハ別ニ存セリ。シカモ小地主対小作人ノ間ヲ規定シテ一切ノ横暴脅威ヲ抜除スベキ細則ヲ要ス。 |
幼年労働ノ禁止
満十六歳以下ノ幼年労働ヲ禁止ス。コレニ違反シテ雇傭シタリ者ハ重大ナル罰金マタハ体刑ニ処ス。
尊族保護ノ下ニ尊族ノ家族ニオイテ労働スル者ハコノ限リニアラズ。
注 国民人権ノ上ヨリ説明ヲ要セズ。満十六歳以下トセルハ下掲ノ国民教育期間ナルヲモッテナリ。体刑ヲ課スル所以ハ国家ノ児童ヲ保護スルニ最モ厳励ナルベキヲモッテナリ。実ニ国家ノ生産的利益ノ方面ヨリ見ルモ幼童ニシテ残賊スルヨリモソノ天賦ヲ完全ニ啓発スべキ教育ヲ施シタル後ノ労働ガ幾百倍ノ利益ナルハ論ナシ。四海同胞ノ天道ヲ世界ニ宣布セントスル者ガ、ミズカラノ国家内ニオケル幼少ナル同胞ヲ酷使シテ何ノ国民道徳ゾ。 |
婦人労働
婦人ノ労働ハ男子ト共ニ自由ニシテ平等ナリ。タダシ改造後ノ大方針トシテ国家ハツイニ婦人ニ労働ヲ負荷セシメザル国是ヲ決定シテ施設スベシ。
国家非常ノ際ニ処シ婦人ガ男子ノ労働ニ代フリ得べキタメニ男子ト平等ナル国民教育ヲ受ケシム。(国民ノ生活権利」参照)。
注一 現時ノ農業発達ノ程度リオイテハ婦人ヲ炎天ニ晒ラシテソノ美ヲ破リ、マタハ貧困者多キ近キ将来ニ
オイテハ婦人ヲエ揚ニ駆使シテソノ渠ヲ奪ウコトキ止ムヲ得ザル人間生活ナリ。シカシナガラ大多数婦人ノ使命ハ国民ノ母タリコトナリ。妻トシテ男子ヲ助クル家政労働ノホカニ、母トシテ保姆ノ労働ヲナシ、小学教師ニ劣ラザル教育的労働ヲナシツツアル者ハ婦人ナリ。婦人ハスデニ男子ノアタワザル分科的労働ヲ十二
分ニ負荷シテ生レタル者。コレラノ使命的労働ヲ廃セシメテ全ク天性ニ合セザル労働ヲ詫スルハ、タダニ婦人ソノモノヲ残賊スルノミナラズ。直ニソノ夫ヲ残賊シソノ子女ヲ残賊スル者ナリ。コノ改造ニヨリテ男子ノ労働者ノ利得ガ優ニ妻子ノ生活ヲ保証スルニ至ラバ、良妻資母主義ノ国民思想ニヨリテ婦人労働者ハ漸次的ニ労働界ヲ去ルベシ。 |