東洋の解放 対米、対支関係のすべての問題が今後に於ても、否将来引きつづき我国に重要性あるは茲に論ずるまでもないことだが、と同時に印度、海峡植民地、マニラ等々の解放運動の齎らす結果についても十分の考慮を払ふの必要がある。その結果をただ単に俟つと云ふばかりでなく東洋唯一の先覚としていかにその解放運動に対すればよいか、尚進んでいかに指標すべきかを考ふべきである。これ等の弱小民族がただいま如何なる地位におかれて、いかなる艱難と闘つているかをきわめてそれに対応策を与へ、場合によりては彼等の為めに一肌脱ぐこそ我々に与へられたる大任務ではあるまいか、それを剴切に指導し、助成し得るものは我国を措いて他にないのである。我々は勿論我国が当面しつつある内外政局の多難は知つている。我国のすべての解放運動の緒についていないことも知つている。しかし先覚者としての任務としてここに一つの大きな課題の加重さるることは栄誉ある当然とせねばならぬ。正義と任侠を伝統として誇る我民族が世界人類のために喜んで考へねばならぬ事実だ。彼等が人間としての光を見ることのできないことは自分一代だけでとどまらず、その子の時代も、孫の時代も民族的に、経済的に、政治的に二重三重の鉄鎖でつながれ、苛斂誅求のかず/\を課せられる。真に国に独立なき人々ほど惻隠なものはない。こうした人々が我々と等しく文明や、文化の光りにひたり得る日を我々は思はねばならぬ。これ等の国の現存する個々の生活の悲惨や、様相やは今後本誌の上で研究を積んで行きたいのであるが、我々はこれと同時にこうしたいくつもの国の圧迫された多数民族が社会的に、経済的に、完全なる解放を期すべく努力したい。我々は今からこの大目標に向つて徐々と歩いて行くことの人類の至高の任務であると信ずるから。 『改造』四年五月号
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