情報局撰定国民歌(一等入選歌詞)

   必勝歌

一、今日(けふ)よりはかへりみなくて大君(おほきみ)
   しこの御楯(みたて)といでたつ我(われ)
    ああ 防人(さきもり)の昔(むかし)より
    みたみ我等(われら)の雄心(をごころ)
    皇国(みくに)の護(まも)り富士(ふじ)が嶺(ね)
    千古(せんこ)の雪(ゆき)とかゞやけり

ニ、天皇(すめろぎ)の御楯(みたて)と誓(ちか)ふ真心(まごころ)
   留(とゞ)めおかまし いのち死(し)ぬとも
    ああ陸海(りくかい)に大空(おほぞら)
    高(たか)く雄叫(おたけ)ぶ軍神(ぐんしん)
    後(あと)にぞ続(つづ)く我等(われら)また
    万朶(ばんだ)の花(はな)と咲(さ)き咲(さ)かん

三、青雲(あをぐも)の向伏(むかふ)すきはみ天皇(すめろぎ)
   御稜威(みいつ)かがやく御代(みよ)になしてん
    ああ一億(いちおく)の起(た)つところ
    いかで神風(かみかぜ)(ふ)かざらん
    困苦(こんく)はものゝ数(かず)ならず
    かならす勝(か)たんこの戦(いくさ)

  作曲募集規定

一 勇壮活発にして万人の唱和と行進に適するものなること
二、必ず五線譜を用ふること但し伴奏は附せざるも可
三、応募作品の裏面には必ず住所、氏名、職業、年齢を明記すること
四、送附先 東京都麹町区霞ヶ関一ノ二 情報局第三部芸能課 情報局撰定国民歌応募作品と朱書し、必ず郵迭のこと
五、 締切 昭和二十年一月十日
   発表     同  二月十一日の予定
六、賞及び賞金(作曲各一篇)
   一等 情報局総裁賞 副賞  金三千円(国債)
   二等 情報局賞    副賞  金一千円(国債)
   三等 情報局賞    副賞  金五百円
   但し該当すベき作品なき場合は、作曲の方法、授賞その他につき変更することあるべし
七、著作権はすべて当局に帰属す 応募作品は一切返還せず

 情報局撰定 国民歌入選発表

 情報局では決戦の秋を迎へてが上にも昂揚し来つた全国民の必勝の闘魂を表現した愛国歌を作成することとなり、先般その歌詞を広く国民から応募した。
 募集は十一月末日を以て締切られたがが、遠くはマライ派遣軍、その他、第一線各方面の陸海軍の勇士を始め、工場や農村の生産の戦士、官吏、勤労動員に挺身する学生等々あらゆる階層の人々から寄せられた応募作品は、総数実に一万九百八十四篇に及んだが、以上の作品について情報局の委嘱した審査員と情報局関係官において数次に亘つて慎重に審議の結集、上記の作品が入選と決定した。

一等当選情報局総裁賞 副賞 金三千円(国債)
   東京都芝区白金三光町三三八
         杉江健司作
     必 勝 歌

二等当選情報局賞 副賞 金一千円(国債)
   栃木県足尾町上間一三三三
          神山方 清次作
     心の底からかう思ふ

三等当選情報局賞 副賞 金五百円(国債)
   東京都芝区三島町一二 日本特殊会社内
          益田房子作
    御稜威の下に我起たん

 就いては一等当選作について上記の規定により作曲を公募するから、奮つて応募されたい。