結合して立て!


 日本官憲の所謂「取締り」については、久しい間実に憤慨に耐へなかつたが、最近の「改造」発買禁止事件では、殆んどその非道に慄然としてしまつた。あんなことで「家族主義の國體云々」を言はれるならば、今後我々のあらゆる思想は発表できなくなる。本当に人事ではない。文壇は団結して正常防衛に立つべきである。あんな非道の取締りを許すならば、言論の自由は全く蹂躙されてしまふだらう。
 癪に障るから、も一つ言ふ。
 発売禁止には、治安妨害と風俗壊乱の二種がある。この中、一方に厳な国は一方に寛なのが普通である。例せば帝制時代のロシヤは、治安の方に厳であつた代りに、風壊の方は極めて寛であつた。反対に英国は風壊に厳で治安に寛大である。そして独逸は比較的その両方に寛大であるやうだ。然るに日本は、両方共に神経質で、厳重といふよりもむしろ非道の取締りをしてゐる。今の日本の出版取締りは、江戸幕府の圧制より尚ひどい。どうして獣つて居られるか。文壇は結合して立て!