改良日本服のイデー
今の日本服、特に男のキモノは、室内着として申分がないけれども、戸外で活動するには確かに不便で、現代の社会生活に適当しない。
そこで近頃、諸方で服装改良案が提出されるが、最近朝日新聞で募集した改良日本服の図案を見ると、殆んど全部が洋服まがひのものであり、僅かに仕立や材料の一部を改正した類の者にすぎない。これでは改良和服でなくして、むしろ改良洋服と言ふべきだらう。僕の考へる所によると現代日本の実用服は、次の諸条件を必須とする。
1、活動に便利のこと。
2、湿気多く蒸暑い日本の夏期に適すること。(この目的から、服全体をゆるく闊達にし洋服式のホック釦カラーを廃す。)
3、和洋両室の起臥に適すること。(たとへばヅボンを太くし、和室に坐つて膝に瘤等が出来ないやうにする。)
4、畳の家へ自由に出入が出来、且つ歩行にも便利のやうに、靴履物の構造を改良すること。
5、羅紗等の毛織物を廃して、日本の風土気候に適する材料、即ち綿布、木綿等の類を用ゐること。
さて以上の様に考へると、すべての条件にぴつたりよく合つた改良服は、結局「支那服」と言ふ事になる。何も考へる必要はない。支那服が即ち理想の改良日本服なのである。