第四四七・四四八合併号(昭二〇・六・二〇)

 勝ち抜く食糧
  最近の食糧事情
  新選「夏の七草」
  山草も決戦食の仲間入り
 新らしい外食券制度        農 商 省
 夏の衛生  蝿、蚊、虱退治    厚 生 省

山草も決戦食の仲間入り

 皆さんが知つてゐる山草野草の中で、晩春から初夏にかけて最もおいしく、栄養にもなるものを少しばかり選びましたが、このほかにも沢山の種類があります。これらの草をどしどし採つて、大いに蔬菜節約の効果をあげ、これらのものを貯蔵して置いて、食糧不足のときに備へて下さい。

ヤマブキ(山蕗)
 ヤマブキはノブキともいひ、いくらか湿気のある山野、田圃の畦などに群生してゐる野生(のだち)の蕗で、あまり大きくはなりませんが、相当高い山にも生えてゐます。これは山草のなかでも栄養価の高いもので、食べるのは葉・葉柄(くき)・嫩穂(わかほ)です。葉柄は茹でて皮を剥き、煮しめ、佃煮、汁の実、漬もの、田楽などにすれば、優れた香気と微かな苦味があつて、おいしいものです。総て草菜は野育ちのものが栽培したものよりも生活力が旺盛で、その持味も強いが、フキもやはりさうです。生から料理するに越したことはありませんが、乾燥貯蔵したものでもその風味は味はへます。さつと茹でて干して置けば、必要に応じて、一年中いつでも食べられますから、野菜の少い季節には助かるし、寒い雪の日にも、初夏の御馳走がいただけるといふわけでなかなか便利です。葉は茹でて佃煮にしたものが一番のやうです。

ツハブキ(

 ツハのことです。これをヤマブキといふ土地もあります。最も多く暖地の山野、海辺に分布群生してゐます。葉の形状はフキに似てゐますが、やゝ小さく肉が厚く、濃緑(みどりいろ)に紫紺を帯び、幼いうちは柔毛(やはらげ)におほはれ、成長すれば毛はなくなり、葉面は滑沢(なめらか)になります。秋には黄色の花をひらきます。これは葉柄を食べるのです。葉柄を茹でて水にさらし、苦味を抜くのですが、皮を剥ぐことを忘れてはなりません。水に晒すとは、水に浸けるその水をなんべんも新らしいのと取り替へることで、これをさはすともいひます。料理の仕方はフキと同様、煮もの、汁の実などで、塩があれば漬ものにもなり、茹でて乾燥すれば貯蔵がきゝます。香味豊かなお菜(かづ)としてお奨めします

ワラビ(蕨)

 どこの山地にもたくさん発生するもので、地下の長根から新芽をだし、小さい可愛い拳のやうに、くるくると捲き縮み、白い綿毛をかぶつてゐます。これを早蕨といつて、この柔らかい新芽が開かないうちに刈取り、茎葉を食べるのです。先づこれを手桶のやうなものに入れて、木灰をたッぷり(「たッぷり」傍点)被せ、その上から煮え沸る熱湯を注ぎかけ、しばらくしてから引揚げると木灰のなかのアルカリと熱のために茎葉の組織が軟らかくなつてアクがぬけますから、