第四四七・四四八合併号(昭二〇・六・二〇)

 勝ち抜く食糧
  最近の食糧事情
  新選「夏の七草」
  山草も決戦食の仲間入り
 新らしい外食券制度        農 商 省
 夏の衛生  蝿、蚊、虱退治    厚 生 省

新しい外食券制度

 今年の主要食糧の需給事情は別項のやうに楽観を許さないのであるが、この窮屈な事情から最近旅行者や、三食外食等の食事の確保がだんだんにこんなんとなり、そのため食ひはぐれ等の不便や不安があり、延ては用務遂行上、或ひは勤労面にも種々の悪影響を招いてゐるので、政府では今度次ぎのやうに外食制度の整備を図り、旅行者や三食外食者の食生活に遺憾のないやうにした。

旅行者外食券制度

一、 旅行者外食券制度は本年七月 中下旬から樺太を含めた内地一 円に一斉に実施されます。
二、 旅行者外食券は一〇〇瓦券の一種類のみで、その有効期間はその外食券に記載してある月の翌月末日までです。つまり七月分として交付された券は八月一ぱい使へるわけです。この券は内地のどこに行つても有効で、なほ三月以上に跨る旅行者に対しては、特にその便宜を図るためはんを捺した旅行者特別外食券を交付し、この旅行者特別外食券の有効期間はその外食券に記載した月を含めて六ヶ月間です。つまり七月に交付されたものは一二月一ぱい有効です。
なほこの旅行者特別外食券は三月以上に跨る長期旅行者で、しかも旅行中転々として居所を変更する必要ある場合に利用していただくもので、旅行中一定の場所に居所を定めてゐるやうな場合は転出入手続を採らねばなりません。
三、 旅行者外食券は地方食糧営団の配給所から交付されるのですが、その交付を受ける場合には必ず主要食糧配給通帳を配給所に提出してこれに交付枚数及びこれに相当する主要食糧の数量の記入を受け、旅行者外食券の交付を受けます。(旅行者外食券の交付を受けた数量は次回の配給分から差引かれることとなる
わけです。)
なほ旅行者外食券の交付枚数は取扱上、計算上などの便宜から旅行の長短によつて二〇枚、三〇枚等と、一〇枚を単位として交付します。即ち三日の旅行の予定の人には一〇枚、三日以上六日の予定の人には二〇枚といふやうに交付します。(旅行者外食券は一〇枚を一綴としたものとしますから、これを一綴、二綴といふやうに交付されるわけです。)
主要食糧の配給を受けてをらぬ生産者、地主またはその家族で旅行者外食券の交付を希望する者には、同様に旅行者外食券が交付されますが、この場合は地方食糧営団配給所に旅行期間に応じ必要とする旅行者外食券に相当する米穀(精米に限る)を販売し、これと引換に交付されます。交付を受けられる枚数は特に一〇枚を単位とすることなく、旅行期間に応じ必要とする枚数で、この場合には特にの証印を附けた旅行者外食券が交付されます。
四、 旅行者外食券制度の行はれてゐない地域から、行はれてゐる地域へ来る旅行者に対しては、到着地地方長官発行の旅行証明書を交付し、これによつて旅行者外食券が交付されます。この場合、旅行証明書は本制度が行はれてゐない地域から来た旅行者であることの証明書に基づいて交付されるのでありますから、今後満洲、支那、朝鮮から内地へ来る旅行者は、必ず本制度が行はれてゐない地域から来た旅行者であるとの証明書を持参して下さい(この到着地地方長官発行の旅行証明書は内地外へ出る場合には返して貰ふことになつてゐますから、なくさないやうに注意しなければなりません)なほ内地から本制度が行はれてゐない地域へ旅行した者が帰国する際は、転出証明書によつて旅行者外食券の交付をしますから、今後本制度が行はれてゐない地域に旅行する者は必ず出発の際転出手続を採り、転出証明書の交付を受けて置かねばなりません。
五、 旅行者外食券は旅行者外食食堂として指定された食堂、駅構内立売業者(駅弁)、列車内販売業者、旅館、ホテル(旅館、ホテルはかねて旅行者外食食堂として指定された場合の外は宿泊人のみ)でなければ使用出来ません。但し使用しなかつた旅行者外食券は、有効期間内に地方食糧営団へ持つて行けば、旅行者外食券に記載した数量の主要食料を購入出来ます。
六、 旅行者外食券を滅失した場合には、原則として再交付はしない方針ですから、失くさないやう大切に取扱つて下さい。
七、 旅行者外食券制度が実施される当日、旅行中の者で已むを得ない者及び旅行者外食券制度が行はれない地域から行はれる地域に来る旅行者に対しては、応急的に最寄りの警察署の証明によつて(旅行者外食券制度が行はれない地域から行はれる地域に来る旅行者には警察署で旅行証明書を交付し、これにより)旅行者外食券を交付しますが、右は旅行者外食券を予じめ受けることの出来なかつた者に対してだけですから、実施期日に旅行中となる予定の者は、予じめ地方食糧営団配給所から旅行者外食券の交付を受けて置かねばならないのです。


三食外食券制度

 三食外食制度の整備については各地方の実情によつて、それぞれ地方庁において決定されますが、原則としておほむね左のやうな三食外食券制度とする方針です。

一、 三食外食券制度は成る可く旅 行者外食券制度の実施と同時と する方針です。
二、 三食外食券は記名式とし、こ れを切離して使用することは出 来ないことにします。その様 式、種類は各地方庁で決定され ますが、その有効期間はその外 食券記載の月の翌月三日までで、原則としてその発行都道府県内のみ有効です。
三、 三食外食券は常時三食外食者に交付されますが、その交付を受ける場合には各地方庁で指定する期日(希望の前月末日等)までに隣組、町会を通じて市区町村長に申請し、主要食糧配給通帳にその旨の記入を受け、その通帳を地方食糧営団配給所に提出して、三食外食券の交付を受けねばなりません。
四、 三食外食券は三食外食者食堂として指定された食堂でなければ使用出来ません。但ししようしなかつた三食外食券は、有効期間内にその三食外食券の交付を受けた地方食糧営団配給所へ持つて行けば、三食外食券記載数量の主要食糧を購入出来ます。なほ三食外食者は成る可く一定の三食外食者食堂で食事を摂るやう心懸けて貰ひたいのであつて、一定の食堂に予じめ登録し、登録をした食堂では食ひはぐれの無いやう、登録三食外食者の便宜を図らせる方針ですが、これに応じて登録者の方でも、食事を他の食堂で摂る場合には前日までにその旨を申出る等、極力食堂側に協力し、三食外食制度の円滑な運営に協力を願ひたいものです。
五、 三食外食券を滅失した場合には原則として再交付しない方針ですから、なくさないやう大切にしなければなりません。

(農商省)