第四二七号(昭二〇・一・三)

 航空作戦の目的はいろいろあ
るが、制空権を維持することが
すべての点において大切であ
る。制空権を持たなければ上陸
作戦もまた上陸防禦作戦もなか
なか思ふやうには出来ない。ま
して近代の海戦においては絶対
にこの点を強調せられてゐるこ
とは、こゝに一つ一つ例を挙げ
なくても極めて明瞭であらう。
また地上の作戦においても制空
権の獲得が如何に重要である
かは、支那大陸の雄大な作戦や
印緬国境等における皇軍の将兵
が如何に筆に尽せぬ苦心をした
か、一局部の作戦を静かに思ひ
浮かべれば今さら説明の要もな
いであらう。
 航空作戦において制空権を獲
得するためには、敵の航空部隊
や、航空施設や、航空資源等を目
標としてこれを攻撃し、その勢力
を圧倒撃滅してししまふのが最上
の策である。この戦闘が航空撃
滅戦と称へられてるるのである。
 作戦においては常に攻勢を以
て任務を解決すべきことは地上
作戦においても航空作戦におい
ても変りはないのである。即ち
航空撃滅戦を完遂するために
は常に自主積極、敵地に進攻
して、飛行場の空地で敵の飛行
機や空中勤務者を撃滅してしま
ふのがよいのである。また航空
施設である飛行地区や修埋材
料、或ひは通信網等を破壊し
てしまふのも一方法である。な
ほ大きな意味からみて飛行機工
場であるとか、燃料工場等を破
壊するのも航空撃滅戦の目的に
副ふのである。
 我々はもう一度、大東亜戦争r
の緒戦のあの輝かしい戦果を顧
みて、皇軍航空部隊の活曜の歴
史を想ひ浮かべてみよう。これ
こそ真の完全なる航空撃滅戦成
功の尊い記録である。
 たゞ航空撃滅戦は決して永続
はしないのである。緒戦に直接
身を以て敗戦を体験した敵米英
は、その全国家の勢力の殆んど
全部を航空勢力の拡張強化に
傾け、こゝに今や比島大決戦と
はなつたのである。
 比島決戦こそ敵の乾坤一擲の
大作戦である。しかもその勝敗
の決は航空撃滅戦、即ち制空権の
獲得によつて決せらわると申し
ても過言ではないのである。即
ち彼我共にこの決戦場に多数の
空中勤務者と新鋭航空機を補給
し、日夜苛烈なる航空撃滅戦が
続行せられとゐる所以である。