必勝防衛陣を強化せよ


 戦局正に重大、来るべき秋は来た。敵は傲然として物量を恃み、強引に我に迫り来った。今日あるは、もちろん我々の深く期したるところ、正に敵撃滅の好機をつかみ戦勢を転ずべく、たゞ一億総蹶起あるのみである。
 「支那大陸に基地を・・・・」と焦慮する敵に先制し、わが陸軍部隊は印緬作戦に引続き支那大陸に大作戦を展開し、すでに洛陽、長沙を攻略して輝かしい成功を収め、海軍部隊またサイパン島上陸に蝟集し来つた敵艦船、飛行機に先制攻撃を行ひ、これに相当の損害を与へる等、戦機やうやく熟するのをうかゞふことができる。
 しかし我々は当面の状況に一喜一憂することなく、大本営発表において、「マリアナ諸島付近海面に出現せる敵部隊は多教の航空母艦及び戦艦を基幹とする大機動部隊にして、在太平洋方面艦隊の大部を同方面に集中しあり」と発表された戦局を、正に直視すべきである。南方からのみではない。敵は北方アリューシャン方面より、また支那大陸より虎視眈々として我が本土を狙つてゐるのであつて、敵の来寇企図において、その使用兵力において、またその戦意の熾烈さにおいて、開戦以来最大のものである。
 驕敵、今や断乎討つべし。我々は血を以て戦ひつゝある前線将兵の勇戦苦闘に思ひを馳せて、一分一秒を惜しみつゝ職場に闘魂を火と燃えしめ、生産戦に戦果を挙げ、これに応へると共にに、たとへ国内の何処が戦場と化しても、敢然として戦ひ、皇土防衛に必勝する用意と覚悟とを今こそ固めねばならぬ。
 こゝに防空総本部、陸軍省防衛課、防衛総司令部をはじめ、防空関係方面の協力を得て国土防衛に関する特輯をなし、敵襲の実体を衝き、北九州の実例に鑑み当面の防空措置を強調する所以も、この超重大時局に処して一億国民の鉄石の布陣を確立し、攻勢移転の勝機把握に資せんとするにあることを銘記されたい。

 

 

(401・402合併号 1944.7.5)