第三〇八号(昭一七・九・二)
  第二次ソロモン海戦と我等の覚悟
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第二次ソロモン海戦と我等の覚悟

 帝国海軍部隊は、八月二十四日、また/\ソロモン群島東方洋上において、新大型航空母艦一隻大破、同中型航空母艦一隻中破、戦艦ペンシルヴァニア型一隻中破といふ輝かしい戦果をあげ、同方面の制海、制空権の奪回をねらつて出撃して来た米増援艦隊を撃攘し、我が鉄壁の護りの微動だにしないことを中外に示した。
 しかし我々は、打ち続く帝国海軍の赫々たる戦果を謳歌する前に、我が方にも小型航空母艦一隻大破、駆逐艦一隻沈没といふ、尊い犠牲のあつたことに思ひを致さねばならない。
 勿論それは、なけなしの敵艦隊の蒙つた大損害に較ぶれば問題とするに足りず、戦ひである以上にこの程度の犠牲はむしろ当然と言ふべきであるが、身を挺して敵に当る、一死報国の念に燃ゆるこれらの将兵あればこそ、我が護りは盤石なのであつて、我々は海戦の華と散つた護国の英霊に対して、先づ心からなる感謝と敬弔の誠を捧げねばならない。
 真珠湾以来打ち続く敗戦の米国が、八月初旬以来、南中北の三進路よりする全面的な総反攻を企図して、悉く我が鉄壁の防禦陣の前に撃攘され、殊に南方においてはソロモン海戦において艦船四十隻喪失といふ壊滅的打撃を蒙りながら、なほ且つ、残存の海上勢力を糾合し、渾身の力を揮つて再びソロモン群島方面に来攻したことは、国内輿論への申訳け、或ひは太平洋第二戦線結成の国際的宣伝効果をねらつたものであらうが、いづれにしても敵の戦意の侮り難いことを示すものであり、敵の反攻計画がお座なりのものでなく、米国としては渾身の力を籠めた本格的なものであることを示すものである。
 米国の海上勢力が、打ち続く敗戦によつて全く壊滅したかの如く断ずるのは早計であつて、大西洋方面よりの補充、破損艦船の修理、建艦計画の促進等によつて必死の反撃を試みてゐることは、今度の第二次ソロモン海戦を見ても明らかであつて、従つて我々としては、今後とも敵があらん限りの力を尽して執拗に反撃を続けることを覚悟しておかねばならない。むしろ、反攻に次ぐ反攻、それが今後の戦ひの常態であると覚悟しなければならない。
 もとより、敵が焦つて反撃して来れば来るほど、それは我が方の思ふ壺であり、徒らに帝国海軍の戦果を増大する結果となるのみである。この点は、精鋭なる帝国海軍の忠勇なる将兵に信頼して、安んじて可なりである。
 しかし、銃後国民への心構へとしては、徒らに戦果を酔うて、敵の戦力を過小評価するやうなことがあつてはならない。伝へられる敵の建艦計画、航空機その他の軍備拡充計画など、決してその尨大な数字に驚くには及ばないが、米国が次第に戦意を固め、着々と国内の戦争態勢を強化しながら、これらの計画を進めてゐる事実を見逃してはならない。
 また敵の建艦乃至軍備拡充計画に対しては、わが方としてもこれに応ずる準備を整へねばならない。幸ひにして大東亜戦開戦以来の赫々たる戦果によつて、その準備を整へるだけの基礎的地盤は既になつたのである。残された問題は、銃後国民がいよ/\奮起し、戦争態勢を整へて建設戦を戦ひ抜き、これに応ずる生産をなし得るかどうかにかゝつてゐる。戦ひの勝敗の鍵は正に我ら銃後国民の掌中にあるのである。
 即ち銃後の戦争態勢の強化が一日遅れゝば、それだけ、大東亜戦争完勝の日が遅れ、戦ひが長期に亘る結果となることを忘れてはならない。