第二九四号(昭一七・五・二七)

 翼賛政治会の発足
 小売業整備実施の方針       商 工 省
 ビルマ作戦と重慶        大本営陸軍報道部
 物資営団の買上げ        商 工 省
 本年度の物動と生産拡充計画    企 画 院
 大東亜戦争日誌
 常会の頁            農林省・神祇院
                    大蔵省国民貯蓄奨励局

本年度の物動と生産拡充計画 企画院

 戦争経済の根本をなす本年度の物資動員計画と生産拡充計画が閣議決定を見た。物の戦とも言はれる現代の経済戦を戦ひ抜くために、物の作戦計画が必要なことは言ふまでもない。大東亜戦争の完遂のためには、官民一体となつてこの計画の達成に努めなければならないのである。

昭和十七年度の物資動員計画

 物資動員計画は、帝国が、自主的に
支那事変を完遂し、急激な国際情勢
の変化に対処するため、急速に軍備を
充実し、これがため必要な国防生産
力を拡充するために重要物資の使用を
集中することを目的として策定して来
たものであるが、同時に国際政局の緊
張に伴ひ、必然的に重要物資の輸入
が逐次困難となり不可能となるべきこ
とを予見して、重要物資の外国依存か
ら速かに脱却すべき方針の下に、支那
事変の勃発後、直ちに生産力拡充四ケ
年計画を樹立し、速かに自給生産力を
確立するやう邁進して来たのである。
そして客年六月、独ソ開戦を契機とし
て国際情勢が、さらに急変するや、自
給圏内の物資を以て供給力の根幹と
し、さらに米英の資金凍結と共に完全
な自給物資動員計画を策定実施し、全
く自主自給の構へを完成したのであ
る。
 かくて大東亜戦争勃発の時には、全
く自主自給の不敗の態勢で戦争に突入
できたのであつて、物資動員計画に何
ら根本的な変更を加へる必要はなかつ
たのである。
 そして十七年度物資動員計画につい
ては、大東亜戦争の大戦果に基づき、
政戦両略の緊密な協力の下に、南方諸
地域における重要物資の供給力を確保
すると共に、速かに重要資源の開発復
旧を促進し、わが国にとつて重要な物
資、とくに石油、ゴム、錫等を充足で
きることになり、こゝに大東亜共栄圏
全域の供給物資を基礎とする名誉あ
る大東亜自給の第一次の物資動員計画
を策定することを得たのであるが、今
日早くもこのことあるは全く軍官民の
強力一致による不屈の努力と、大東亜
戦争完遂の全国民の熱意の賜であ
る。
 かくして、わが重要物資の供給力の
基礎は全く安定し、国力の補填充実に
よつて戦争遂行力はいよ/\強化さ
れつゝあるのである。十七年度物資動
員計画は、例年と異り早くも去る四月
二十四日の閣議において決定されたこ
とは、自らこの間の事情を立証するも
のであつて、大東亜戦争完遂の国民的
確信はます/\昂揚されるのである。
以下、本年度の物資動員計画の概要を
述べよう。

技術上の改善

 第一は計画・内容を改めたことであ
る。即ち従来は年度計画を設定し、こ
れに基づいて各四半期毎にその都度実
施計画を定めてゐたのであるが、本年
度においては年度計画及び各四半期実
施計画を同時に策定し、年度計画に対
する実施の忠実性を保持せしめ、且
つ不可避的な修正に限りこれが調整
をなすに止めることにしたのであ
る。
 第二に配船計画を明細化したことで
ある。即ち日満支の供給物資のほか、
新たに増加した南方地域からの重要供
給物資を具体的に供給力とするため、
強力な施策の下に海上輸送力の全幅活
用を企図し、これを地域別に、期別に、
物資別に計画したのである。
 第三に総力戦下において、国民生活
必需品トとくに食糧の確保は絶対に緊
要であるので、本物資動員計画に基づ
いて、国民生活必需品の細目計画を樹
立し、また大東亜全域の物資交流を円
滑にし、且つ計画化するため、本物資
動員計画を根幹として大東亜交易の計
画を具体化してゐることである。

物資供給の状況

 前述のやうに今や大東亜全域よりの
供給物資によつて自給体制の基礎、と
くに重要不足物資の供給源泉が確立
し、昭和十七年度物動計画の供給力は
十六年度に比べて充実し、その基礎は
一層健全となつたのであるが、戦時海
上輸送力を強化するため、これが負担
の可及的軽減を期し、なほ国内にお
ける重要物資の出来る限リの増産に努
め、また物資回収は一段と強化する
ことが必要なのである。

物資需要状況

 大東亜戦争完遂のため絶対に必要な
戦力の増強を中心とし、併せて造船
防空を強化するのに必要な資材を先
づ確保すると共に、また本年度の供給
力を確保するのに必要な物資、とくに
直接軍需物資の生産に必要な資材の
確保について万全を期したのである。
従つて大東亜戦争完遂のため本年度に
おいてもなほ物資の最大の効用の獲得
を期する一方、節約に努め、増産と回
収に国民の一層の協力が必要なのであ
る。

石抽類の状況
 
 石油類は従来、わが国の不足資源の
最たるものであつたので、昨年度は極
度にその節約規制をしたのであるが、
いまや赫々たる大戦果によりこれが解
決の基礎が確立したのである。
 従つて本年度においては、各種の囚
難を克服して生産、輸送、漁獲等に必
要な石油類は、或る程度増配を確保す
るやう計画してゐるのである。
 但し今まで行つて来た代燃化等の石
油類対策は依然として強行する必要の
あることは勿論である。

生活必需品の状況

 前述のやうに、本年度物動計画には
生活必需品に関係のある重要原料、例
へば繊維関係の大宗(たいそう)たる綿花、人絹、
スフ等、主要食糧たる米、麦、大豆、
塩、砂糖、魚介等、或ひは医薬品、燃
料等に対しその供給源を確保してゐる
のであつて、これに基づき具体的細目
を樹立することになつてゐるが、とく
に米は万難を排してこれが確保を期し
て計画してゐるのである。
 なほ衣食住のほかに交通もまた戦時
国民生活から切離せない問題であるか
ら、これが善処に努め、計画実施を進
めてゐる。

物動実行の覚悟

 終りに企画院総裁談を掲げて結びと
する。
 「要するに大東亜戦争の完遂には物
資動員計画の適正とその円滑な実施と
が絶対に必要である。
 これがためには一に大東亜戦争完遂
に関する強力な国民意識の昂揚と、こ
れに立脚する官民の不断の協カ一致
とを必要とするのである。
 国民は咋年十二月八日の大詔奉戴時
の感激を以て常に政府と一体となつて
各々その職場を通じて本動員計画の目
的貫徹に協力邁進せられんことを切
望してやまないのである」


昭和十七年度の生産撰充計蓋

 物資動員計画と表裏一体をなす本年
度生産拡充計画に関しては、時局の重
大性に鑑み、夙に企画院において鋭意
攻究立案中のところ、漸くその成案を
得、五月八日閣議に於て正式決定をみ
るに至つた。
 現在、大東亜戦下のわが国において
は、広大な地域に亘り雄大な作戦を遂
行中であるが、その完遂のためには国
家の総力を挙げてこれに結集せねばな
らぬことは、更めて贅言を要しない。
本年度物資動員計画においては、戦
争遂行上、絶対に必要な直接軍需と船
舶の積極的建造用資材を優先的に確保
し、その他の生産拡充は、現有設備の
最高度能率の発揮により物資動員計画
上の供給力確保を期したのである。
 その結巣、後年度における増産に対
応すべき設備の拡充は、原則として戦
争遂行力の確保増強に必須(ひつしゆ)な施設と、
その他生産拡充上、絶対的緊要性を有
するものは万難を排してこれが整備を
なすのである。
 而して、その具体的実施方針は大体
左の通りこれを定めた。
一、設備の拡充については、徹底的に重
点主義を採り、当面の軍需充足上、
不可欠の重要国防資源たる鉄鋼、ニッ
ケル、アルミニウム、航空燃料、工
作機械、電力等についてこれを遂行
してゆく。
二、海上輸送力強化の重要性に鑑み、船
 舶の急速建造に全力を傾倒すると共
 に、輸送力節約のため鉄鋼、特殊鋼原
 鉱石、非鉄金属等の国内開発を依然
 重視しこれを促進する。また配船計
 画の確保と陸上輸送の円滑化を図り、
 とくに液体燃料の供給を確保する。
三、資材、殊に副資材の節約、代用化
 方途を講ずると共に、鉄、銅などの資
 源回収運動の徹底化と在庫資材、殊
 に死蔵鋼材の合理的活用を徹底する。
  なほ資材の需給と南方資源取得の
 新事態に対応して、生産拡充上、既
 定計画に所要の修正を行ふ。
四、所要電力については、豊水時にお
 ける余剰電力の活用を図ると共に、
 工場別に重点的供給をなし得べき体
 制を整へる。
五、労力の確保を期するため国民動員
 の徹底を図り、必要に応じ徴用制
 度を活用する。
 本計画の達成は、大東亜戦争遂行上
是が非でも実現せねばならないのである
から、国民は戦捷獲得の固き決意をその
生活に具現し、飽くまで挙国一体とな
つて、各個の企業においては労務管理
の改善その他あらゆる工夫を凝らして
極力能率の増進に邁進し、個人として
はひたすらその職域奉公に努めるな
ど、生産の増強に戮力協カせられんこ
とを切望する次第である。
 なほ昭和十三年に発足した第一次生
産力拡充四ケ年計画

は、その間、支那事変の
長期化を始めとして、
欧洲大戦の勃発、独ソ
開戦、大東亜戦争の勃
発等、歴史的大事件が
続発し、終始国際情勢
が悪化の一途を辿つた
にも拘はらず、官民の
鞏固な結束協カにより
概ね所期の成果を挙
げ、昨年度末を以て一
応その終了をみたので
あるが、引続き大東亜
戦争の完遂と大東亜共
栄圏の建設に即応すべ
第二次生産力拡充計
の樹立決定をみる筈
であり、昭和十七年度生産拡充計画は
その初年度分に当ることを附記してお
かう。



懸賞論文募集

 大東亜戦争の既に建設的段階に入つた今日、情報局の
補助団体たる国際文化振興会(東京市麹町区丸ノ内明治
生命ビル内)では、皇國日本の肇國精神を遍く世界に宣
揚し、共栄圏内諸民族の自覚を促し、大東亜新秩序建設へ
の協力を招来せしめる意図の下に、全日本国民より「大東
亜文化共栄を論ず」の題目により懸賞論文を募集し、そ
の優秀作を中外に発表することになつた。応募に関する
詳細は同会国内懸賞論文係宛問合せのこと。
規定
一、論文題目 「大東亜文化共栄を論ず」
ニ、応募資格 日本国籍を有する者
三、枚   数 四百字詰原稿用紙五十枚以内(用語 日本語)
四、締   切 本年八月末日
五、賞   金 一等 一人 金二千円
         二等  二人 金五百円宛
         選外佳作  数篇 金二百円宛
           (賞金の一部は国債)
六、審査員                   (イロハ順)
         長谷川万次郎 穂積重_ 大串兎代夫
         和辻哲郎 神川彦松 村上直次郎
         宇野円空 柳田国男 矢代幸雄
         後藤文夫 岸田国士 下村宏
七、当選発表  昭和十八年二月十一日
          当選者に郵便通知する他、新聞紙上
          に発表