第二八四号(昭一七・三・一八)

 戦局の新段階と国民の覚悟
 蘭印遂に降伏す         大本営陸軍報道部
 護国の神 特別攻撃隊
 日本銀行法の改正        大 蔵 省
 新しくできた国民医療法      厚 生 省
 調停制度の拡張         司法省民事局
 大東亜戦争日誌

日本銀行法の改正        大 蔵 省


 第七十九回帝国議会において成立し、去る二月二十四日
に公布された日本銀行法は、わが国で「銀行の銀行」といは
れ、また、われ/\が日常使ひ馴れてゐる銀行券を発行し
てゐる日本銀行の制度を、全般に亙つて根本的に改正しよ
うとするものであつて、この議会で成立したいろ/\な
金融関係の法律の中でも最も重要な法律といふことが出来
る。

   立法の趣旨

 大東亜戦争が勃発してから僅か三ケ月余の間に、御稜威
の下、皇軍の活躍は真に目覚ましいものがあり、日に/\
伝へられる素晴らしい戦果に、我々は日本国民たることの
幸せと誇りとをしみ/"\と感じ、皇軍将兵に心からなる感
謝を捧げつゝあるのであるが、かゝる皇軍の大戦果に呼応
するわれ/\銃後国民の責任としては、長期経済戦を予想
される大東亜戦争をどこまでも勝ち抜くと共に、我が国の
国防力をいやが上にも強大にし、他面、大東亜共栄圏を確
立して、末永くこれを維持し、発展させてゆかみばなら
ない。そしてこれを実現するには金融といはず、産業とい
はず、我が国の経済全般を今後一層綜合的に、かつ計画的
に運営してゆかねばならぬのであつて、このためには経済
を運営する体制を、この新らしい要求に適合するやうに着
着と整備してかゝらねばならない。
 今回、日本銀行法を制定した所以もまたこゝにあるので
ある。即ち、中央発券銀行としてわが国の通貸ならびに
金融の中心に立つてゐる日本銀行の制度を根本的に改訂
し、日本銀行が政府と表裏一体の関係に立つて、通貨を調
節し、金融を調整し、或ひはまた信用制度を保持し育成す
る責に任じ、更に進んでは大東亜共栄圏の金融の中心
機関としての任務を果し得る
やうな制度とすることが極め
て緊要である。
 勿論、日本銀行は沈年内外の情勢の目まぐるしい変化の
                ●一
中にあつて、克く事態に遽應してその篠路む兆して氷たの
であるが、何分にも現金の日本銀行制度は、ちやうど今か
ら六十年繭の明治十五年に、太政官布普によつて制定され
た日本銀行條例と、同じく明治十七年の太政官布曾によつ
        だくわん
で定められた免換銀行券條例とを基本としてむり、その
後も部分的、臨時的にはいろくな法律で改正を加へて釆
         た▲て一丁、
たが、根本的な建前は少しも攣史されずに今日に及んだの
である.
 その結果、今日ではこれ等の規則は、日本銀行の資際の
制度と合はないばかりでなく、今後同行がその使命む果し

Hてゆく上に却つて掛からず美文へゑ、うにたつたので、こ
             ■−▲′モl
叩こに斬らしい構想によつて制度の全般に五つて改正た加へ
Mる必黎が生じたのセある.
叩 以下、日本銀行法にょつて、今後日本銀行の制度がどの
W
叩やぅに改正されるかを詮明しょう.

  法律の内容
  [〕=竹凰
 (イ) 性  質
                        ●ヽ.●′一,
  現和の日本銀行は−挿の禁曾壮絶紙であるが、本渡
 eは今後における日本銀行の目的や使命が専ら閑寂的の
 ものであるととむ法文の上ではつきりと規定した‥.郎ヰ
 日本銀行は圃家経済の線力を適切に敬挿するため、同家
              て,一ウ
 の政策に即席して、洩貨の調節、金融の調整およぴ信用
 制度の倣持、育成に任ザることむ目的としハ第l條)、度
 に同行は営利む目的と・せず、寄ら同家目的の達成む使命
 として運営さるべきものとした(第二條)∨このやうに日
 本銀行の目的や使命がはつきりして来ると、現金の株式
         つ▲ツ・l
 曾祀組織では釣合ひが取れないので、本法では株式粗抽
 象改めて、出費組織による公けの性質の非常に払い持姓
 の法人組織としたのである.その法律上の性質は私法人
  ではあるが、同家と極めて密塘な関係に充ち、同家の強い
       し だ▲J
 濫督と指導を受ける公的機関とも拝すべきものである‘
 例へば本法によると、日本銀行には普通の株式曾批の鴇士
                                               ●一一′
 練魯にあ止る出資者の組合のやうなものは設けず、皇ね


叩 後に述べるやうに、川資潔の配箇も一党限度に制眼され
…てゐる.従つて日*銀行は民法でいふ財囲法人と敵国法
lM……gい……贈関川`

「派粥……g凱削……g紺約…附…川約
¶ へて差支へない.
【(こ 資 本 金
¶ 日本銀行の資*金は現空八千万国であるが、本汝では


 とれを−億凰に増加し、現水の桃込済金額四千充電方囲
 のほかに、政府が五千五官万別を出資することになつ
 た(第五條).
(ハ) 職   員
  日本銀行には役員として繰裁、副線裁各一人、理啓三
 人以上、監事二人以上おょぴ参輿若干人を澄くこと忙し
 たが(第十四條)、これは何れも政府が任命し(第十六條)、
 また−定の事由のある場合には、政府が解任で・きる(多
 田十七條)等、役員の制度も日本銀行の新らしい使命にふ
 さはしいやうに改正した.また日ノ本銀行は一種の公的
  ● ′ヽわ▲〃
 簡閲ともいふべきものであるから、日*銀行の敬具は
                                 ●【 ▲γ
−すべて公城見、即ち公けめ仕事に従事する窟と看徹すこ


  とにした(第十九條)
 (こ 決  算
  日本銀行の決算は、今後は政府以外の州壌者に対して
 は年五分を最高隈庇として年四分以上の配営を行ふこと
 にしハ政府の川賀に対しては配菖を行はない)、剰敏金からこ
                             l←・か ふ
 の配常と積尤金む差引いた壌窮は、仝部政府に約付する
 ことにした(第三十九條)Cまた日本銀行が将準嘗一にで
 も秋根を生ずるやうなことがあつても、全部を政府で
   †“●ヽ′〃
 補填し、必ず年四分の配常はさせることになつてゐる
 (前門十條)い
  [局
 次ぎに日本鈍行の行ふ兼務であるが、本法では、時勢の
               川“ん あ
進展に即席して紫抒の範圏を・一段と横充したが、その発な
 鮎を述べると、
 (イ) 現水の日*銀行は、制度上は閣内南条金融の調整を
                   Jヽわん J
 中心柴持とし、蒸柴金融には山開興しない建前になつて
                           一・ん●l,
 ゐるが、今後は生産力珠充がます〈緊坐となつて来る
 ので、正村から同行が株式や祀債を措保とする貸出等も
 できるやうに叩文教設け、進んで東栄金融の調丑に普り
 得ることにした(鶉二十條鶉二競).といつても、日本銀
 行は、いはゆる「銀行の銀行」である≠ら、虚凛に壌拳曾
 祀忙事兼資金を貸付けたり、また、その赦條む引受けたり
 することはしないのであつて、これらの麻薬資金そのも
                        ●●い▲ヽ
 のは、どこまでも鰻民の濱枚した沓ハ金で賄ふべきもの
 である.従つて日本銀行が鹿菜食融に閑輿するのは、日
 本輿兼銀行やその他の鹿発金融む行ふ金融樺帥が、−
 時、資金に手詰りと氷†やうなときに、これらの金融墳
 閥の親銀行としての甘囁から官金を供給するとか、資本
       小●●く               くわん わ
 市場が一時梗塞を氷†やうなときに、これと竣和する
 ために僻券を買取つて巾喝に資金を放出するとかいふこ
 とを指†のである.
ハロ) 次ぎに日本銀行に金融網盤の横能を十分に蟄挿させ
 るには、いはゆる溌金の持出や回収の方添によるほか、金
                 忙ん 小
 融市場で手形、開催、政府の認可を受けた債券類の賓男
 女行つて、棟機的に金融の調簸に昔らせること忙した
 (第二十條第五批).
ハハ) 日本銀行は今後廉く大東鹿八集倒内の金融の中心墳
          ▲し■一く一●
 闊としての政文を負はせるために、正金銀行やその他
                                   ‖し,
 の外聞名沓む取扱ふ銀行を相手とし、葛巻尻た負綽す
 るために外観為替の弄孟行へろこと忙し、また南際
 金融取引を行ふの町必壕なときには、外周の金融横閲

                 ●▲,づl
  に対して出資したり、壌令を融通したり、女た一等替決済
  に開する取引をすることが出水ること忙した(鶉二十三
  蠣及び第二十均條).
 (三 日本銀行は、中央銀行として我が闘の信用制度や信
          は t■■
 用粍潜む、破線を来さないやうに健全に保持し、さらに
  進んで積極的にこれた音域すべき件持たもつから、こ
  れに必黎な紫紡を行ふことが出水ることにした(革い十五
 ‥傭).
 ハホ) なほ日*銀行が棟儀的にこれ畑野の態頼む行ふ際に、
  その相手方である金融埠仙開が進んで協力しなくては、呂
  的を達し得ないやうな場合が少くないので、必費忙應じ
  て、大仙秤大臣は銀行その他の金融横仙押忙射し、日本銀行
       川U・′,−●く
  の発拷に協力するやうに命令できる規定を託けたハ萌
 〓十入煉).
  盲−
  現瀬の銀行券の敢行制度は、碕越の滴り、明治十七年忙
 制定された免換銀行券條例に品づくものであつて、いはゆ
                 ● t
 る金本位制度む基礎としてゐる¢ところが我が団では、金
 本位制度は昭和六年の末に銀行券を金貨と引換へることを
 止め、金の輪瀾を準止して以雑、次第に鮎が薄くなり、今

日では最早や有名撫資となつたのみならず、かへつて今後
通柴政策を進めて行く上Lに妨げとな・つてゐるのである.な
ぜならば、いはゆる金本位制舷では池袋の教条は金の保有
                     ←・ヽ
丑の多少によつて左右され、通架の備偲は金の一定分豊と
のみ締付いてゐるのが建前になつてゐる.ところが元木、
漣貨の滴正な赦免としては、】開の経済が健全に蟄庚して
                        ■l・■●l▲I:一
行くのに必要なだけの埼貨が常に.供給されてをらねばな
らないのであつて、これが多過ぎても、また少すぎてもい
けない.また池袋の僻値は、それで耽々の経済活割に必要な
ものをどれだけ男へるかといふことが問題なのである.従
つて若し通貨の淑澱なり催打なりむ金と締付けて考へねば
ならぬとすれば、それは如何忙も不由然な己とであつて、
我が固の驚愕からかけ触れたものである。このことは今日
念忙始まつたことではなく、従雑も我が観では茸際上、池
貸は金の保有虜とは関係なく、ひたすh杜済界の催仝な裔
          1くへ’
要忙應ずることむ目放として供給され、また、その僻偲は
廉くあらゆる物資、労力その他一切の戦が闘の舵碑力とこ
      と▲7かり       卓・ハ
の鮭済力む統轄する閑寂の力灘にこれ竿のものに対する内
外の信和によつて決められて氷たのである.
 そこで今回の日本銀行添では、かやうな蕃むそのまゝ
制度化して、新らしい敬歩制度を打立て、徒雑の允教鈍行
 券俵例による金*位制度は戚止すること忙した.尤もこの
 やうな制度にしても、金色規は今後畠瞭決済の手段とし
 てなほ有用なものであることは勿輪であつて、この耗は決
 して誤解してはならない.
  次ぎ忙斬らしい竜券制度の内容を雄べよう.
 (イ) 発行限度
  新らしい汲弊制度では、銀行券の敢行は金の教最に制
  限さられることはなくなつたが、しかし日本鈍行が聯手
  にいくらでも銀行券む敢行してもよいといふのではない
  のであつて、本法では、大蔵大臣が銀行券の費狩隈度
  量定めること忙した(革二十條).大横大臣がこの限度
 を巷るには、滴貸の健全性を保持し、絃済界が必黎
          ムんくわつ
  とする池袋宅糾竃Z供給することを目指とし、同家の
              ほ,り
  各般の経済政鮮と睨み合せ、また生産、配給、物慣、財
  政その他一般耗沖活動等の各種の要素む十分に考壊し、
             小んが
  なほ事柄の塞変性に鑑み、日本銀行その他各甘軋の慈
          しんち∫lフ
  見も象酌して偶軍に決定するのでをる.
 (ワ) 制限外敏行
   この後行限度は相箇期間内、例へば一年度中の一牌の
    抄 ●一丁
  目安としで定められるものであるから、金融界の情勢に
  よつて−時の季節的な常委に射して碕貸を増覆する必黎
 がある場合を考庫し、日本銀行針大鶴大臣の儲可を受け
 て挙行限度む超えて銀行券を敢行するこ卓が出水ること
 忙した(第三十一條).・
(ハ) 銀行券の保諾
  前並のやうに、金本位制度の場合に必委であつた、い
 はゆる正貨準備として金を保有することはへ新らしい畿
 券制度では、最早や必要でなくなつたが、銀行券の信用
 を維持するために日本鈍行は、銀行券の孝行高に射して
 同額の保護皇償有しなければならぬこと忙した.この保
     ▲−
 詮に充てられる物件は手形、費付金、固使、大耗大臣の
 認可む受けて買入れた倍券、外国篤彗地金銀等である.
 日本銀行はこれらの保許の慣格を定めて大帝大臣の認可
 怒受けねばならないへ第三十二條).
J⊥福洲凰胤恩−
 以上のほか、本法にほ規水の日本銀行がこのやうな新ら
しい姿の日本銀行に生れ攣るに昔つて、その手繰忙関する
規定や、組織奨史の前後の関係を調教すろために必要な
いろ/\な規定が設けられでゐる.
 例へば現夜の日本鋏術の一切由稚利義紡は、改組後もそ
     つ
のま1引鱒がれることにたつてた少.(第五十九條)、さナた同
 行の柑樟が改められる樽の韻童は、そのま1斬らしい出曹
 者とな各の.であるが(第五十朽條)、この川賓者に対しては、
 組織が改められたため・忙損審む萩斬ることのないやう忙、日
                              汚 し●▲7
 本銀行から適正な基準によつて同値之小たは現金で棚債分
 を交付すること忙なつてゐる(第六十入條).
          ×     ×     ×
 今同の日本銀行法のr円容は大破以上に越ペた泊りである
・が、本法によつて日*銀行は、大東窮敬季の勃覆に件ふ新
                        ● ルー       一
 たな時代に封應するために、六十年来着馴れた着物を晩ぎ
 袷てて最も活動に便利な、また最も丈央な新らしい鞋ひに
 衣替へをするわけであつて、これによつて今後、日*銀行は
 虞に同家と表裏一饅となつて活動し、漂の輿へる無抗の
                                         ▲−・−●▲′ ■●
 援助によつて、その信州の基礎はいよ〈賛同となり、
 内はあが固の中央発券銀行として、外は大東玉井埜周の中
                      ゐ かん
 心的な金融横榊よして、その使命を遭撼なく叔すことが出
 衆るものと信ザる.
 本法のl部分は雑あニ二月二十日から施行され、早速現凍
 の日本銀行む、新制度の下における日本銀行に改組するに
 必黎な諸般の手持が進められるであLごつから、恐らく五月郡
                ●・つモ1′
 には斬濃bつた日本銀行の線爽とした漆がみられることに
 な、h・‥ノt