第二八一号(昭一七・二・二五)
   南方諸国、諸民族に対する方策
   シンガポール陥落の意義
   シンガポール要塞攻略戦     大本営陸軍報道部
   更生した昭南軍港       大本営海軍報道部
   大東亜戦と中小商工業対策    商 工 省
   満州建国十周年
   今次の恩赦について       司法省刑事局
   常会の頁          内務省貯金局、農林省
   通 風 塔

南方諸国、諸民族に対する方策

 香港、マニラ、シンガポール----米英両国の大東亜侵略の三大拠点は、今や挙げて皇軍の占領するところとなり、大東亜諸民族のために新秩序の建設とその防衛の拠点として、限りなき前途の希望に燃えて甦りつゝある。この劃期的な機会に当つて東條内閣総理大臣は、シンガポール陥落の翌二月十六日、特に開かれた貴衆両院本会議において、肇國の精神に基づく雄大な国策を閘明、南方各民族、各国家に対する方策を重ねて明らかにした。
 大東亜戦争の目標が、わが肇國の大理想に基づいて、大東亜の各国家、各民族をして各々その所を得させ皇國を核心とする道義に基づく共存共栄の新秩序を確立するにあることは、既にしば/\述べたところである。この点、米英諸国の東亜に対する態度とは全くその本質を異にするのである。
 東條内閣総理大臣は、先づこの根本義を明らかにした後、関係各民族及び各国家に対する帝国の真意を声明したのである。
 即ち、ビルマに対しては、帝国のビルマ侵攻の真意は、英国の軍事拠点を覆滅すると共に、米英の援蒋路を遮断せんとするものである。従つて固よりビルマの民衆を敵とするものではなく、ビルマの民衆が、無力を暴露した英国の現状を正視し、その桎梏から脱してわが方に協力して来れば、帝国は欣然としてビルマ民衆の多年の宿望である「ビルマ人のビルマ」建設に対して積極的協力を与へんとするものである。
 数千年の歴史と燦然たる文化の伝統を有するインドも、暴虐な英国の圧制から脱して大東亜共栄圏の建設に参加すべき絶好の秋である。日本は、インドが「インド人のインド」として、本来の地位を回復することを期待し、その愛国的努力に対しては敢へて援助を惜まない。若しインドが依然として英国の甘言に惑はされ、その使命に目覚めぬならば、インド民族は再興の機会を失ふであらう。
 米英と提携し、抵抗を続けるオランダ軍に対しては、帝国は徹底的にこれを撃滅戦とするものである。しかしインドネシア民族が我が真意を諒解し、大東亜の建設に協力して来れば、その希望と伝統とを尊重し、同民族を米英の傀儡たるオランダ亡命政府の圧制から解放して、その地域をインドネシア人の安住の地たらしめる。
 豪州やニュージーランドも、頼むに足りぬ米英の援助を恃む無益の戦争は避くべきである。英国がいかに豪州及びニュージーランド軍の将兵を利用し、いかにこれを遇してゐるかは、その民衆自らが十分に知つてゐるはずであつて、今やこれら民衆の福祉は、一に懸つて、これらの政府が帝国の真意を理解し、公正な態度に出るかどうかに懸つてゐる。
 皇軍は二月二十日にチモール島に敵前上陸し、ポルトガル領にも作戦を拡大するに至つたが、これは英蘭両国軍が昨年十二月十七日、葡領チモール総督の拒否に拘はらず、同領に不法侵入してゐるので、蘭領チモールに対する作戦の進展に伴つて、自衛上これを駆逐する必要に迫られたからである。帝国政府は葡領チモールの領土保全を保障し、ポルトガル政府が中立の態度を維持する限り、自衛の目的達成の上は速かに兵力を撤収せんとするもので、ポルトガルに対して何等他意あるものではない。
 シンガポールの陥落によつて対日包囲陣の一角は全く崩壊し、ビルマルート遮断の日も近く、重慶政権は正に全く孤立無援の苦境にらうとしてゐるが、これに対して帝国は断乎最後の鉄槌を加へんとするものである。しかしこれまでも度々述べた通り、中華民国の国民に対しては、あくまでこれを兄弟と考へて相倚り相扶けてともに大東亜の建設を行はうとするものである。一部の頑迷な指導者に誤られて、大東亜興隆のこの光輝ある時期に、中華民国の民衆が依然として塗炭の苦しみに陥つてゐることは、日本としては誠に遺憾に堪へないところである。
 南米及びその他の中立諸国も、帝国の真意を諒解し、米英に牽制されて火中の栗を拾ふやうな愚はしないものと確信する。
 なほ大東亜戦争遂行に際して満州国、中華民国国民政府、泰国及び仏印が帝国と苦楽を共にし、大東亜共栄圏建設に精進し、また独伊をはじめ欧州の盟邦諸国が帝国と協力呼応して赫々たる戦果を挙げ、世界新秩序建設に努力しつゝあることはまことに喜びに堪へないことである。
 今やシンガポールは陥落し、米英の東亜侵略の三大拠点は悉く潰滅するに至つた。しかしシンガポールの陥落は大東亜戦争遂行の一階梯に過ぎないのであつて、これによつて戦勝に驕り、気を弛めるといふやうなことが万が一にもあつてはならなにのである。大東亜戦争は正に今後に在る。我が国はこの一大戦勝を契機として、いよ/\盟邦との提携を緊密にし、更に積極的作戦を遂行して、米英とその追随的勢力を徹底的に撃摧しなければならないのである。