第二七四号(昭一七・一・七)
   大東亜戦下 新春を迎ふ
   大詔奉戴日の設定
   進め、戦ひの生活へ
   大東亜戦争の性格と戦局の推移
   燦たり、マニラに日章旗      大本営陸軍報道部
   大東亜建設と制海権        大本営海軍報道部
   変貌するフィリピン
   開所する国民訓練所        厚 生 省
   敵産管理法について        大蔵省為替局
   中南米諸国の動き
   英米罪悪史(三)
   支那事変第五年の戦闘一覧
   大東亜戦争日誌

 

大詔奉戴日の設定


 大東亜戦争一度び勃発するや、精鋭無比の皇軍は陸に海に或ひは空に赫々たる武勲を立て全世界を唖然たらしめたが、皇国の隆替と東亜の興廃とを決すべき大東亜戦争の展開に伴ひ、国民運動の方途もまた画期的な一大進展を要請されるに至つたので、政府では一月二日の初閣議において、毎月八日、大詔奉戴日を設定することに決した。これは宣戦の大詔を渙発あらせられた日を挙国戦争完遂の源泉たらしめる日と定め、大詔の大御心を奉戴して、全国官民各々その職務に奉行し、その本分を尽し、以て尽忠報国の赤誠を捧げ聖旨に応へ奉らんとするもので、同日東條内閣総理大臣は左の内閣告諭を発した。政府はこれと同時に大詔奉戴日実施要項をも発表、一月より直ちに至施して曠古の大業を翼賛する上に違算なきを期したが、これによつて従来の興亜奉公日は廃止され、その趣旨は、大詔奉戴日に発展帰一させられ、これまで興亜奉公日に示された一億国民の熱意と赤誠とは、大詔奉戴日に強化具現することになつた。なほ大詔奉戴日運用の中枢機関には大政翼賛会が当り、毎月の実施項目は同会が政府と密接なる連絡の下に設定することになつてゐる。

内閣告諭

昭和十六年十二月八日畏クモ 大詔ヲ渙発アラセラレ米国及英国ニ対シテ戦ヲ宜シ皇国ノ大道ト国民ノ嚮フベキ所ヲ昭示シ給フ洵ニ恐懼感激ニ堪へズ
皇国ノ隆替東亜ノ興廃ハ正ニ此ノ戦ニ懸レリ今ヤ全国ノ民草ハ感激措く所ヲ知ラズ醜ノ御楯ト奮ヒ起チ克ク竭シ克ク耐へ雄渾深遠ナル皇謨ノ翼賛ニ万遺憾ナカラムコトヲ誓ハザルナシ
実ニ此ノ日コソ皇国ニ生ヲ享クルモノノ斉シク永遠ニ忘ル能ハザルノ日ナリ新秩序建設ノ大使命ノ負荷セラレタル記念スベキ日ナリ仍テ茲ニ昭和十七年一月以降大東亜戦争ノ完遂ニ至ルマデ毎月八日ヲ以テ大詔奉戴日ト定ム即チ全国民ハ此ノ日ヲ以テ常時実践ノ源泉ト仰ギ純一無雑只管 大御心ヲ奉戴シテ各々其ノ本分ニ精励奉行シ益々国家総力ヲ拡充発揮シテ大東亜戦争究極ノ目的完遂ニ挺身シ以テ 聖旨ニ応へ奉ラムコトヲ期スベシ
尚之ニ伴ヒ興亜奉公日ハ之ヲ廃止シソノ趣旨トセル処ハ大詔奉戴日ニ発展帰一セシムルコトトシタリ

    昭和十七年一月二日      内閣総理大臣 東 條 英 機

大詔奉戴日実施要項

一、方 針

 大東亜戦争完遂の為、必勝の国民士気高揚に重点を置き、健全明朗なる積極面を発揮すること

二、実施項目

 (一) 詔書奉読

  官公衙、学校、会社、工場等において詔書奉読式を行ふこと
  詔書奉読式の時刻は、業態、交通等を考慮し適宜定むること

  (二) 必勝祈願

  神社、寺院、教会等においては、必勝祈願の行事を行ふこと
  但し、一般の氏子信徒に対しては、その職場において祈願せしむるものとし、殊更に祭式に参列を強制せざること

  (三) 国旗掲揚

  各戸においては国旗を掲揚すること、

  (四) 職域奉公

  各自職域の奉公に励精し、殊更に当日と休業とする如きは採らざること 

  (五) その他の国民運動

  その他の国民運動の項目は、大政翼賛会において本方針に基き随時決定すること

三、備 考

 日曜日に際会せる場合、当日業を休む官公衙、学校、会社、工場等においては、殊更に出勤、出校せしむるにも及ばず、家庭人としてまた市町村民として当日を意義あらしむるやう措置すること