第二六六号(昭一六・一一・一二)
   現下の時局と臨時議会
   臨時増税案について       大 蔵 省
   昭和一七年度における修業年限の短縮について   文 部 省
   戦時下壮丁の思想調査      文 部 省
   国際危局と我が発明界      特 許 局
   職業指導と学校         文 部 省
   生活必需品読本(一〇)食肉    農 林 省
   通 風 塔
   危機迫る独米関係

現下の時局と臨時議会

 東條新内閣は、時局に関して緊急を要する追加予算案と法律案の協賛を求めるため、臨時議会の召集を奏請、十一月十五日から開会される。
 政府提出議案の主なるものは、軍事費及び米穀増産臨時対策に必要な追加予算案、不動購買力吸収を目的とする臨時増税案等で、特に増税案はわれ/\の日常生活にも大きな影響を及ぼす問題であるがいづれも時局下に緊急やむを得ないものである。
 以上のほかに、今度の臨時議会は、国策遂行に関する現内閣の確乎たる決意をこの機会に披瀝し、帝国議会を通じて国民の理解と協力を求めるといふ、大きな政治的意義をもつてゐる。即ち、東條新内閣がこの臨時議会を通じて国民に、内外の緊急事態とこれに処する政府の方針を表明し、その諒解と支持を求めて、挙国一致、断乎たる方策に邁進せんとする点に重大な意義を有するのである。
 「支那事変を完遂し、大東亜共栄圏を確立して世界平和に寄与するは、帝国不動の国是なり」とは東条内閣成立直後の政府声明劈頭に明らかにされてゐるところであつて、規定方針による支那事変の完遂と大東亜共栄圏の確立は、皇國の自存自衛を全うし、東亜の安定を図るための絶対的な要請である。
 聖戦四年余、われ/\は支那事変の根底に横はるものが何ものであるかを、凝視しなければならない。日米交渉は八月二十八日の対米メッセージ以来、あらゆる努力を試みたが、かへつて依然たる援蒋行為の強化、米英蘭蒋を連ねる対日包囲軍備の充実となつて現はれてゐる。
 我が国のあらゆる平和的努力にもかゝはらず、なほ東亜の新しい事態を認識せず、謬つた対日態度を改めぬ国があるとすれば、その秋こそわれ/\は、蹶然として起つ決意を要する。十万英霊の血を以て戦つた支那事変は、あくまでも完遂しなければならない。皇國の自存自衛を脅かすものがあれば、断乎として排除しなければならない。
 徒らに交渉を遷延せしめて、帝国を窮地に陥れるやうな術策は断じて乗つてはならない。一方、欧州戦争の進展による国際情勢の急展開に対しても深い注意を払はねばならない。
 こゝに皇國は、今や興廃存亡の岐路に立つといつても決して過言ではない真に未曾有の難局に直面してゐるのである。時艱突破の途はたゞ、御稜威の下、全国民が一丸となり、不退転の決意を以て邁進するところにのみ開かれる。
 この秋に当つて、全世界注視の裡(うち)に臨時議会が開かれる。やゝもすれば我が国論の分裂を云々して実力を過小評価する諸国に、今こそ全国民鉄石の決意と団結を示すべき秋である。