第二五五号(昭一六・八・二七)
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  生活必需品読本(六)食用油    農 林 省
  製造工業原価計算要綱        企 画 院
  英米共同宣言とその反響
  常会のページ
  興亜奉公日の実践項目、国民貯蓄組合の届出、
  防空の手引、電話のかけ方、兎を飼ひませう、
  各地に常会を見る、常会問答、その他
  学校報国団更に前進         文 部 省

 

お国のために兎を飼ひませう

 兎はまづ毛皮は、温かくて丈夫で、軽くて安いので、兵隊さんの防寒具としてはかくことができず、肉は、牛や豚や馬にも負けない味があるので、缶詰肉とか乾燥肉として重宝がられ、事変以来すつかり売れつ子になつてゐます。
 農林省でも、昭和十四年度から増産五ケ年計画を立て、道府県に生産割当をして、大いに飼つてもらふやうに努めてゐるのですが、この増産奨励も間に合はないくらゐです。そこで、これからはお国に御奉公のつもりで、常会あたりでも工夫して、もつと/\飼つていたゞきたいものです。
 もと/\兎は年寄りや婦人子供にも手軽に飼へ、しかも餌は大してかからず、野草や台所からでる野菜屑などで十分間に合ふのですから、農家は勿論のこと、一般の家庭でも、ぜひ養兎報国の決意を新たにして、たとひ一、二匹でも飼ふやうに心がけていたゞきたいものです。
 次ぎに飼ひ方についてお話しませう。
 まづ飼育箱は、一頭入れでしたら林檎の空箱を二つ重ね合はせたくらゐのものと用意し、正面と底を竹の簀の子にし、糞尿を収り出しいゝやうにすれば十分です。箱はなるたけ風通しがよく、乾いた、明るいところにおきます。夏は涼しく冬は暖いところなら申分ありません。このほか、箱はいつもきれいにし、新らしい餌を毎日規則正しくやり、また餌の箱や飼育箱は、きめた日には必らず消毒することを忘れてはなりません。
 兎は育ちが早く、生後七、八ケ月で一人前になつて子供を生みます。子供を姙む時期はだいたい三十日で、に三回産みますが、ふつう三、五、十月の頃に生ませるやうにするのが、いろ/\の点で好都合です。
 眼がいき/\とし、毛並が揃つて体がぴち/\としまり、耳を活溌に動かすのは、丈夫なしるしですから、種兎をえらぶときにもこの点は注意しなければたりません。
 交配しても一度で姙娠するとはきまりませんが、さかりが止み、食べ物をがつ/\喰べるやうになり、姙期の半ばをすぎれば、お腹や乳房がだん/\大きくなるから分ります。
 お産が近づくと、腹の毛をむしり、自分で上手に巣をつくり、たいがいその中に生み落します。
 姙娠したら、幾分大きな箱に飼ひ、藁も沢山入れてやるとか、お産が近づいたら箱のかたすみを外から見えないやうに布などで暗くしてやり、子供を産んだら、むやみに巣をのぞき込んだり、手を入れたりして母兎を驚かさないことが必要です。
 生れたての仔兎は、約二週間で目もあき、毛も生え、三週間たつと、運動も盛んになり、母親の餌の一部を喰ふやうになりますから、かうなつたら仔兎にも喰べいゝやうに細かく切つたり、ひき割いてやります。
 約六週間位で乳離れをしますが、このときは、まづ母兎と別の箱に移し、最初の数日間は急に乳離れをさせないで、一日に数回母兎をいれてやつて乳をのませて下さい。たゞこのころに、よく仔兎が食べなくなるやうなことがありますが、こなれのいゝ餌を一日四回くらゐに分けてやれば防げます。
 なほ飼ふには、白い毛並(白色在来種)のものが一番よいやうです。
 お売りになるときはまとめて、市町村農会の指図に従つてお出しになればよく、毛皮は被服廠が一手で買ひつけてくれます。生兎の価格は一貫匁以上のものが一貫匁について三円、七百匁----一貫匁が二円八十銭、七百匁未満が二円六十銭となつてをります。

                          ( 農 林 省