第二五五号(昭一六・八・二七)
  重要産業団体令について       企 画 院
  生活必需品読本(六)食用油    農 林 省
  製造工業原価計算要綱        企 画 院
  英米共同宣言とその反響
  常会のページ
  興亜奉公日の実践項目、国民貯蓄組合の届出、
  防空の手引、電話のかけ方、兎を飼ひませう、
  各地に常会を見る、常会問答、その他
  学校報国団更に前進         文 部 省

重要産業団体令について  企画院


   制定された理由

 世界情勢の急展開に対処し、東亜の新秩序建設の大業と
完遂するには、わが国の経済を一日も早く高度の自給自足
が出来るやうにして、自主独立の経済を確立しなければな
らない。そして、このためには国家の総力を国家目的に集
中動員して、最高能率を発揮できるやうに態勢を確立する
ことが必要である。殊に今まで第三国に依存することが非
常に大きかつた我が国の経済は、英米の経済封鎖が積極的
に強化された今日、その必要はいよ/\切実なものとなつ
て来てゐる。
 ところが、従来の経済は、いはゆる自由主義経済であつ
て、経済の運営の中心は個々の経済にあつて、各個の経済が
それ/"\自己の目的とか計画に基づいて運営され、国家経
済全体として合目的に運営できるやうな組織になつてゐな
かつたのである。従つて国家の経済全体の力を綜合して、
全体として一の目的、すなはち戦争目的を達成するために、
その総力を集中動員して運営するやうに体制を再編成する
ことが必要である。これこそは昨秋の閣議で決定された「
済新体制確立要綱
」の趣旨であつて、これに基づいて制定
されたものが「重要産業団体例」である。

   適用される範囲

 従つて重要産業団体令は、国家経済を全体として運営す
るために、それ/"\の産業分野を分担して、その産業の綜
合的経済計画の実施に当るべき組織体に関して規定したも
のであつて、重要な産業について、産業別に全国的な団体
(統制会)を組織してゆくことを定めてゐる。そして統制会
が組織される重要産業の種類は閣令で定めることになつて
ゐるが、大体、鉱山業、工業、陸上輸送業及び貿易業が予定
されてゐる。特にその組織を急いでゐるものは、鉄鋼、非
鉄金属、石炭、機械、化学、セメント、製粉、貿易等の業
種である。しかし、農林畜水産業と金融業は、その組織は
別個の形態によることになつてをり、また、電力業は、日
本発送電株式会社と配電統制会社によつて一元的に統合さ
れる予定であるので、これらには重要産業団体令は適用さ
れない。海運業は、一元的な運営が最も必要とされてゐる
が、船舶の国家管理によつて一元的に運営される予定なの
で、これも重要産業団体令の適用は受けない。しかし、組
織の方式は勿論、それ/"\の業態、産業別によつて異るも
のがあることは前述の通りであるが、産業の再組織は出来
るだけ速に全産業にわたつて、完成されるべきであつて、
指定産業の範囲は逐次拡大されるべきものと考へる。

    統制会と統制組合
 
 次ぎに統制会の会員たるべきものの範囲は、その産業に関
する生産業者と販売発者であつて、生産配給を一元的に組
織化することを目的としてゐるが、必要に応じて原料の配
給業者、第二次製品の生産業者等を包含することも考慮
してゐる。これは個々の具体的な立場に当つて各主務大臣
が指定することになつてゐる。主務大臣によつて指定され
たもの、すなはち会員の資格をもつものは、当然その統制会
の会員なのであつて、特に加入行為を必要としないが、こ
れは統制会の性質上当然のことである。また、一定規模以
上の企業は組合を結成し、その組合を単位として統制会の

04

会員となることを認めてゐるのであつて、その組合を統制
組合と称してゐる。たゞし差当り従来の工業組合、商業組
合等も、大臣が会員たるべきものとして指定した場合に
は、加入できるのである。たゞ、これらの団体は大体府
県別を単位に考へてゐるのであつて、全国的な商工業組合
または組合聯合会は当然統制会によつて代替されるもので
ある。また、従来の各種の組合はその組織が統制会、統制
組合の組織と異ふものがあり、いはゆる多数決主義による
自由主義的な組織であるので、統制会の会員になるには現
在の組織そのまゝでは必ずしも妥当でない。従つて適当な
機会に改正する必要があると考へる。

    多角企業と統制会

 統制会の組織は、前述のやうに産業別に組織することを
原則としてゐる。しかし、現在の産業機構は資本を中心と
して形成されてゐるので、これを産業別に組織する場合に
はいろ/\な問題が起つて来る。特に問題となるものは、
一企業体が数個の産業を営んでゐる場合、その企業体を産
業別統制会に如何に加入させるかである。この点について
はいろ/\と誤解もあるやうであるから、この際少し詳
細に述べてみよう。第一は、親会社の下に数個の子会社が
ある場合、いはゆるコンツェルンの形態の場合である。こ
の場合には、各子会社はそれ/"\の産業別統制会に加入す
べきであることは当然である。
 第二は、一企業体が数個の産業を営む場合である。この
場合、(一)はその中の主たる産業が属する統制会にだけ加
入すべしとなすものであり、(二)は各産業別の統制会へそ
れぞれ加入すべしとなすものである。(一)は一個の企業体
の経営の統一性を保持し、多角経営の妙味を維持しようと
するものであつて、(二)は産業別統制会の純粋に重点を置
き、何よりも簡明率直な統制方式を尊ぶものである。これ
にはそれ/"\一長一短があるが、統制会の運営は会長の指
導者原理に基づくものであつて、その産業を綜合的に統制
運営して国民経済の総力を有効に発揮することを目的とす
るのであるから、その指導統制は各個の企業体の経営にま
で及ぶことは勿論であつて、そのために会長に対し統制会の
会員である法人または会員である団体を組織する法人の役
員の解任命令権すら認めてゐるのである。
 従つて徒来の各種の組合等の団体とは異なり、数個の産
業を営む一企業体が数個の統制会に加入することを認めた
としても、それ/"\の産業にそれ/"\の責任担当役員を決
定すべきことが当然に必要なのであつて、さもないと、各
統制会の指導は混乱し、統制会の運営は万全を期し難いこ
とになる。また、各産業毎にその経営指導権は当然それぞ
れの統制会長に移行し、従つて多角経営を綜合統制すべき
企業内役員の経営指導は事実上遊難することになり、その
企業は自ら産業毎に分離し独立する傾向を生ずることにな
る。
 徒つて多角経営の妙味を存置し、企業内の経営の統一性
を維持するためには、その営む主たる産業が属する統制会
にだけ加入させ、統制会長が一元的にその企業を経営指導
できるやうな措置を考慮することが必要である。
 勿論、本問題は産業別の分類方法の如何によつては或る
程度解決される問題であつて、単純にこれまでの分類分法
による産業別分類によらずに、技術的、経営的にみて、一
企業体であることが合理的であるものは、多角経営と本体
として、一団体として組織することを考慮すべきである。
さらに統制会の本質からいつても、細分的な産業別組織
は出来る限り避けるべきで、包括的な組織を目途とすべき
である。なほ、国民経済の綜合的運営を目途とする以上、
産業別組織がそれ/"\分立形態で存してゐるだけでは、そ
の目的を達成することが出来ないことは当然であつて、各
統制会の横断的な連絡組織が必要になつて来る。本令に

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は、この組織に関する規定はないが、実質上の問題として
考慮されなければならない。

   指導者原理で運営
  
 統制会は「国民経済ノ総力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル為
当該産業ノ綜合的統制運営ヲ図リ且当該産業ニ関スル国策
ノ立案及遂行ニ協力スルコトヲ目的」とするものであつ
て、その任務もこの目的から出発してゐる。
 第一は「当該産業ニ於ケル生産及配給並ニ之ニ要スル資
材、資金、労務等ノ需給其ノ他当該産業ニ関スル政府ノ計
画」の立案に対し参画し協力することである。
 第二は「当該産業ニ於ケル生産及配給ニ関スル統制指導
其ノ他会員及会員タル団体ヲ組織スル者ノ事業ニ関スル統
制指導」である。このためには固衆の綜合的な耗済湛営
。いい一,」ワ‘▼
計壬に基づいて、その産拳円の耳雄計賽を光秦し、安任と
以てその計葺を売遜しなければならない。従つて曾点を統
r●▲てい
制し音するために統制規侭を設けることが出衆るばか少
ヤなく、曾負忙封してもその産巣に帥する事項む調査するた
め忙必輩な資料の捜出む求め或ひは曾月の事業忙甜叩する萱
黍及び槍査も出氷るのである。
このやうに、その産業の繚合的な稚制碓脅について、再
家の日的に従ひ、南架の計茸に基づいて仝賓任を以て途行
川いん」打ん
する以上、そのために必婆な椎眼が輿へられなければなら
ないことは普然で、溌制曾の運脅はいはゆる「楕尊者腑理】
の方式によることにした。すなはち稚制曾は従雑の鮒伐と
いししっ小−
異つて曾長だけが意志決定横紳であり、業拷執行憮帥であ
るのであつて、合長以外の役負は単に曾長の補助機帥忙過
ぎない。従つて許識負によつて薮庇される庶事を瞼き、他
の役貞はすべて曾長が任命することにしてゐる。
L▼lん
また、紘曾も畢に含長の拓間槻帥であつて、決議機捕でな
いことも従雑の囲成と異ふ重嬰な鮎である。同時に決定さ
一てつてい
れた計‡は売仝に資行し、合長の戟制カむ十分に徹底させ
るために、倉月叉は曾月である圃億む組椒するものが、汝
令叉は津令に基づいて行ふ虚介に撞反したとき、公益を脊
一■はん
したとき叉は舵制親程に建反したときには、その役月を群
任すべきことむ命令できる七とを認めてゐる。

とのやうに・曾長の稚眼は橿めて強大なものであつて、こ
の倉長の確任は非常に重畢な開奄であり、倉長の如何にょ
一い。
つて耗制倉の成香は決定されるといつても過官ではない。
ほ・γ∫
徒つて合長の薄任は、業界から智弛鮮戯の慢官なものを鉄
‘ん小I。′▲‘ん
衝委貝として主抄犬臣が選雀し、その鍵衝垂貞が推蔵した
人物と主捗大臣が瓢可する方洪にょることにした。岡時に
し■●く一●
●長は公半無私、自由に自己の撒箕む遽行できるやうに
他の職捗とか商業に従事し待ないことにした。
・たり‘い
帝制曾の目的は同衷の経済カを戦率自的建成のため忙綜
合的に最も有効に鶏普することにあるのであるから、その
鶏替は粂増の有利性を目的とすべきであつて、場合によつ
r一い
ては伺人耗沖の有利性を犠牲にしなければならない。すな
●lん
はち、公纂康先の精紳によるべきととを必宰と†る析以で
ある●
▼ヽ▲’一い
しかし、】方において個Åの粧済もまた仝虐の一構成部
舟であり、輯家の生産カを形成してわる−の生鹿カである
に一_し●
ととを認識し、仝健のカと以てその構成部分む桝米るだけ
活用・してゆかなければならない。徒つて耗制曾は常に相互
■r●_い▲}九い
に相助け、相柄ふ迎帝非助の摘紳にょつて渾替されるこ
とが解封に必磐であつて、このやうにしてこそ仝世のカを
最も有効に教梯できるのである。