第二五一号(昭一六・七・三〇)
仏印の共同防衛成立
転廃業者の進むべき路 厚生省職業局
独ソ戦とドイツ軍 陸軍省報道部
−座談会− 金属増産を語る
支那方面艦隊戦況(六月中) 大本営海軍報道部
常会の頁
仏印の共同防衛成立
七月二十一日、日仏両国間に、大東亜共栄圏の一環たる仏領印度支那共同防衛の取極めが成立、二十六日、左
の如き帝国政府声明及び外務当局談が発表きれた。
帝国政府声明 昭一六・七・二六
近時帝國と佛領度支那との關係は、昨年八月松岡アンリー協定を始め累次の日佛協定に依り急速に緊密の度を加へ來れる處、今般更に佛印に關する共同防衞に付友好的話合に依り日・佛兩國政府間に完全に意見の一致を見たり。
帝國は日佛間に現存する諸取極、就中、佛領印度支那の領土保全並に主權の尊重に關する嚴肅なる約束に依り生ずる帝國の責務は飽く迄これを嚴守すると共に、今後日佛友好關係の攝iに努め以て兩國共榮の實を擧げんことを期す。
仏印の共同防衛成立に関する外務当局談
印度支那と帝国とは随分古い時代から文化的、歴史
的、経済的関係が深かつた。徳川鎖国前には安南、柬埔
寨にそれ/"\二ケ所の日本町があり日本との貿易は頗る
盛んであつたが、海禁後この関係は切断せられたのであ
る。近代に入つてから帝国の産業に対する原料供給地と
して、新たなる意味において往時の関係を復帰する傾向
を辿りつゝあつたが、昨年来頓にその関係は緊密とな
り、帝国がその建設に邁進しつゝある大東亜共栄圏の重
要なる一環となつてゐるのである。
仏国は印度支那の帝国に対するかゝる緊密なる関係及
び重要性を良く諒解し、客年八月松岡前外務大臣とア
ンリー駐日大使との間に文書を往復して、帝国の仏印に
おける優越せる地位を確認し、更に本年五月帝国との間
に経済協定並びに政治的了解に関する議定書を締結し
て、日仏印間善隣友好関係の樹立並びに政治的・経済的
緊密関係の増進を図る等、終始帝国との好意的協力を続
け来つたのである。
しかるにその後仏印を繞る内外の情勢は、最近欧州並
びに東亜における事態の変化に依り甚大なる影響を受け、
このまゝ稚移せば仏印の安全さへも脅かされんとする
の兆候漸く濃化し来つたのである。若しかゝる情勢が発
展して印度支那が混乱に陥るが如きことあらんか、仏
国は別より帝国にとりても自衛上看過し難き所であつ
て、日仏両国は仏印の地位に関し最も緊密且つ共通なる
利害関係に立つことを痛感するに至つたのである。
以上の観点よりして帝国政府は過般来加藤大使をし
て、ヴィシー政府と接衝を行はしめつゝあつたが、交
渉は極めて友好裡に進捗し、去る七月二十一日日仏両
国政府間に仏印の共同防衛に関し、完全に意見の一致を
見るに至つたのである。かくて仏印を紐帯として日仏両
国は一段と緊密なる関係に入つたもので大東亜の安定並
びに共存共栄に資すること大なるは言ふ迄もない。
なほ帝国政府が仏印に関する日仏の諸取極を厳粛に
遵守し仏印の領土保全及主権を尊重するの意嚮を有す
ることはこゝに更めて言ふ迄もなく、帝国としては今後
ますます日仏友好関係の増進に努め、日仏共栄の実を挙
げんことを期する次第である。