第二二四号(昭一六・一・二二)
翼賛議会について
大日本青少年団の成立 文 部 省
満州開拓事業の進展 拓務省拓北局
現代戦と空襲
実業学校卒業者の上級学校進学について 文部省実業学務局
台湾の保甲制度 台湾総督府情報部
タイ・仏印の国境紛争問題
現地寄稿 前線より銃後へ 中支派連 木原部隊岩倉隊 郷 博之
文部省推薦図書紹介
翼賛議会について
第七十六議会は一月二十一日から再開されたが、今議
会は特に「翼賛議会」と称されて、国民一般から非常に注
目されてゐる。立法府たる帝国議会は伊藤公の憲法義解
中、憲法第五条の解説附記に「蓋立法ノ大権ハ固ヨリ
天皇ノ総フル所ニシテ議会ハ乃協翼参賛ノ任ニ居ル
本末ノ間儼然トシテ紊ルヘカラサル者ナリ」とあるが如
く、本来「翼賛議会」たるものである。併し今議会が特に
翼賛議会として注目さるる諸点は、色々の論議もあるが
一、支那事変勃発以来、わが国は東亜新秩序の建設を目
標として闘つて来たのであるが、この目標は昨秋日独
伊三国同盟の締結によつて、すでに独伊その他の諸国
によつて確認された。更に昨冬には南京政府が確立さ
れ、新国民政府との間に基本条約の締結を見、いよい
よ日満支三国が相協力して東亜共栄圏確立の大目標に
向つて邁進することとなつたが、しかし一方米国のわ
が国に対する挑戦的な態度は、日と共に露骨化して来
てゐる。世界新秩序政治の一環として起ち上つたわが
国は、今や国際的には歴史あつて以来、未だ嘗て見ざ
る重大局面の前に立たされねばならなくなつてゐる。
かゝる超非常時に対しては、議会としても自ら従来と
異つた真剣な態度がなくてはならぬのである。
一、またこの超非常時を克服すべく、国内的には高度国
防国家の建設を目標とする大政翼賛運動が展開されて
ゐる。このために政治の新体制確立に即応すべく、政
党政派は解消された。初めて無党無派の議会となつた
のである。かく面目を一新した議会がいかに、立法府
として翼賛の実を発揮するか。
の二点に集約され得ると思はれる。
政府は十四日より四日間、首相官邸に貴衆両院議員代
表竝びに言論界、経済界の各代表者を招いて、近衛内閣
総理大臣及び東條陸軍大臣、及川海軍大臣より内外の
情勢を詳細に説明し、この超非常時克服について軍官
民が一体となつて協力すべきことを要請したが、その
感銘は極めて深いものがあり、この感銘は必ずや翼賛議
会に反映されるものと期待されてゐる。
また議会としても、大政翼賛運動の展開に呼応し、初
めて経験する無党無派の議会において、大いに大政翼賛
の実を挙ぐべく努力してゐる。開設当時の議会はともか
くとして、政党時代にあつては、すべての議員の議会行
動は、その所属する政党政派、或ひは各政党政派よりな
る院内各派交渉会によつて統制されてゐたので、今回衆
議院においては政党に代る全議員の社交倶楽部の意味
において議院倶楽部が結成された。この議院倶楽部は規
約第一項に「本倶楽部は会員相互の親睦を厚くし、研究
を進め、各種行事を通じ大政翼賛の実を挙ぐるを以て目
的とす」とあるが」かやうに全議員が和衷協力して、翼
賛議会の実を発揮すべきことを明記してゐるのである。
また従来の院内各派交渉会に代るに、議院協議会が設置
せられて、議事進行の円滑化を期することになつてゐ
る。従つてもはや議会内における各勢力の対立相剋の如
きは、原則としてあり得ないことになつてゐる。
議会内の言論が海外に与へる影響は極めて重大なも
のがある。殊に現下の如く未曾有の超非常時に際会し
て、機密に抵触するが如き言論や、利敵行為となるが
如き所論は、絶対にあり得べきではないが、更に一歩を
進めて、わが国策の大目標たる東亜共栄圏の確立竝び
に高度国防国家の建設に対して、国民代表としての議
員の熱烈なる建設的な論議が、集注されて、わが国民
の巌の如き不退転の決意が、強力に表現されなければな
らない。