第二二〇号(昭一五・一二・二五)
国家総動員態勢の進展 企 画 院
経済新体制について 企 画 院
臨時中央協力会議の経過
大政翼賛会実践要綱について
燃料の話 木炭
中国国民党三中全会
経済新体制について 企 画 院
近代戦と軍需品の需要
近代戦に於ては軍需品の需要は異常に膨張し殆んどそ
の際限がない。第一次世界大戦当時にあつては、例へば
一九一三年ドイツの鋼鉄年産額は約千七百万噸、月額
平均百四十万噸であつたのが、戦争最後の二ケ年は軍需
産業だけで月額百万噸の鋼鉄を需要した。また英国に於
ける戦前の羊毛に対する軍需は、一般民需の一%以下で
あつたものが、一九一七年には殆んど戦前の全需要額に
達し、即ち殆んど百倍にも膨脹した。これに反し、供給
は戦争開始当時から需要と同一の速度では増し得ない。
こゝに戦時下の限られた物資供給力に相応し、物資の需
要を削減する必要があり、従つて、戦争遂行に遺憾なきや
うに需要の優先順位を決定し、計画的に物資の需給を均
衡せしめることを必要とする。また、かくの如く武力戦
の遂行に無限の経済的財貸の補給が絶対に必要である結
果、十分な而も確実な財貨の調達を目指しての闘争が、
経済活動の凡ゆる方面に及び、結局敵国の経済的統率力
を圧倒する為めには、如何なる手段をも辞さないやうに
なり、こゝに必然的に経済戦に主力が注がれ、従つて、
この経済戦に対抗する為めに国民経済のアウタルキー化
政策を必要とするに至るのである。
しかるに皇國内外の情勢は、北辺未だ必ずしも平穏な
らず、東亜の新秩序建設の前途また幾多の峻嶮(しゆんけん)あり、
世界新秩序建設の怒涛(どたう)は、英米の盤力を正面から我が皇
國の岸に激しく打寄せてをり、国防の充実が今日ほど
喫緊なことはなく、しかも維新以来、漸くその第一歩を踏
み出し且つ英米に依存することの多い我が工業力で、今
にはかに独立独行、東亜新秩時建設の大業を背負はなく
てはならない状態に立ち至つてゐるのである。
軍需品の確保と生産拡充
現下我が国経済の使命は、実に武力戦に於て、将又経
済戦に於て、絶対に自国の優位性を保持し、巨大な軍需
品の供給を我が国経済力のみで円滑、迅速且つ適確なら
しめることにあるのである。しかし、国内生産カ(商工
省調査の昭和十四年全国工業統計は、我が国工業生産額
が二百四十三億六千万円であることを示してゐる。勿
論、この他に農鉱業等の生産を当然考慮すべきことは素
よりであるが)と百億に上る軍事予算とを比較する時、
当然軍需品以外の生産殊に一般民需について多くの節滅
を必要とすることは明瞭であらう。
しからば、この限られた生産力をして、必要な限度に
於て軍需品生産を確保せしめると共に、その生産力を拡
充せしめる方法として第一に考へられることは、軍需品
の生産を他のものの生産に比して常に利潤多きものとす
ることである。しかし乍ら、このやうにして軍需に物資
を吸収する場合には、一般民需品に於ける需給の不均衡を
拡大し、その結果は民需品の価格を次第に高騰させ、従
つてこれ等の民需品の生産に比し、常に軍需品の生産を
優位に置く為めには、無限にその価格を引上げなければ
ならない結果となる。従つて、この方法を維持できない
ことは、この一事からも明瞭であらうと思ふ。
次に第二の方法として考慮されることは、生産、配
給、消費の全面に亙つて統制を実施することであらづう。
この第二の方法こそ事変以来実施されて来た方法に外な
らないのである。即ち限られた一国の生産力を軍需充
足、軍需生産力の拡充、生活必需品の長少限度確保の三
つに区分し、これに基づいて国民経済の運営を生産、配
給、消費の全面に亙つて統制して来たのである。しか
し、その結果は遺憾ながら、必ずしも成功とはいひ得な
いのである。これは、官僚の統制技術の拙劣さによるこ
とも決して少くはないが、その根本は統制経済そのもの
の欠陥に外ならないと考へる。
即ち、従来の方法は、いはゆる自由主義経済機構の上
に於ける自由主義的経済運営を原則として、たゞその運
営を必要に応じ法律や行政の力--権力--によつて一定
の方向に向けようとする方法であつたのである。従つ
て、各個の企業はそれ/"\各自の目的、即ち自己の企業
を最も有利に運営し、利潤をより多く獲得しようとする
目的から運営され、且つ企業相互間に何等の秩序も又統制
もなく、相互に相競(きそ)ふことを本来の姿とする形に於て運
営されて来たのであつて、国家経済として各企業が綜合
統一された形で運営されたのではなかつたのである。そ
れ故に、統制の形式も常に自由の制限といふ形として現
はれ「何々は製造すべからず」とか「割当を超えて使用す
べからず」とか、いはゆる「べからず」の羅列となつたので
ある。ところが「べからず」はその反面にその他のことは
「してもよろしい」といふことになる。しかも各企業の運
営はそれ自体自由主義的な運営を原則としてゐる。そこ
で「べからず」の抜道探しが企業の本道になつてしまつ
て、規格を定めれば規格品はなくなつて規格外品ばかり
つくられたり、公定価格が定まれば、その品物は市場から
なくなつて、公定価格のない品物ばかり市場に氾濫する
やうな状態を現はしたのである。しかし、それでは戦時
に於ける不足した物資、労力を前提としての経済の円滑
な運行は期し難い。そこで、次ぎ/\に「べからず」の数
が段々増えて行くことは必然であつて、終には自由主義
経済に自由なしといふ有様になつて来たのである。拘束
経済といふ言葉は、実によくこの間の消息を表現してゐ
るのである。
経済新体制の目的
それに伴つて最近「統制の行過ぎ是正」といふことが強
くいはれるやうになつたが、その「統制の行過ぎ」として
挙げられるものも、決して必要がなくて実施されたので
はないのであつて、皆これを必要とし、しなければなら
なかつた原因はあるのである。しかし、それが「統制の
行過ぎ」といはれる所以は、行過ぎではなくて、統制そ
れ自体の欠陥、行き詰りにその原因があるのである。従
つて、このやうに国民経済を萎縮させ、その活力を減殺
するやうな拘束経済の行き方を改め、以て戦時経済の運
行を円滑且つ適正ならしめようとすることが、経済新体
制の第一の目的なのである。その上、権力による統制即
ち自由の制限は、統制するものと統制されるものとの間
に対立、不信の機運を助長し、戦時に於て最も怖るべき
官民離反の情勢すら生じようとする虞れがあり、終済新
体制を一日も早く確立しなければならない状勢になつた
のである。そしてこの目的達成のための方途こそ、すな
はち国民経済の計画的経営---綜合的計画経済の遂行な
のである。
前述のやうに、限られた生産力即ち労力、資材、資金
を以てその生産力を超えた尨大な生産の要求に応じよう
とする場合には、当然その要求の緊急の順位を国家の必
要に応じて決定し、その要求を限定し、それに基づいて
生産力を配分しなければならない。この生産力の配分、
即ち生産の計画化に伴ひ配給、消費についても自らこれ
が計画化されなければならないことも亦いふを俟たない
ところである。
こゝに国民経済運営の綜合的な計画が樹立されるの
である。この計画は国家の目的に従つて樹立されなけれ
ばならないことは、計画樹立の必要が国家の必要から生
じて来てゐることから見て当然のことであり、同時にそ
れが綜合的でなければならないことは、その計画が軍需
の充足、軍需生産力の増強、生活必需品の確保と全経済
に亙る要求に対する配分の決定を目標としてゐることか
ら見ても亦当然である。
国民経済運営の統一方法
この国民経済運営の綜合的計画に基づき、国民経済を
経営しようとする場合に、無秩序に分離独立した各企業
をそれ/"\個々に運営することによつて、その目的を達
しようとすることは到底不可能であつて、各企業を国民
経済として綜合統一し、これを運営することを要する。
その経営を綜合統一する方法としては、二つの方法が考
へられる。
第一の方法は、全産業の国家管理乃至国営である。現
在、漸く国策会社が数多く設立されてゐるのは、この
傾向を示すものである。しかし乍ら、企業の国営乃至国
策会社による経営は、その反面に於て民営を否定する思
想であり、従つて民間の能力経験の利用の否定であつ
て、国家総力の有效利用に矛盾する処があるばかりでな
く、却つてそのため生産能率を低下せしめる虞が少くな
い。従つて挙国一致、官民協力、国家総力を最も有效に
発揮することを特に必要とする現在、採るべき方法でな
いことは今更いふを俟たない。
第二の方法として考へられるものは、全企業を綜合統
一し、国民経済として組織し、その組織体を以て国民経
済運営の中心となすものである。即ち、国家意思を以て
国家目的に従つて全企業の運営を一元的に統率し得る。
而して全企業活動が国家意思に従ひ、国家目的に帰一し
得られるやうな全産業の綜合的組織を樹立し、その組織
の運営によつて国民経済の計画性を確立しようとするも
のである。従つて各個の企業は、国民経済組織の構成部
分として国民経済運営の綜合計画の下に、それ/"\その
部分々々を担当すべき地位に立ち、且つその職分を有
し、その職分を全うすべきことを企業運営の目的として
運営されるのであつて、これまでのやうに、企業運営の
自己目的を各自個々に有しないこととなるのである。こ
の第二の方法こそ、経済の新らしい体制として閣議で決
定されたものである。
最高経済会議の問題
右の組織に関しては、既に各民間団体でそれ/"\研究
され、発表された多くの案があり、しかも皆大体に於て
大同小異であつて全産業を産業別に分類し、各産業部門
毎に企業及び組合を単位として、同一業種に属す業者又
は同一物資に関する業者を網羅する業種別、又は物資別
経済団体を組織する点では、今回閣議で決定されたの
も、その構成の趣旨は同一である。たゞ、民間経済諸団
体の案と閣議決定案の相違として挙げられるのは、産業
部門別団体を統合する中枢機関、即ち最高経済会議乃至
団体の設置の有無である。しかし乍ら、この点に関して
は閣識決定案にも「全産業を統轄する最高経済団体はそ
の必要ありと認めたるときに於てこれを設置す」と明示
されたやうに、政府もかゝる機関の設置を必要なしとし
てゐるのではない。寧ろ綜合的計画経済の遂行には、全産
業の運営を綜合調整すべき中枢機関の必要性は、これを
明瞭に認識したものである。しかし乍ら、かゝる産業組
織はこれを直ちに全産業に亙つて実施することは極めて
困難なばかりでなく、その為め経済の運営を一時的にも遅
滞せしめるの虞がないとは言へない。従つて「経済団体
の編成に当りては、重要なるものより遂次必要の順序に
よりこれを組織」する方針を採つてゐるのであつて、従
来兎角このやうな場合に陥り易い弊害であつた上部組織
からの編成は、極力これを避けることとしたのである。
それと同時に、今後の国民経済の運営に当つては、この経
済団体を中心として、政府はこの経済団体を指導監督す
るだけの立場に立たうとすることは閣議決定案に「経済団
体の整備に伴ひ其の運営は之を出来得る限り自主的なら
しめ指導監督」も亦大綱にのみ止めることを明示された
ところによつて明瞭であるが、現在の行政機構では、単な
る指導監督それ自体に於ても徒らに屋上屋を重ねるやう
な複雑さを完全に排除することは不可能であり、殊に最
高会議の設置はこの傾向を大ならしめるものである。
元来現在の行政機構も自由主義経済運営の上に構成さ
れたものであつて、従つて綜合的な計画経済を遂行しよ
うとする場合には、必ずしも妥当でないものが多く、根
本的な政策を必要とする。例へば、経済関係官庁なども
従来のやうに単に外部に在つて監督し助長する機能を有
するやうに組織されてゐる機構を改め、綜合的計画の下
に国家経済を運営すべき機構として、官民機構を一元的
ならしめることを前提とし、その一部担当機関としての
地位と明瞭ならしめるやうに改善しなければならない。
従つて、この改善に伴つて最高経済団体の組織と機能を決
定するのでなければ、却つて各種の摩擦相剋を生ずる虞
がある。この点に、「本体制の整備に即応して関係行政
機構及びその事務の再編成を行ふ」ことを明瞭にすると
共に、最高経済団体の設置を後日に譲つた理由があるの
である。
要するに、綜合的計画の下に国家経済を運営すること
を目途として官民協力の機構の確立を期さうとするため
に外ならないのであつて、各企業がそれ/"\独自の目標
の下に分離経営されてゐる従来の民有民営の機構をも、又
国家管理による民有国営の機構をも共にこれを排除し、企
業は民有民営を本位とすると共に、経営の公共性を確認
し国家目的に従ひ、各自その職域に於てその職分を全う
すをやうな体制を確立しようとするものである。
今後の経済運営の方向
いま今後の経済運営を一例を挙げて典体的に説明すれ
ば、例へば国家として今年度鉄一千万噸の生産を必要と
する場合に、鉄関係業者の団体の指導者に対しその要求
を示し、その意見をも参酌して団体指導者に対し一定
の原材料労力等を前提とし、又生産別の種別、品質、価
格等を指示して一千万噸の鉄の生産を命ずるのである。
この場合、指導者はその生産に対して国家に対し責任を
負ふと共に、その生産を確保するために鉄関係企業を、
如何に運営すべきかを決定し指導すべき権限が与へられ
るである。指導者は全生産設備、原料、労力等を綜合
し、その效率を最も有效に発揮することを前提とし、企
業者の運営方針を定めて団体員である各企業者に対して
それ/"\生産の割当を為すのである。しかして生産割当
を受けた各企業者は、その割当量の範囲で団体指導者
に対して生産の責任を負ふこととなると同時に、その生
産の方法手段には、自己の創意と能力とに之を任される
のである。
このやうに、団体指導者は団体員である各企業者の経
営活動につき、政府に対し責任を担当する限り当然各企
業者を統轄指導し得べきであり、又各企業の担当者任免
については一定の発言権を有すべきは当然である。その
上、産業団体の組織は国家の綜合計画運営の機構であ
り、従つてそれは国家意志で貫かれ、国家目的に従つて
運営されることを要し、この意味でその全体を通じて指
導者原理の確立されることを要し、最高団体の指導者か
ら基礎単位である企業や、組合の指導者に至る迄その指導
関係が明瞭にされなければならない。しかしてこの点に
関しては「経済団体は業者の推薦に基づき政府の認可す
る理事者指導の下にこれを運営す」及び重要産業経済団体
は重要政策の実施「計画実行に付き下部経済団体及所属
企業の指導に任ず」と閣議決定案に規定されたところに
よつて明瞭にされてゐる。なほ経済団体の指導者に対し
ては、経済団体の運営を確保する為め「生産、配給等経営
の実績」を調査し及び「生産者の品質格の検査」をも為
し得る権限が与へられてゐる。
以上のやうに経済団体は、国民経済運営の中心として
政府と協力し、各々その分野に応じて国民経済の任に当
るものであり、従つて性質上公共的な法人であることは
当然であり、何時に従来の各種組合法とはその性質内容
に於て全く異ふので、新たな根拠法の制定を必要とする
ものであることは言ふを俟たない。
経済新体制の目的
次に経済新体制の目的とするところは、綜合国力の全
效率を最も有效に発揮できる体制を確立することであ
る。我が国の経済は、その後進性及び重工業に関する
原材料の資源に乏しい性格から、繊維工業等消費材工
業を中心とするの産業構成を有してゐる。しかし乍ら、
現下の情勢は好むと好まざるにかゝはらず、第三国への
依存から離脱することが必要であると同時に、重工業の
確立とその生産力の拡充を要請するに至つた。従つてそ
の当然の結果として、国家の要請と資材、生産設備との
間に著しい不均衡がある我が産業構成の再編成を必要と
するやうになつた。この為め第一に要求されものは、限
られた資材、労力、資本を一の綜合された力として、最
も有效にその效率を発揮できる体制の確立でなければな
らない。しかもこの問題は、三国同盟の締結以来殊に急
迫した問題となつて来た。個々の生産力即ち企業が、
それ/"\相互の関係に於て何等の組織的関聯結合を有た
ずに、個々に運営される場合には、その個々の生産力自
体として如何に能率的に運営されやうとも、それを綜合
的な国民経済的見地から見るときは、多くの不合理が存
し又多くの非能率的な事実が見られるのである。
この資材と生産設備の不均衡を調和し、これを国家総
力といふ綜合された力として、その效率を最も有效に発
揮しようとする方法として二つの方法が考へられる。そ
の一は企業の合同であり、その一は生産乃至経営の協同
形態の編成である。第一の企業合同は生産規模の合理化
の問題と全企業の運営の合理化の問題の二つに問題が分
かれる。そして生産規模の合理化を目的とする生産設備
の再編成には、生産の合理化の目的を達成する為めに
は、之を実施することが必要なことは勿論であるが、
こゝに述べようとするものと多少その意味を異にする
ので、この際は余剰労力の利用による小工業経営の処
理については、十分の注意が必要なことを述べるに止め
たい。しかして全企業の運営の合理化を目途とする企業
の合同は、それが資本的合同を前提とする意味に於て、多
くの派生的弊害を生ずる虞があるばかりでなく、必ずし
もそれによつて所期するところの目的を達することが出
来ない場合も少くない。従つて企業の運営を合理化する
為めの方法として、経済新体制で採つたものは、第二の
方法即ち生産乃至経営の協同形態なのである。
産業構成の再編成
この為めには国民経済を各企業を単位とする綜合経営
協同体としてこれを組織編成することを必要とする。し
かし乍ら、この編成は前述の計画経済体制確立を目的と
する経済団体の組織と何等異なるところはない。たゞ単
位経済団体がそれ/"\経営協同体として組織されること
が、その基本的要件であり、又その経済団体の綜合形態が
又経営協同体であるべき性質を有するものでなければな
らない。例へば、同一業者の経済団体を運営する場合に、
それ/"\分割されたまゝの力として運営された個々の企
業が一つのものとなつて、最も合理的能率的に運営され
るやうに各個の企業経営を共同にする形態に確立するの
である。即ち場合によつては、高能率な優秀な生産設備
を有する企業に生産を集中し、低能率な生産設備を休止
せしめるとか、また必要に応じては生産量に応じ一部生
産設備を全運転させたり、過剰設備を休止させて企業全
体としての能率を図るとかの方法で、全体としての效率
を最も有效に発揮出来る体制に経済団体を組織すること
が必要である。この場合には、全体をして連帯の観念で
結合させることがその基本要件で、かうしてこそ限ら
れた資本、労力、資材で、最も多くの生産を確保し、
併せて時局の難関を切り抜けられるものと信ずる。そ
れと同時に、経営協同体の組織を確立することによつて
連帯共助の体制も又これを確立することが可能であつ
て、こゝに初めて物資資材と生産設備との間に存する著
しい不均衡の状態を調整し、且つ急激な産業構成の転換に
対処することが出来るのであつて、少ない犠牲と活溌な
る産業再編成は、この同業連帯を中心とする綜合共助体
制の確立がなくては到底不可能であるといはなければな
らない。
以上経済新体制の基本観念である「綜合的計画経済の
遂行」と「国民経済を有機的一体としての国家総力の発
揮」竝びにこれが基礎である機構について述べた。要す
るに、全産業を各産業別に分類し、各産業部門別に企業
と組合を単位とし、同一業種に属する業者又は同一物資
に関する業者を網羅する経営協同体である業種別又は物
資別経済団体を組織し、右経済団体に国家意志を以て貫
く指導者原理を確立し、各企業又は各経済団体がそれぞ
れ国家綜合計画運営等の部分担当者である地位に立ち、
公益的責任を自覚し自己の創意と能力とを発揮し、国家
目的に帰一して国家総力を最も有效に発揮するやう経済
団体を中心として運営されることが、即ち経済の新体制
の目標とするところである。
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