第二一七号(昭一五・一二・四)
日華基本条約の締結
条 文
付属議定書
付属議定書ニ関スル了解事項
日満華共同宣言
帝国政府声明
汪国民政府主席談
張満州国国務総理談
条約締結までの経緯
条約と共同宣言の説明
年末年始の鉄道輸送対策 鉄 道 省
船員政策の強化 逓 信 省
(船員に関する三総動員勅令)
百二十億貯蓄達成運動 国民貯蓄奨励局
支那事変の現況 陸軍省情報部
規格を統一される書物と紙
三国同盟の発展 外務省情報部
支 那 事 変 の 現 況
陸軍省情報部
敗戦に次ぐに敗戦を以てし気息奄々として死期の至るを
待ちつゝある蒋介石は、今なほその面目にこだはり、あてど
なき抗戦を続けてゐる。支那事変既に三年半、この間世界
の情勢は激変した。即ち支那を搾取しつゝあつた英帝国は
今や没落の運命を辿り、日独伊等新興国家の新秩序建設の
理想は歩一歩と建設せられてゐる。旧秩序の崩壊と新秩序
の擡頭は、正に天の命であるといふべきである。今こそ東
亜民族は東亜に帰らなければならない。しかるに東亜の一
角一隅に今なほ天の命に逆いて無意義な戦ひを敢へて続け
つゝある蒋介石こそ憐れといふべきである。「日独伊三国
同盟締結により日本と英米とは衝突すべく、そんなことに
なれば勿怪の幸ひ、和平はもう暫し待たう。好い日和が来
るかも知れない」といふのが彼の今の心境であらう。
先にわが軍は仏印に進駐し、援蒋ルートの根本た絶ち切
つたので、このルートの通路に位する南寧に兵力を置く必
要がなくなりこれを撤収して他の方面に転用した。南寧撤
退は、これだけの明白な意味のものでしかないのに、蒋側
は「日軍南寧撤退、是レ勝利到来ノ微光、抗戦建国ノ目的
達成スルハ今日ヲ措イテ他ニナシ」などと称し、これに
よつて士気の鞭撻に努めてゐるといふ憐れな有様である。
しかるに事実は、皇軍の仏印進駐以来、仏印にあつた蒋
介右側の夥しい滞貨は悉くわが方に接収又は抑留され
た。これによつて蒋側はいよ/\物資の欠乏を来し、困窮
を極めてゐることは、今回「査禁日貨条例」即ち日貨の奥地
流入を極力防止する政策を改め、占領地物資の吸収工作に
転換し、先に日貨取扱者を漢奸として厳罰に処してゐたの
が、今では却つてこれを奨励するといつたやうな変更を余
儀なくせしめられたことによつても明らかである。
一方獅子身中の虫ともいふべき共産党、共産軍は、専ら
拡大工作を進め、今やその勢ひ全支に浸潤せんとしてゐる
が、これ亦蒋介石にとつての悩みの種と見え、各戦区にこ
れが防止対策についての指令を盛んにやつてゐる。共産軍
は去る八月、いはゆる百ケ団大戦を呼号して華北全正面に
相当大規模の襲撃を実施して以来、わが軍の各方面、殊に山
西地区方面に対する絶えざる粛清作戦によつて、秘かに設
けてゐた根拠地も徹底的な打撃を受けてゐる現況である。
かく見て来たならば蒋介石を繞る四囲の情勢は正に四面
楚歌である。民衆は勿論、明ある者はすべて和平の到来を
冀求してやまない。この厳然たる事実に眼を蓋ひ、天命に
逆らひ東亜の新秩序建設を阻害しつゝあることは、寔に慨
歎に堪へぬところである。正にこれ日満両国竝びに新生支
那三国にとつて道義の敵である。皇軍は今後と雖も抗日勢
力の潰滅のため、更に奮闘努力を期してゐるのである。
次に、去る十一月中旬以来開始されてゐる漢水東西地区
の戦況を概観しよう。
漢水方南の戦況
本年夏わが軍が宜昌を占領して以来、宜昌附近に集結
しつゝあつた約百ケ師に余る敵軍は、その補給路を切断さ
れたこととなり、こゝに已むなく兵力を湖南、湖北の両
地区に分散せしめつゝあつた。その中李宗仁麾下第五戦区
約三十ケ師のものは、概して襄東、襄西地区の北部山中に
退き、「冬期総反攻宜昌奪還Jをモットーとしてひたすら部
隊の整備訓練に努め最近漸くその再編を終へたるものの如
く蠢動を開始する徴があつた。わが軍は、敵の機先を制し
その蠢動を封殺するに決し、厳寒迫る十一月中旬以来作戦
行動を開始し、漢水東西地区の敵を撃破、前進中である。
わが軍は概ね随県、安陸、荊門、当陽、宜昌の線より一
斉に攻撃前進を開始した。この戦場に於て既に数回に亙り
皇軍の威武を体験せしめられた敵は、わが軍の進撃の前に
早くも潰乱四散しつゝある。わが陸海航空部隊は敵の後方
地区の爆撃を実施、敗敵の捕捉に協力しつゝある。