大日本青少年団の成立 文部省

  高度国防国家体制の
  建設に即応するもの


 空前の世界動乱のまつ唯中で、肇國以来曾てない重大
な局面に立つ我が国は、この際一日も早く万難を排し
て、物心両面に亙つて国家の実力を十分に培ひ、且つ、そ
の総力を最高度に発揚し得る体制を、国家生活のすべて
の部面に亙つて整備しなければなりません。即ち高度国
防国家体制の建設は我が国刻下の最緊要事であります。
 大日本青少年団も、事にこの国家の要請に応じて生れ
出たたものであります。即ち我が国青少年団の主流とし
て、光輝ある歴史と伝統とを以て青少年教育に貢献し来
つた大日本青年団、大日本聯合女子青年団、大日本少年
団聯盟、帝国少年団協会の関係当事者間の非常な熱意あ
る協力によつてこの四団体を打つて一丸として、こゝに
新たに、強力な国家的な大日本青少年団は、去る一月十六一
日東京明治神宮外苑日本青年館において盛大厳粛な結
成式を以て成立し、文部大臣が団長として就任、副団長
以下本部役員の主脳部も発表されました。
 新団則に基づく全国地方団は本年三月末までにそれぞ
れ結成を終る予定でありますが、差当り大日本青少年
団の統制下に入るべき団員の総数は約五百万人でありま
す。

   大日本青少年団の本質


 大日本青少年団はその団則に明かに示されてゐる通り、
 皇国ノ道ニ則リ男女青少年ニ対シ団体的実践鍛錬ヲ施
 シ共励切磋確固不抜ノ国民的性格ヲ錬成シ以テ負荷ノ
 大任ヲ全クセシムル
を目的とするものであります。即ち我が固の男女青少年
の皇国民としての実力を一層強く固め、且つそのカを高
度に発揮させるために、青少年の生活を教養訓練として
具現せしめようとする見地からして、全固の青少年を打
つて一丸に組織し、強固な団結の下に国家の要請する統
制ある訓練を団体的実践的に施して、青少年活動を高度
国防国家体制の建設に力強く協力せしめようとするも
ので、一言にして言へば、大日本青少年団は高度の国民
的修練体であります。

   新組織の重点

 右に述べたやうに、大日本青少年団は我が固青少年の訓
練体であります以上、その訓練を徹底するためにはその
組織と指導は、我が国青少年教育の根幹である義務制た
る小学校、青年学校と不離一体のものでなければなりま
せん。よつて大日本青少年団は組織の最重要な点をこゝ
に置いたのであつて、文部大臣が団長となつて全青少年
を統率指導し、各道府県の地方団は地方長官が団長とな
つて統轄し、基柢組織として最も大事な町村の単位団た
る青年団、女子青年団、少年団はそれ/"\青年学校、小
学校を中心としてその通学区域を標準として組織し、青
年学校長、小学校長がそれ/"\団長となつてこれを率ゐ
ることとしたのであります.そしてその団員は、
 青 年 団
  (普通団員) 青年学校生徒及び十五歳乃至二十歳
           の男子青年
  (幹部団員) 幹部又は指導者として加入する二十一
           歳乃至二十五歳の男子青年
 女子青年卒
  青年学校生徒及び十四歳乃至二十五歳の未婚の女子
  青年

 少 年 団
  尋常小学校第三学年以上の小学校児童

となりましたが、これは何れもその中心をあくまで学校
に置く原則の現れでありまして、殊に男子青年を普通団
員と幹部団員に分けたのは、青年団を高度訓練体制たら
しめる趣旨から出たもので、普通団員(二十歳までとある
のは、入営前までの意味であつて、中等学校等在学者は含まれ
てゐない)をニ十歳以下としたのは、青年学校教官と現在
の徴兵の実情から考へて直接訓練の対象をこの年齢層
に置き、また二十一歳乃至二十五歳の通常な者を幹部団
員としたのはこれ等の者を団の年少指導者(単位団の各部
の部長並びに役員、分団長並びに分団幹部、班長等となるの
が適当である)として率先垂範後進の青年の誘導に当らせ
て、団の規律統制の強化を図ると同時に、その活動を活
溌にするためであります。
 次に重点とするところは、指導者の整備といふことで
あります。高度の生活訓練体としての青少年団にとつて
最も大切なことは、団生活の中に規律を確立すること
と、団活動を豊富にすることが大切であります。このた
めには、指導者が至誠一貫全責任を以て真に権威ある
指導をすることが肝腎であります。新組織が中央地方を
通じ指導者はすべて上部の任命としたこと、広く官民各
方面の練達の士の参画を求めてゐることは、一に青少年
団の機能の充実、統制の強化、活動の活溌を期してゐる
のであります。

   指 導 方 針

 大日本青少年団の本質は、高度な国民的修練の体制で
あります。
 そこで指導方針の第一は、國體の本義を体得し、よく
皇運を扶翼し奉るの信念に透徹した国民的性格を錬成す
るにあります。
 その第二は、青少年をして我が国の使命と我が国が当
面する内外の情勢を明確に認識させて、これに即応して
国家の目的とするところを達成するために、信念と勇気
とを以て勇往邁進するやうに訓練すること、すなはち高
度国防国家体制の建設の目標に向つて青少年活動(男女
青年にあつては殊に生産に従事する者としてその職能活動)を
強力に遂行させることにあります。
 その第三は、以上の方針を実現するためにその訓練方
法の重点を団体的な実践修練に置くのであります。即ち
団体生活を通じて各団員の団結意識に基づいて集団的(全
員が一ケ所に集合しての場合、一定企画の下に各員がそれ/"\の
部署にあつて一定目的に努力する場合)に訓練し、その訓練を
あくまで事上錬磨たらしめることが肝要であります。

   訓練の実際

 右の方針に基づいて、大日本青少年団の任務を果すた
めには種々の施設が企画されるのでありますが、最も
根本的な大切なことは、指導者の養成といふことであり
ますが、次に青少年団の一般的訓練として適当と思はれ
る事項を挙げて参考に供します。

 一、國體観念の明徴
  神饌田の経営、神社に対する奉仕作業、国史、郷土
  史研究、偉人賢哲の事績顕彰
 一、時局認識の徹底
  青年常会、読書会
奉仕作業、大陸現地訓練
 一、青年道場経営
  青年常会、各種修養行事
 一、生活訓練
  礼法、交通道徳、公衆衛生、禁酒禁煙の断行
 一、国防訓練
  団体訓練、機動訓練、海洋訓練、航空訓練
 一、防災訓練
  動員、防空防護、防火防水、救急法
 一、野外訓練
  設営法、炊爨法、測量、方位判定、読図、夜間訓練
 一、産業活動
  食糧、飼料、燃料増産、一人一研究、共同研究、技
  能研究、技能協議会
 一、拓殖訓練
  現地事情研究、現地訓練、義勇軍進出、送出
 一、集団勤労訓練
  編制法、設計法、工具知識、工法、青年営舎建設、
  各種作業
 一、体位向上
  武道、体育運動、衛生、育児、救護
 一、科学性訓練
  科学知識向上、家庭科学化、研究
 一、教養和楽
  図書館、巡回文庫、郷土博物館、文書教育、ラヂオ
  普及、演劇、映画、音楽、舞踊、茶道、生花

 大日本青少年団則

第一条 本団ハ大日本青少年団ト称ス
第二条 本団ハ皇国ノ道ニ則リ男女青少年ニ対シ団体的実践
      鍛錬ヲ施シ共励切磋確固不抜ノ国民的性格ヲ錬成シ以テ負
      荷ノ大任ヲ全クセシムルヲ目的トス
第三条 本団ハ前条ノ目的ヲ達成スル為左ノ事業ヲ行フ
 一 団員ノ教養訓練ニ関スル事項
 二 指導者ノ養成ニ関スル事項
 三 青少年教育ノ調査研究ニ関スル事項
 四 外国青少年団体トノ連絡提携ニ関スル事項
 五 其ノ他本団ノ目的達成ニ必要ナル事項
第四条 本団ハ本部及地方団ヨリ成ル
第五条 本部ハ之ヲ東京ニ置ク
 本部ハ地方団ノ指導統制ニ当ル
第六条 本部ニ左ノ役員ヲ置ク
 団長
 顧問   若干名  副団長    若干名
 審議員  若干名  参与     若干名
 監事    若干名  専門委員  若干名
第七条 団長ハ文部大臣ノ職ニ在ル者之ニ当ル
 団長ハ本団ヲ統轄ス
 団長事故アルトキハ団長ノ指定シタル副団長其ノ職務ヲ代
 理ス
第八条 顧問ハ団ノ功労者竝ニ青少年指導ニ関シ特別ノ識見
      ヲ有スル者ノ中ヲリ団長之ヲ委嘱ス
     顧問ハ団ノ最高機務ニ関シ団長ノ諮問ニ応ズ
第九条 副団長中一名ハ文部次官ノ職ニ在ル者他ノ二名ハ
      文部大臣ノ指定シタル者之ニ当ル
      副団長ハ団長ヲ輔佐ス
     団長ノ指定シタル副団長ハ団長ノ命ヲ承ケテ団ノ常務ヲ掌
     理ス
第十条 審議員、参与、監事及専門委員ハ関係官庁官吏竝ニ学
      識経験アル者ノ中ヨリ団長之ヲ委嘱ス
     審議員ハ団則ノ改正、予算決算其ノ他重要団務ニ関シ団長
     ノ諮問ニ応ズ
     団長ハ審議員中ヨリ常任審議員ヲ使命スルコトヲ得常任審
      議員ハ重要団務ニ関シ常時団長ノ諮問ニ応ズ
     参与ハ重要団務ニ参与ス
     監事ハ本団ノ会計ヲ監査ス
     専門委員ハ専門ノ事項ニ関シ調査竝ニ地方団ノ指導ニ当ル
第十一条 役員(顧問ヲ除ク)ノ任期ハニ年トス但シ重任ヲ妨
       ゲズ
       官吏ニシテ役員タル者ノ任期ハ其ノ在職期間トス
第十二条 本部ニ事務局ヲ置ク
       事務局長ハ常務ヲ掌理スル副団長ヲ以テ之ニ充ツ但シ専任
       者ヲ置クコトヲ妨ゲズ
        事務局ニ関スル規定ハ別ニ之ヲ定ム
第十三条 本部ノ経費ハ国庫補助金其ノ他ノ収入ヲ以テ之ニ
       充ツ
第十四条 本部ノ会計年度ハ毎年四月一日ニ始リ翌年三月三
       十一日ニ終ル
第十五条 地方団ニ関スル規程ハ本則ニ依ルノ外別ニ之ヲ定ム
第十六条 本則ノ施行ニ必要ナル規定ハ別ニ之ヲ定ム
第十七条 本則ノ条項ヲ改正セントスルトキハ文部大臣ノ承
       認ヲ受クルモノトス


 大日本青少年団地方団則

   第一章 総  則

第一条 大日本青少年団ノ地方団ハ道府県青少年団、郡市区
 青少年団、町村青少年団及単位団トス

   第二章 道府県青少年団

第二条 
道府県青少年団ハ管内地方団ノ指導統制ニ当ル
第三条 道府県青少年団ハ左ノ役員ヲ置ク
   団 長
   顧 問   若干名   副団長  若干名
   審議員   若干名   参 与  若干名
   監 事    若干名  専門委員  若干名
第四条 団長ハ地方長官ノ職ニ在ル者之ニ当ル
  団長ハ団ヲ統轄ス
  団長事故アルトキハ団長ノ指定シタル副団長其ノ職務ヲ代
  理ス
第五条 顧問ハ団ノ功労者竝ニ青少年指導ニ関シ特別ノ識見
  ヲ有スル者ノ中ヨリ団長之ヲ委嘱ス
  顧問ハ団ノ最高機務ニ関シ団長ノ諮問ニ応ズ
第六条 副団長中一名ハ道府県学務部長ノ職ニ在ル者之ニ当
  リ他ハ団長ノ申請ニ依リ大日本青少年団長之ヲ任命ス
  副団長ハ団長ヲ輔佐ス
  団長ノ指定シタル副団長ハ団長ノ命ヲ承ケテ団ノ常務ヲ掌
  理ス
第七条 審議員、参与、監事及専門委員ハ関係庁官公吏竝ニ
  学識経験アル者ノ中ヨリ団長之ヲ委嘱ス
  審議員ハ団則ノ改正、予算決算其ノ他重要団務ニ関シ団長
  ノ諮問ニ応ズ
  団長ハ審議員中ヨリ常任審議員ヲ指名スルコトヲ得常任審
  議員ハ重要団務ニ関シ常時団長ノ諮問ニ応應ズ
  参与ハ重要団務ニ参与ス
  監事ハ団会計ヲ監査ス
  専門委員ハ専門事項ニ関シ調査竝ニ管内地方団ノ指導ニ当ル
第八条 役員(顧問ヲ除ク)ノ任期ハ二年トス但シ重任ヲ妨ゲズ
  官公吏ニシテ役員タル者ノ任期ハ其ノ在職期間トス
第九条 道府県青少年団ニ務局ヲ置ク
  事務局長ハ常務ヲ掌理スル副団長ヲ以テ之ニ充ツ但シ専任
  者ヲ置クコトヲ妨ゲズ
  事務局ニ総務部、青年部、女子部、少年部等ヲ置ク

   第三章 六大都市少年団

第十条 東京市、京都市、大阪市、横浜市、神戸市及名古屋
  市ノ青少年団ニ付テハ市青少年団ノ規定ニ依ルノ外本章ノ
  規定ニ依ル
第十一条 副団長ハ四名以内トシ道府県青少年団長ノ申請ニ
  依リ大日本青少年団長之ヲ任命ス
第十二条 市青少年団ノ下ニ区青少年団ヲ置ク
  区青少年団ニ関シテハ市青少年団ニ関スル規定ヲ準用ス

   第四章 郡市青少年団

第十三条 郡青少年団長ハ道府県庁職員、学校職員其ノ他適
  当ナル者ノ中ヨリ道府県青少年団長之ヲ任命ス
  市青少年団長ハ市長ノ職ニ在ル者之ニ当ル
第十四条 副団長ハ三名以内トシ道府県青少年団長之ヲ任命ス
第十五条 北海道ニ在リテハ道青少年団ノ下ニ支庁管内青少
  年団ヲ置ク
  支庁管内青少年団ハ之ヲ郡青少年団ト見倣ス
  団長ハ支庁長ノ職ニ在ル者之ニ当ル
第十六条 第二条以下第九条ノ規定ハ郡市青少年団ニ之ヲ準
  用ス

   第五章 町村青少年団

第十七条 町村青少年団ハ管内単位団ノ聯絡調整ニ当ル
第十八条 団長ハ町村長ノ職ニ在ル者之ニ当ル
  町村青少年団ハ必要ニ応ジ道府県青少年団ニ準ジ役員ヲ置
  クコトヲ得
  第八条ノ規定ハ町村青少年団ニ之ヲ準用ス

   第六章 単位団

第十九条 単位団ハ青年団、女子青年団及少年団トス
第二十条 青年団及女子青年団ハ公立青年学校ノ通学区域ヲ
  標準トシテ之ヲ設ク但シ特別ノ事情アル場合ニ於テハ当分
  ノ間道府県青少年団ノ承認ヲ受ケテ特別ノ区域ニ依ルコ
  トヲ得
  少年団ハ小学校ヲ単位トシテ之ヲ設ク
第二十一条 青年団及女子青年団ノ団長ハ道府県青少年団長
  之ヲ任命ス
  団長ハ青年学校長ノ職ニ在ル者之ニ当ル但シ特別ノ事情ア
  ル場合ニ於テハ当分ノ間道府県青少年団長ハ青年学校長ニ
  アラザル者ヲ団長ニ任命スルコトヲ得
  少年団ノ団長ハ小学校長ノ職ニ在ル者ニ付道府県青少年団
  長之ヲ任命ス
第二十二条 団長ハ夫々二名以内トシ道府県青少年団長之
  ヲ任命ス
第二十三条 単位団ハ必要ニ応ジ道府県青少年団ニ準ジ役員
  ヲ置クコトヲ得
第二十四条 単位団ハ団務執行ノ為適当ナル部ヲ設クルコト
  ヲ得
第二十五条 単位団ハ概ネ町内部落ノ区域ニ依リ全国ヲ設ク
  ルコトヲ得
  分団長ハ団長之ヲ任命ス
第二十六条 分団(分団ナキトキハ単位団)ハ概ネ団員五名乃
  至十名ヲ単位トシテ之ヲ班ニ分ツコトヲ得
  班長ハ団長之ヲ任命ス
第二十七条 単位団ノ団員ハ左ノ区分ニ依ル
 青 年 団
 普通団員 青年学校生徒及十四歳乃至二十歳ノ男子青年
 幹部団員 幹部又ハ指導者トシテ加入スル二十一歳乃至
        二十五歳ノ男子青年
  現ニ青年団員タル者ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ルモノトス
 女子青年団
  青年学校生徒及十四歳乃至二十五歳ノ未婚ノ女子青年
 少 年 団
  尋常小学校第三学年以上ノ小学校児童
第二十八条 第八条ノ規定ハ単位団ニ之ヲ準用ス

   第七章 経 費

第二十九条 地方団ノ経費ハ補助金其ノ他ノ収入ヲ以テ之エ充ツ
 地方団ノ会計年度ハ毎年四月一日ニ始リ翌年三月三十一日
 ニ終ル

   第十事 補 則

第三十条 地方団ハ本則ニ依リ団則ヲ定メ道府県青少年団ニ
 在リテハ大日本青少年団長、其ノ他ノ地方団ニ在リテハ道
 府県青少年団長ニ報告スルモノトス
第三十一条 本則ノ条項ヲ改正セントスルトキハ文部大臣ノ
 承認ヲ受クルモノトス