第一九五号(昭一五・七・一〇)
新国民生活体制を確立せよ
本年度の物資動員計画 企 画 院
奢侈品の製造販売禁止 商工省物価局
−奢侈品等製造販売制限規則解説−
暴利取締令の改正 商工省物価局
−暴利行為等取締規則中改正省令の解説−
支那事変勃発以来の総合戦果 陸軍省情報部
ソ連のバルカン進出 外務省情報部
支那事変三周年を迎へて 米内内閣総理大臣講演
特集 新支那読本(二)
新国民政府のその後
支那事変三周年を迎へて
米内内閣総理大臣講演
(七月七日於日比谷公会堂)
大陸に興亜の軍を進めて茲に三年、本日三度聖戦下に支那事変勃発の記念すべき日を迎へたのであります。この機会に所懐の一端を申し述べて、諸君と共に事変の新段階に処する覚悟を新に致し度いと存ずるのであります。
事変勃発以来、我が陸海軍は、或ひは炎熱を冒し或ひは厳寒を衝いて、大陸の各地に転戦し、世界戦史に未だ曾て見ざる赫々たる戦果を収めたのであります。これ偏に大御稜威の下に前線にあつて奮戦力闘せられたる皇軍将兵と、銃後にあつて國防力の充実確保に邁進したる国民とが、真に一体となつて聖戦目的貫徹のために渾身の努力を致して参つた結果に外ならぬのでありまして、寔に感激に堪へない所であります。然しながらこの赫々たる戦果の蔭に、敵弾に殪れ、病瘴に仆れたる多数の将兵諸士の在ることを片時も忘れてはなりません。此等の尊い犠牲に対して衷心より感謝の真心を捧げると共に、護国の英霊と、その遺族の万々に謹んで哀悼の意を表する次第であります。
申す迄もなく今次聖戦の目的は、遠く我が肇國の大理想に淵源するのでありまして、善隣友好、共存共栄の大義に立脚して東亜に於ける永遠の平和を確立し、依つて以て世界の平和と人類の福祉とに寄与せんとするに在るのであります。而して東亜長久の平和は、先づ以て国を隣する日満支三国の堅き結合を枢軸とし、更に全東亜の諸国竝びに諸民族が、真に打つて一丸となり、一体共同の発展を遂げて行くことによつてのみ確立し得られるものと確信致すのであります。この事たる、極めて密接なる関係にあります東亜諸民族の本然の要望であり、この要望を達成するために最善の努力を致しますことは、東亜の安定勢力たる帝国に課せられたる当然の使命であります。東亜の新秩序も、かゝる地盤の上にこそ、築かれるものと信ずるのでありまして、支那事変の処理も亦この方向に嚮つて進みつゝありますことは申す迄もありません。
帝国は、更正支那を率ゐて立つた新中央政府と、過般来国交調整に関する交渉を開始して居るのでありまして、帝国と志を同じくする汪政府と相携へて、東亜新秩序の建設に邁進致しつゝありますことは、事変処理の道程に光明ある一段階を劃したものでありまして、洵に慶びに堪へません。然しながら一方重慶政権は今日尚執拗なる抗戦を続けて居るのであります。帝国は断乎たる決意を以て、既に第三国の援蒋行為を断つ方途を講じつゝあります。若しそれ重慶政権にしてその非を改めざるに於ては、之が徹底的潰滅を図るべきは申す迄もない処であります。
飜つて世界の情勢を見まするに、欧州戦争の急速なる進展は、世界の現状に劃期的なる転換を齎らさんとして居るのでありまして、その波紋は直ちに東亜の圏内にも深刻なる影響を及ぼしますことは想像するに難からざる処であります。この間に立つて、東亜の安定勢力たる帝国が、敢然として其の所信に邁進して行きます為には、各方面に於て更に格段の努力を必要と致しますことは勿論でありますが、就中物心両面に亙る総力戦体制を一層整備強化して、国際世局の変転に対処し得べき国防力の充実を図ることが最大の要務であると存ずるのであります。
事変の長期に亙るに従ひ日常生活の上に、尠からぬ不便が加はつて来て居るにも拘はらず、国民諸君は、常に前線将兵の労苦を偲んで克くこれに堪へ、熱誠以て国家に御奉公して参つたことは深くこれを多とする処であります。然しながら複雑微妙なる世界の新情勢に対処して、一段と国運の伸暢を図つて参りますためには、この際更に覚悟を新たにし、あらゆる困苦欠乏を克服し、進んで國力の充実を図るの心構へを要しますことは勿論であります。
政府と致しましても、内外諸般の情勢に対処し、各方面に於ける刷新改革を断行して、益々戦時体制を整備強化し、万難を排して時局を乗り切らんとする不動の決意を以て現にこれを実行致しつゝあるのであります。国民諸君も、政府の意図する所を理解し、自ら進んでその施策する所に協力せられんことを切望して止まない次第であります。
諸君、今や帝国は、振古未曾有の一大試練に際会して居るのであります。この試練を乗り越えてこそ、帝国は真に東亜の盟主としての資格を備へ得るのであります。我々は今後如何なる困難に直面するとも益々伝統的日本精神を振ひ起し、堅忍不抜の意気と、不退転の勇猛心とを以て東亜再建の大業完遂に邁往せねばなりません。
本日意義深い事変三周年に当り、諸君と共に更に覚悟を新たにし、一段と御奉公の道に励み度いと念願致して居る次第であります。