第一九五号(昭一五・七・一〇)
  新国民生活体制を確立せよ
  本年度の物資動員計画       企 画 院
  奢侈品の製造販売禁止       商工省物価局
   −奢侈品等製造販売制限規則解説−
  暴利取締令の改正         商工省物価局
    −暴利行為等取締規則中改正省令の解説−
  支那事変勃発以来の総合戦果    陸軍省情報部
  ソ連のバルカン進出        外務省情報部
  支那事変三周年を迎へて      米内内閣総理大臣講演
  特集 新支那読本(二)
  新国民政府のその後

 

 新国民生活体制を確立せよ


 七月七日、支那事変勃発二周年を期して、奢侈品等の製造販売制限規則が実施された。
 この措置の目的とするところは、消費規正の強化と所謂規格外品の禁止にあり、戦時経済上大切な資材や動力、労力等が、戦時になくても済むやうな物や奢侈贅沢品の製造販売に充てられるととを止めて、これを戦時国民生活上真に必要な物の製造販売に振り向けるのが、第一の狙ひである。
 この外、現在では非常な購買力が奢侈贅沢品等を買ふのに向けられてゐるから、これを抑へて
、余つた購買力を貯蓄や公債消化に、振り向けようといふことも狙つて居り、更にこの規則の効果として国民生活の刷新緊張を期待してゐる点に大きな意味があるのである。
 国民生活の刷新、戦時生活の確立の声は既に久しいが、都会生活の消費面等を見るときは、必ずしも充分の効果をあげてゐるとはいへない。今までの生活の自由の夢を追つて、統制への不平不満を洩らすものも絶無ではない。しかしながら戦へる世界のどの国に、生活の戦時態勢化が断行されてゐないところがあらうか。ドイツの勝利の蔭に、鉄の統制の下、真に国民が戦時意識に徹して、不自由な生活に甘んじて来た事実を見逃してはなるまい。我々は今まで余りにも、戦時下とも思へぬゆとりに馴れ過ぎて来たのだとはいへないだらうか。この意味では、今回の奢侈禁止の措置も寧ろ遅つたと思へる位である。
 今や時局は更に一段の展開を見ようとしてゐる。日本が新らしき世界情勢に処し、東亜の盟主として支那事変を処理し、東亜自給自足圏の確立を期するためには、国内態勢の強化がいよいよ切実に感ぜられるに至つたのである。政府はかかる事態に処して諸般の施政を整備しつつあるのであるが、今回の措置もまた戦時にふさはしい質実簡素な国民生活の実現を期さうとの理想に発してゐるのである。
 従つて今回の措置は第一次であつて、更に長期戦の深化、物動計画の強化に伴つて更に第二次、第三次の物品指定を行つて、不急不要品、奢侈品贅沢品として製造販売を禁止する物品の範囲を増して行き、又、一定の限界価格も漸次引下げて行くことにもならう。即ち、都会の奢侈面から漸次生活程度の切下げを断行するを目標とし、新らしい戦時生活の確立をめざしてゐるのである。
 今回の省令は、奢侈品等の製造、販売を禁止するだけであつて、既に所有してゐる物品の使用までも禁止はしてゐないが、それをよいことにして、これ見よがしに贅沢品を使用することは、戦時下の国民として固く慎まねばならぬことであり。又かゝる戦時にふさはしからぬ行為に対しては、真摯な国民感情が嫌悪を催すやうにまでなつてほしいとも思ふ

 我々はこの販売制限を銃後生活刷新運動の一転機として、日常生活を質実簡素にし、華美浮薄な生活態度を改め、新らしき国民生活体制の樹立に向つて出発しようではないか。
 新らしい時代は、新らしい美を発見し、その基礎の上に新らしい健全な生活体制を築きあげねばならない。