第一八七号(昭一五・五・一五)
派遣軍将兵に告ぐ 支那派遣軍総司令部
武力作戦の重要性 陸軍省情報部
その後における仏印ルートの爆撃 海軍省海軍軍事普及部
近東の現状 外務省情報部
特別寄稿 二千六百年史抄(一三) 内閣情報部参与 菊池 寛
その後における仏印ルートの爆撃 海軍省海軍軍事普及部
広西省猛爆
わが海軍航空部隊三原少佐の率ゐる増永、中村、鍋田
の各部隊は、四月四日広西省平馬渡船場附近軍需品集積
所、汽船、ジャンク群及び自動車群等に対し、巨弾の雨
を降らせ倉庫一棟を炎焼させるとともに、附近四個所か
ら燃料油の猛烈なる火焔を発生させ、渡船場に蝟集中の
約数十隻のジャンク及び汽船一隻に命中弾を浴せ一挙に
これを壊滅し、悠々基地に帰還したのである。
この仏印から平馬を経由して貴州、四川に通ずるこの
輸送路は、わが海軍航空部隊の数度の.越鉄道爆撃に、
仏印、昆明間の輸送意の如くならず、最近蒋政権が躍
起となり、仏印に集積中の軍需
資材を奥地に輸送させるための
主要輸血路と化したものである
が、今次のわが海軍航空部隊の
猛爆により壊滅に帰したのであ
る。
敵空軍基地爆撃
(イ)潮南省急襲
本年度初頭、南支方面において、わが海軍航空部隊の
ため致命的打撃を受け、久しく蟄伏(ちつぷく)してゐた敵空軍は、
近時やゝ蠢動の兆(てう)が見えてきたので、十二月、島田少
佐の率ゐる海軍機の精鋭は大編隊をもつて湖南省敵航空
基地江(しかう)を急襲、同地区より猛烈な敵の防禦銃砲
火を蒙りながらも、全機克(よ)く飛行場上空に突入、場内
滑走路及び附属軍事施設に全弾を集中爆撃し、これに甚
大な損害を与へ、飛行場内から火焔の空に冲するのを
認め、全機無事に帰着した。
(ロ)浙江省方面奇襲
これに引続いて中支においては、十五日夜半から十六
日午前にかけて、折から大陸初夏の月明(げつめい)を利用して大挙
中支敵軍基地爆撃に出動した。即ち、島田少佐、奥
山、池田、千速各大尉指揮の精鋭部隊は、浙江省麗水、
江西省玉山、上饒(広信)吉安など、各敵空軍前線基地
を奇襲して多大の戦果をあげた。池田、奥山両大尉指揮
の第一攻撃編隊群は、十六日午前一時半ごろ相前後して
麗水飛行場を急襲したが、城内に敵機の影も認めず、
悠々と滑走路を爆砕、別働隊はさらに長駆、上饒(広
信)を急襲、こゝでも敵機の影も認めず、駅構内の貨車
群に巨弾を浴せ、その全部を炎上させた。
第二次攻撃隊島田少佐指揮の一隊は、同日再度麗水、
玉山を奇襲、駅構内機関車庫、石炭倉庫を爆砕、第三次
攻撃部隊千速大尉指揮の一隊は、同九時半、吉安飛行場
を空襲、同飛行場滑走路、倉庫群を爆砕灸上させ、別の
一隊は同八時十分麗水を奇襲、同飛行場を完膚なきま
でに盲爆したのち、全機無事帰還した。
(ハ)四川省奥地の爆砕
わが海軍航空部隊の奥地攻撃隊は、島田少佐総指揮の
下に、二十二日午後、突如重慶西方百十キロ敵飛行基地
宜賓(敍州)に現はれ、市内の北方飛行場に集結中の敵大
空軍を徹底的に粉砕、今年初の奥地攻撃に大成功を収
め、彰水(しやうすゐ)、南川の二ヶ所の上空で敵と遭遇したが見事こ
れを撃退、全機無事帰還した。即ち、皎(かう)々たる十六夜の
月光に銀翼を輝かせた第一陣池田大尉の指揮する一隊
は、宜賓上空に巨翼を現はし、飛行場北方に集中大爆撃
を行、第二陣奥山大尉の一隊は、同市の飛行場南部
を、つゞいて第三陣中村大尉の一隊と三回に亙つて巨弾
・の雨を降らせ、敵が次期作戦に備へて各基地から集結
し、建直した大空軍を完膚なきまでに叩きつけ、多大
の戦果を挙げて、二十三日未明、島田少佐以下全機無事
に基地へ帰還した。
(ニ) 重慶周辺痛爆
わが海軍航空部隊の精鋭は、二十四日夜半、粟野原少
佐総指揮の下に、大編隊をもつて折からの月明下にそ
の鵬翼を伸ばし、重慶の心臓部に痛撃を試みた。
即ち、第一次攻撃部隊池田大尉の編隊は、二十五日午前
二時半四川省遂寧(重慶西北方九十マイル)を奇襲、城内
及び附近軍事施設に全弾を浴せ大火災を起させ、さらに
中村大尉指揮第二攻撃隊、奥山大尉の第三次攻撃隊
は重慶西南方十マイルの白市駅飛行場上空に達し、敵
の数機が待機の姿勢のまゝ格納庫前に横たはつてゐる
のを見つけ、一斉爆撃に移り、全弾悉く命中、これ
を延焼させて、附近の軍事施設にも大火災を起さしめ
た。
重慶周辺の防空上の敵重要空軍基地たる遂寧、白市駅
両飛行場の大爆撃を敢行し、全機無事帰還した。
続いて、三十日夜明前、島田少佐の率ゐる海軍航空部
隊は、亦も四川省を襲ひ、重慶周辺の飛行場三ヶ所を猛
爆した。先づ奥山大尉の率ゐる編隊群は、暗黒の中に横
たはる広陽飛行場に巨弾を浴せ、池田大尉の編隊は
黎明以前の白市駅飛行場を敵高角砲、機関銃の抵抗の中
に悠々猛爆、大火災を起さしめて、炎は天に冲した。
更に中村大尉の部隊は日出前の梁山飛行場に現れ、上
空で待期中の敵機を撃退して、城内の軍事施設を爆砕
し、各隊とも全機無事帰還した。
越線爆撃
わが三原少佐、増永、丸妻両大尉の指揮する海軍航空
部隊の大編隊群は、二十六日密雲を衝いて仏印国境をさ
る六十キロの白上空に現はれ、越線鉄橋目がけて巨
弾を浴せ、これに徹底的損害を与へ多大の戦果を収め、
全機無事に基地飛行場に帰還した。
結 び
今次仏印ルートの爆撃は、新支那政権の樹立と同時
に、全く一地方政権化した蒋政権が、最後の輸送路と頼
む仏印からの通路を完全に遮断したものであつて、四川
省奥地における重慶附近の敵空軍基地爆撃は、わが仏印
ルート爆撃部隊に対抗のため密かに再起を図つてゐる支
那空軍の出鼻をくじくものである。
さきに蒋介石が試みた冬季攻勢は画餅に帰し、今また
唯一の輸血路たる仏印ルートを遮断された重慶政権は、
わが海軍航空部隊の連日に亙る息をもつかざる爆撃に
より、いよ/\没落の一途をたどつてゐるのである。