第一七一号(昭一五・一・二四)
全国民の協力を求む 米内内閣総理大臣
宮中歌会始について 宮 内 省
鉄道貨物運賃の改正 鉄 道 省
大陸の衛生(下) 陸軍省医務局
所年初頭に於ける海軍航空郡隊の活躍 海軍省海軍軍事普及部
西南三都の近況 外準省情報部
内閣の更迭
新内閣一覧表
全国民の協力を求む 米内内閣総理大臣
今回図らずも大命を拝しまして寔に恐懼感激の至りに堪へません。私は全力を挙げて補弼の重責を竭す覚悟で居ります。しかしながら時局は極めて重大、我々は真に挙国一致、不抜の信念を以て東亜新秩序の建設に邁進せねばならぬと痛感するのであります。
さてこの難局に処する施政奉行(ほうかう)の道を考へて見ますると、三つの重大なる問題があると思ふのであります。それは何かといひますと、一つは支那事変の処理、一つは国際問題、一つは国内問題であります。この三つが何れもよく揃つて行くことが必要であります。
そこでその一つである支那事変の処理についてでありますが、これについては既に不動の方針が決定されて居ります。従つてこれを踏襲致しますことは勿論、近く成立しようとしてゐる支那新中央政府の発展を助けて行くことは今更申すまでもないことであります。
次に国際関係でありますが、これはあくまで自主的立場を堅持しつゝ国交の調整をはかりたいと考へてゐるのであります。即ち対英米関係でも、また対ソ関係でもこの基本方針を以て臨んで外交を処理し、調整すべきものは調整するといふことであります。
第三には国内問題であります。これは新内閣成立当日、私の談話でも明らかにして置きましたやうに、「戦時国民生活の確保に努め、進んで戦時態勢を強化」して行かねばならないのであります。それには、各般にわたる統制は今後も必要に応じてやつて行かねばならないのでありますが、併しその場合統制が適切にしかも合理的に行はれるやう慎重に注意せねばならぬことと考へます。とにかく統制は必要であります。要するに、かうした統制がうまく運用されるかどうかは、政府の施策の適切なることと共に、全国民の心構へにかゝることも大なるものありと思ふのであります。殊に此の際、国民に求めるものは心の和であります。今まで十の生活をしてゐても苦しくなれば七か六に引下げても心を引きしめて、この難局を乗切る気持があれば必ずやつて行けると思ひます。苦しいときはみんなが苦しい。全国民はよくこの時局に徹して真に心を合せて、「苦しいときにはみんなで苦しむ」といふ気持で行つてほしい、そしてこの時局を突破して行きたいと考へてゐるのであります。今後新内閣が執るべき諸方策については、第七十五帝国議会の再開も間近に迫つて居りますので、その機会に於て開陳することに致したいと思ひますが、組閣に際し「週報」を通じ一言所懐を述べて全国民の協力を願ふ次第であります。