第一六七号(昭一四・一二・二七)
昭和十四年の国際政局回顧と展望 外務省情報部
鉄道貨物輸送の実情 鉄 道 省
北樺太利権企業の現況 商工省燃料局
紀元二千六百年元旦の興亜奉公日を迎へる心構へ
大祓の意義 内務省神社局
事変第三年の海軍作戦 海軍省海軍軍事普及部
敵の〃冬期攻勢〃 陸軍省情報部
青少年義勇軍現地報告座談会
バルカンの情勢 外務省情報部
昭和十四年下半期総目録
紀元二千六百年元旦の興亜奉公日を迎へる心構へ 内閣情報部
◇・・師走の月は暮れ易く、もう年の瀬も迫
つてきた。今月の始めから全国一斉に開
始された経済戦強調運動も、大詰の日を
目前に控へて、白熱的な展開を見せてゐ
る。
明くれば昭和十五年の春だ。聖戦下第
四年目の正月は、恰も光輝ある紀元二
千六百年に相当してゐるばかりでなく新
年最初の興亜奉公日でもある。しかも興
亜奉公日が制定されて初めての元旦であ
る。かういふ訳で今度の元旦は、二重も
三重もの深い意義を持つてゐる。この元
旦を我々はどんな心構へで迎へたらよい
だらうか。このことに就いては、既に去
る九月二十八日次官会議で「紀元二千六
百年新年奉祝実施要綱Jと「紀元二千六百
年元旦の興亜奉公日実施上の注意」が決
定してゐる。各地方では、この次官会議
の決定に甚づいて地方々々特有の風俗・
習慣等を睨み合はせ、それ/"\その地方
の実情に適応した具体的実施計画を立て
て実践にに移すことになつてゐる。
この次官会議決定事項の内容は、既に
週報一五五号(十月四日号、四十五頁)で紹介
されてゐるが、こゝで再びその内容に解
説を加へて紹介しておきたいと思ふ。
◇・・元日の朝は興亜奉公日実施項目中の
早起励行を強調するまでもなく、どこの
家庭でも大抵早朝に起きられることと思
ふ。恰も光輝ある紀元二千六百年の元日
の朝であるから、悠久なる歴史の跡を偲
んで肇國の大精神を体認するため、屠蘇
を祝ふ前に先づ一家揃つて最寄の神社に
参拝したい。清々しい早旦の社頭に額づい
て皇国無窮の発展を祈念し、東亜新秩序
建設に邁進する新たなる覚悟を神明に誓
ふのである。松飾その他新年恒例の諸事
万端は努めて簡素にするといふ趣旨に則
つて、朝の御雑煮の膳もなるべく簡素に
済ますことも戦時下の心構へとして大切
であらう。
◇・・こゝで問題になるのはお屠蘇の問題
である。興亜奉公日は戦場の労苦を偲ぷ
意味で、禁酒禁煙するといふことが、国
民精神総動員中央聯盟の実行項目中に掲
げられてゐるのである。従つて厳密な意
味ではお屠蘇もいけないことになるだら
う。しかし屠蘇を祝ひ、お神酒を戴くこ
とは、わが国古来の慣行であつて、単な
る飲酒とは趣を異にするから、これまで
も禁止することは適当でない。といつて
も、屠蘇やお神酒に名を藉りて、飲み放
題に飲み廻り千鳥足でヨチ/\歩く様は
戦時下国民の姿としては、大いに不謹慎
極まるといふべきであらう。
◇・・又物資不足の折から虚礼に亙る年始
の贈答は一切廃止し、新年恒例の回礼
等もお互にこの際思ひ切つて廃めること
にしたい。その代り官公衙、学校、各種
団体、銀行、会社、工場等は勿論のこと、
市区町村に於ても、神社、学校、公会堂
等適当な場所で、この日二千六百年奉祝
の式典を行ふことになつてゐるから、こ
の式場で新年の挨拶は簡単に済まされる
わけである。またこの日午前九時は、国
民奉祝の時間として定められてゐて、そ
の時刻にはラヂオ、汽車、サイレン、鐘
等で合図があり、その時各家庭その他の
場所で各人が、宮城を遙拝し、御聖徳を
欽仰(きんぎやう)し奉ると共に、万歳を奉唱して、
一億国民、心を一にして聖寿の無窮を寿
ぎ奉り、盡忠報國の精神を振ひ起し、
皇運扶翼の赤誠を披瀝するわけである。
外国に在住する日本人も在外公館、日本
人会等を中心に各地の実情に応じて、適
当な時間に祝賀の式典を挙行して宮城を
遙拝し聖寿の万歳を奉唱することになつ
てゐる。
◇・・今度のお正月には先程述べた通り、
新年の回礼にも出ないし、他方(よそ)から回
礼に来る人もないわけなので、いつもの
お正月に比べて淋しいといへば淋しい
が、しかし家内全部揃つて団欒するの
も、こよない楽しさであらう。戦地の兵
隊さんに送る慰問袋を作るのもよいでせ
う。一家残らず筆を執つて第一線で寒い
お正月を迎へてゐる兵隊さん達に、銃後
のこの頼母しい新春の模様を慰問文に載
せて送るのも、興亜奉公日にふさはしい
銃後国民のつとめであらう。この簡素で
はあるが、しかし興亜第四年に処する全
国民の意気をこめた厳粛なお正月こそ
は、東亜新秩序建設の大段階に飛躍する
日木国民の大和魂の発露であるであら
う。そして、すべての国民がこれを実行
し、しかもその節約によつて残した金で、
皇紀二千六百年奉祝記念国債や、貯蓄債
券を買求めるなら、この千載一遇の興亜
奉公日は、彌栄え行く日本の表徴とし
て、最も輝かしく飾られることであらう。
− 内閣情報部 −
◇奉祝紀元二千六百年月暦(国民精
神総動員中央聯盟)
紀元二千六百年を迎へるに際し、奉
祝の至誠を国民精神の昂揚に顕現せ
しめる一助として編纂せるもの、在
来のカレンダーと異り国祭日と興亜
奉公日に重点を置き、新意匠を加へ
てこの日を明瞭にし、その意義をも
明記した。なほ、二千六百年や歴史
に重要意義を示す官幣大社、別格官
幣社の写真を掲げて神徳を記し更に
毎月にふさはしき時局的写真と標語
を配した。
(実売一部二十銭。送料三銭な払ひ込めば一般の
希望に応ずる。東京市麹町区霞ヶ関国民精神総
動員中央聯盟、振替口座東京一四四七五番)