第一六二号(昭一四・一一・二二)
  新嘗祭の御儀           宮 内 省
  戦時食糧充実運動         農 林 省
  時局と家庭教育          文 部 省
  煙草の値上について        大 蔵 省
  北海に奇襲敵前上陸        海軍省海軍軍事普及部
  台湾の精動            台湾総督府
  オランダ・ベルギーの危機     外務省情報部
  戦時統制物資講座(二)非鉄金属  商 工 省
  最近公布の法令          内閣官房総務課

 

 

台湾の精動            台湾総督府

 新南群島が我が日本の領土として台湾総督府の管轄に編入され、鷲鑾鼻は今やわが国の最南端ではなくなつた。この新たな情勢において、わが台湾は特殊の地理的条件に基づく重大使命を達成すべく、興亜の時流に棹さして内面的にも、対外的にも飛躍的発展を期しつゝある。皇道の大精神を基調とするこの使命を完遂するためには、その原動力となるべき国民精神総動員運動を更に一段と力強く推進しなければならない。こゝに特殊事情下の台湾に於ける国民精神総動員運動の動向に就いて述べたいと思ふ。

   精道の新展開

 事変第三年に当つて、精道も茲に新東亜建設の大目標に向つて強化することとなり、政府が決定した「国民精神総動員新展開の基本方針」に基き、時局の進展に即応する物心一如の実践運動たらしむべく、系統的に設置されてゐる国民精神総動員本部、支部、支会、分会を中軸として、部落振興団体、町内団体等の実践網を整備強化し、関係官公署、各種団体と緊密な連絡を保つて、その指導の綜合一元化に努めしめた。次いで閣議で決定した時局認識徹底方策と物資活用竝びに消費節約の基本方策に基き、本島の特殊事情を参酌して両方策を定め、その趣旨の普及と実践に努めたのである。
 時局認識の徹底では「興亜大業の意義と帝國の使命」、「国際情勢の変移と日本の決意」、「長期建設の遂行と国力の充実」の三項に「台湾の重大使命と島民の覚悟」の一項を加へた。
 また物資活用と消費節約に関する八項目は、今まで行はれてゐたが一層実践の徹底を期した。即ち、従来生活刷新は週間行事として、また物資の愛用は学校方面に於ける学用品の節約として、不急品・不要品の活用は婦人団体が中心となつて実施してゐた。また廃品回収は青年団、婦人団体等の協力によつて多大の成果を収めてゐたが、今後は資源一般回収方策の強化を企図してゐるのである。更に貯蓄の実行に就いては、本島の昭和十四年度国民貯蓄目標額一億円の内、二千六百万円を貯蓄組合(昭和十三年十二月末数 五千三百余)を通ずる新規貯蓄額として鋭意努力してゐるのである。また私蔵金売却運動は従来非常な好成績を収め本年三月で既に五千万円に達したが、今後一層これを強化して売却代金の貯蓄を指導督励しようとしてゐる。空閑地・荒蕪地の活用は各地の実情に応じ生産力拡充の線に副うて実施されてゐる。全島一斉に実行してゐるものとしては蓖麻(ひま)栽培運動がある。なほ台湾聯合青年団で植林報国運動を提唱し、営林所と協力して実施してゐるが、本島森林資源の保有と国土保全の見地から其の成果は大いに見るべきものがあると思ふ。
 更に九月一日から毎月一日に興亜奉公日を実施することとなり、実施項目としては精動委員会決定の七項目の外に国語尊重と資源愛護の二項目を加へ、官公署、学校、会社、工場、団体、町会、部落会を単位とする具体的実践事項の申合せ及び其の実行を督励すると共に、特に指導的地位に在るものの実践躬行を求め、官公吏の実践運動を強化することになつた。
 以上は全島的に実施してゐる本運動の概要を述べたに過ぎないが、地方ではそれ/"\其の実情に応じて最も效果的な方法で具体的実践に移し、その実效を挙ぐるに遺憾無きを期してゐるのである。

   台湾に於ける精動の特異性とその動向

 国民精神総動員実施以来、時局の進展に伴ひ、島民各階層の自覚活動となり、銃後の守りは愈々堅く、此の間に現はれた島民の赤誠は洵に目覚ましいものがあり、本島統治の根元をなす同化政策の上にも劃期的進展を齎らしつゝあるのである。これ等の島民赤誠の一端は、週報第七十三号(昭和十三年三月九日号)で「護りは固し銃後の台湾」として紹介したが、精動の展開と相俟つて、本島の皇民化運動は、茲に新たに力強く其の再認識を要請してゐるのである。然もこれは決して事変を機として始めて展開されたものではなく、改隷四十有余年に及ぶ本島統治の必然の趨勢である。
 本島に於ける体系的な国民教化運動は、昭和九年台湾社会教化協議会を開催して、本島教化の指導精神と、各般の施設及び奨励方策を樹立したのを契機とし、部落振興会の組織、部落集会所の建設竝びに国語講習所の設置、教化委員の配置、行政系統に基く社会教化統制団体の結成となり、教化網の拡充は全島的に促進された。更に昭和十一年、益々多事多端ならんとする内外の情勢に照応し、帝国南方の重鎮として国防上、経済上重大性を加へて来たのに鑑み、国民精神の振作と同化の徹底を期し民風作興協議会を開催して、一層時局に即応する国民教化方策の確立を図つたのである。かくて、部落振興団体を中心として、全島民の非常時局下に於ける皇國臣民としての信念を強化すると共に、資質の向上をめざして教化、産業、衛生、保安、交通等地方行政全般の全面的進展を計つたのである。
 時しも今次事変の勃発となり本島も亦戦時態勢に移つたので、従来の国民教化運動は茲に国民精神総動員運動として出発することになつた。運動の具体的実践事項に就いては勿論内地のそれと異なるものがあるが、究極する所は愈々重大性を加へつゝある台湾の地と人とを挙げて、真に皇國の一環としてその興隆発展の揺ぎなき礎となすにある。事実、全島民はよく時局の真相を認識して皇國民としての節操を堅持した。島民の時局認識は講演会・巡回映写会及び時局解説各種教化資料の配付等によつて更に徹底し、皇軍将士

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