第一五一号(昭一四・九・六)
中国国民党六全大会
民族優生方策 厚 生 省
朝鮮の国民精神総動員運動 朝鮮総督府
預金部資金の話 大蔵省預金部資金局
時局と発明 特 許 局
中国国民党六全大会 −江兆銘運動の新展開−
内閣の更迭
阿部内閣総理大臣談
阿部内閣総理大臣放送
最近公布の法令 内閣官房総務課
内閣の更迭
平沼内閣総辞職
本年一月五日、近衛内閣の後を継いで成立した平沼内閣は爾来八ヶ月、鋭意支那事変処理に、また欧州対策に邁進してきたのであるが、左記首相談に明らかにされた如き事由により総辞職を決行することになり、八月二十八日午前平沼内閣総理大臣は宮中に参内、 天皇陛下に拝謁仰付けられ、全閣僚の辞表を捧呈して闕下(けつか)に骸骨(がいこつ)を乞ひ奉つた。総辞職に際して平沼内閣総理大臣は左の談話を発表した。
平沼首相談 昭一四・八・二八
不肖曩に大命を拝し内閣薫督の重任に当りて以来、日夜聖旨を奉体して閣僚と協力し、一意専心、時艱を克服して東亜の新秩序を建設し、以て聖戦の目的達成に邁進して参つたのであります。而して外交は建国の皇謨に則り、道議を基礎として世界の平和と文化とに寄与するを第一義とし、此の方針の下に対欧政策を考慮し、屡次之を闕下に奏聞し来つたのであります。
然るに今回締結せられたる独蘇不可侵条約に依り、欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じたので、我が方は之に鑑み従来準備し来つた政策は之を打切り、更に別途の政策樹立を必要とするに至りました。
是は明かに不肖が屡次奏聞したる所を変更し、再び聖慮を煩はし奉ることゝなりましたので、輔弼の重責に顧み、洵に恐懼に堪へませぬ。臣子の分として此の上現職に留りますことは、聖恩に狎るゝの惧があります。猶ほ国内の体制を整へ、外交の基軸を改め、此の非常時局を突破せんとするに当つては局面を転換し、人心を一新するを以て刻下の急務と信ずるものであります。
以上の理由により本日闕下に伏し、謹みて骸骨を乞ひ奉つた次第であります。
阿部内閣生る
平沼内閣の総辞職に伴ふ後継内閣組織の大命は八月二十八日夜阿部信行予備陸軍大将に降下した。仍つて阿部大将は直ちに組閣に着手、各閣僚の銓衡を終へ同三十日午後一時半宮中に参内、 天皇陛下に拝謁仰付られ、謹んで大命を拝受する旨を奏して恭しく閣員名簿を捧呈、同日午後二時半阿部新首相の親任式、同三時四十分阿部首相侍立の上各大臣の親任式を行はせられた。
内閣内閣総理大臣兼外務大臣 | 陸軍大将正三位勲一等 | 阿部信行 | |
内務省兼厚生大臣 | 正三位勲一等 | 小原直 | |
大蔵大臣 | 企画院総裁正四位勲二等 | 青木一男 | |
陸軍大臣 | 陸軍大将従三位勲一等功五級 | 畑俊六 | |
海軍大臣 | 海軍中将正四位勲一等 | 吉田善吾 | |
司法大臣 | 検事従三位勲二等 | 宮城長五郎 | |
文部大臣 | 正三位勲二等 | 河原田稼吉 | |
農林大臣兼商工大臣 | 海軍造兵中将従三位勲二等 | 伍堂卓雄 | |
逓信大臣兼鉄道大臣 | 正三位勲一等 | 永井柳太郎 | |
拓務大臣 | 勲三等 | 金光庸夫 | |
内閣書記官長 | 正四位勲二等 | 遠藤柳作 | |
法制局長官 | 従四位勲三等 | 唐沢俊樹 |
阿部内閣総理大臣談 (14.8.30)
今回不肖揣らずも大命を拝し、寔に恐懼感激の至りに禁へませぬ。たゞ此の上は一意専心赤誠を捧げて補弼の重任を完う致したい所存であります。
今や世界の情勢は多事多変にして、時局は極めて重大であります。然かも東亜新秩序の確立は我が国不動の国是であり、之が為に必要なる国際環境の調節亦現下の喫緊事であります。複雑多変を極めつゝある国際現情に対しては、帝国独自の立場を堅持し、自主的所信の遂行に邁進せんとするものであります。此の間帝国の立場を理解し協力を吝まざる国に対しては、我が友邦として共に世界の進運に協力すべく、又然らざる国に対しては断乎たる決意を以て之に対処する覚悟であります。之と同時に内に於ては、国内機構を刷新して国防国家の新体制を強化し、軍備の充実、生産の拡大、輸出の振興、経済統制の合理的促進等を断行し、銃後対策の徹底を図り、以て時艱の克服に邁進するものであります。
現事変に対する帝国の方針は、既に確定不動のものがありまして、政府は挙国一致此の方針を実践して、光輝ある段階の実現に邁進する考へであります。
之を要するに政府は明朗闊達の精神を以て百般の政務を遂行し、国民思想の正導、国民能力の高度的発揮を期するものであります。冀くは国民諸君も又協心戮力以て帝国規定の国策の達成に精進せられん事を望んで止みません。
阿部内閣総理大臣放送 (昭和十四年八月三十日午後九時四十分)
諸君
不肖私は此のたび揣らずも組閣の大命を拝しました。
帝国が真に未曾有の重大事局に直面してゐるときに当り、浅才微力私ごときがお受けすることは、まことに恐懼措くところを知らない次第であります。此の上はたゞたゞ一身を挺してひたすら奉公の誠を尽したいと存じます。こゝにラヂオを通じて一言所信を述べ全国民諸君の御協力を求めたいと思ひます。
諸君
今や世界の現状は、益々複雑多岐、変転極まりなく、世界に於て極めて重要なる国際的地位を有する帝国は、まさに毅然たる一大決心を以て之に臨まねばならぬ秋に際会して居るのであります。
然しながら之に処すべき途はたゞ一つ、即ち稜威の下、国民朝野の強力なる一致団体により、闊達自在、一路所信に邁進することであると確く信じて疑はぬのであります。
事変処理に対する帝国の方針は予ねて確乎不抜のものがあり、之に伴ふ東亜新秩序の確立は、実に我が国不動の国策であり、之が為に必要なる国際環境の調節も亦現下の喫緊事であります。あらゆる方策はすべて此の大使命遂行の目標に集中せらるゝのでなければならぬと思ひます。
政府としましては、固よりあくまで独自の立場を堅く持し、苟くも帝国の使命を理解し協力を吝まざるものに対しては、これと協力し、其の交りを密にして、ともに世界平和の確立、人類文化の進歩に貢献せんことを期するのであります。然しながら苟くも帝国の使命達成を妨げ、帝国の進路を阻まんとするがごときものがありますならば、断乎たる決意を以て之に対処するの覚悟は之を持つて居るのであります。
一方国内に於きましては、国内機構を刷新して国防国家の新体制を強化し、軍備の充実、生産の拡充、経済統制の合理的促進等を断行し、銃後対策の徹底を図り以て時艱の克服に邁進したいと考へて居るのであります。
何分組閣早々のことであり、未だ具体的な諸問題に就いてお話すべき機会に至りませぬが、要するに、国外に対する方策はあくまで自主独往、而も諸外国をして十分に帝国の使命を認識諒解せしめ、之に依て国際関係の調和を図り、国内の諸施策はどこまでも明快且つ敏捷、よく世界の新情勢に対処し、かくして畏くも宸襟を安んじ奉り、又国民諸君の期待に副ひたいものと思ふのであります。
諸君に於かれましては帝国がいままさに如何なる立場に在るかを十分に諒解せられ、心を一にし、力を一にし、以て新東亜建設の鴻業に参劃せられ、ともに/\帝国無窮の進展に最も熾烈なる熱意を示されんことをこゝに衷心から切望して已まない次第であります。