第一四一号(昭一四・六・二八)
事変二周年特集 新東亜建設の歩み
事変二周年と新東亜建設
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支那民心を把握せよ
南支の現勢
陣中文芸(現地軍報道部提供)
皇軍突如汕頭に進撃 海軍省海軍軍事普及部
汕頭攻略の意義 陸軍省情報部
事変二周年と新東亜建設
七月七日 ― いまわれ/\は輝き感慨のうちに、記念すべき事変勃発二周年を迎へようとしてゐる。想へば膺懲の戦ひより長期建設の戦ひへ
― そと忠勇なる皇軍の戦果は世界戦史に燦然と輝き、いまや全支に亙つて新秩序建設の巨歩は力強く踏み出された。
帝国の領土に二倍する占領地域には、一億七千万の民を擁し、新らしき政権と皇軍の庇護とによつて、新たなる道義善政が東亜積年の圧制に代つて恵みの光を投げかけてゐる。そして眠つてゐた大陸の資源は開発の緒につき、財政も、経済も、産業も新体制の建設をめざし、防共親日の新東亜文化創造が新らしき世代の課題とさへなつてゐる。
新秩序は、かく歩み、かく建設されつゝあるのであるが、この建設はわれ/\の、旧き秩序との闘争なくして決して為しとげられないばかりか、現に建設のための武力戦は引続き行はれてゐるのである。汕頭攻略戦の新展開も建設への新たな礎石の一つであつて、今次聖戦に於いては建設と戦争は実に楯の両面なのである。建設への道は決して坦々たる道ではない、容易ならざる苦難の道であることをはつきり認識してかゝらねばならない。
新東亜の建設、われ/\はこの言葉に魅せられて現実を甘く見、早くもわれ/\のかゝげた目標が到来しつゝあるやうに考へ、現実の戦争を軽視することを戒めなければならないと同様、その半面、はか/"\しくない建設の現実のみに捉はれ、新秩序建設に疑念を挟まんとする傾向に対しては更に更に警戒を要するものと思ふ。
そも/\この世界的意義を有する興亜の大業がさう容易に実現出来ると思ひ上ることが既にして認識不足なのである。そこへ到達する道程には山もあれば川もある。現に蒋政権はゲリラ戦に躍起となつて居り、租界問題、法幣問題等でも見られるやうに、第三国の援蒋行為はいよ/\露骨化し、聖業を妨害しようとしてゐるのである。新東亜建設を標榜したからには、かゝる困難は覚悟の上である。われ/\には戦ひぬくだけの決意と用意はある筈である。
こゝで注意すべきは、東亜新秩序の建設は単に大陸の問題ではないことである。そと大陸の建設、それに伴ふ大戦争を遂行するためには、うち国内に於いて、諸般の改新を断行、国内体制を強化し、軍備の拡充、国家総力の拡充をはかり東亜の指導国家たる実力を養ふことが絶対に必要なのである。すなはち、東亜新秩序の建設の問題は、そと新支那育成の問題であり、うち国内新秩序への問題であり、両者は表裏一体の開係にあるのである。
われ/\はまづ、かゝる観点に立つて東亜の現実を直視し、これをはつきりと把握せねばならない。新東亜の建設が現実に於いて如何に困難であり、これがために如何に戦はねばならねかを知る必要がある。そしてそれが、如何に困難であり苦しくとも、東亜新秩序めざして前途に輝く建設の希望に一路邁進すべきである。
われ/\はかゝる理想、かゝる目標があればこそ、現実の苦難を克服することも出来、戦場に敢然として屍を埋め、銃後にあつて死に勝る苦闘に欣然身をおくのである。
今回、事変二周年に当り、内閣情報部は、興亜院、陸海軍その他関係方面の協力の下に、週報特輯号を編輯し、現地紹介を行ふことにしたのも、現実の把握によつて、今後に処する国民生活の指標を確立し得ると信ずるからである。