第一一九号(昭一四・一・二五)
  昭和十四年度予算の概要      大 蔵 省
  宗教団体法案について       文 部 省
  満・洪両国の防共協定参加     外務省情報部
  第七十四回帝国議会に於ける国務大臣
  施政演説
   平沼内閣総理大臣演説
   有田外務大臣演説
   石渡大蔵大臣演説
   板垣陸軍大臣演説
   米内海軍大臣演説
  官庁絹纂図書だより・文部省推薦図書紹介
  「週報の友」第五号発行

 宗教団体法案について
                      文   部   省

 このたび議会に提出された宗教団体法案は、昨年の十
一月十四日から十二月十日まで、約一箇月にわたつて開
かれた宗教制度調査会の慎重審議を経た宗教団体法案要
綱に基づいて立案されたもので、前後三十七箇条から成
る極めて簡潔な法案である。
 思へば宗教に関する根本法の制定は、実に久しい間
の問題で、明治三十二年このかた三度も議会に提案さ
れたが、その都度いろ/\の都合で、つひに世の光を
浴びることが出来ず、懸案のまゝ今日に至つたもので
ある。

  時局と宗教団体法

 宗教はわれ/\に小我を捨てゝ大我に生きることを教
へてくれる、また信仰はわれ/\に不退転の精神力を養
つてくれる。この没我の精神と不退転の精神力とは、
畢竟、われ/\に忙「死ぬ力」と「生きる力」を ― 死なね
ばならぬ時には従容完爾として死に就き、生きねばなら
ぬ時には石にかじりついでも生きて生きて生き抜くだけ
の力を授けてくれる。
 そしてこの「死ぬ力」と「生きる力」こそ、現下非常時
日本の戦線銃後において最も必要とするものではなか
らうか。殊に事変がすでに長期建設の新段階に入つた
今日、前途はるかに幾多克服すべき難関を想ふとき、
どこまでも生き残かうとする精神力の涵養は一層大切
である。すなはちこの意味において、宗教団体の教化活
動が今後ます/\必要となるのだが、さて、その宗教団
体の教化活動をいやが上にも活溌ならしめるためには、
何といつても先づ宗教法規の整備確立といふことが最も
緊要である。なるはど、宗教の教義そのもの、信仰それ自
体は、出せ周的なもの、超法律的なものかも知れないが、

 これむ沈く宗教教師は→仰の開成であり、女たその属す
 る試敢糊健は団毅の法的下に存鹿する一節の周健たるこ
 とに恕到すれば、宗教法規の如何が間接忙教化のせÅ損の
 上に反映し投影することは、究し理の常然といはねばな
 らぬ.
 ところで、宗教に関する現行法令はといへば、明治初年
                  ふ ん、つ
 このかた呟時領布された布肯・布達・省令・訓令など三富
 石像の斯け的規定から成り、しかもその関連綺を快くも
 のが鮒る多く、普に紛然雑然たる有様である.従つて行
 政上の不便はいはずもがな、これでは宗教園健の敏活な
 椚刈を肌平することネ血ことにおぴたゞしい.故に、まづ
 第一に、この現行規定を輿僻秋一することが肝婆であ
 」る●
  しかし、・今日としては、単に教‥備統一といふいはゞ形
 式上の故事だけでは、まだく不充分なのである.さら
 忙油払門的忙、国家と歩みを北ハ忙する采故に封しては、保
 範・地裁・救済の途む新たに閃くと共に、一方、公安を妨
                               ヽ ヽ
 げ公拡を寄するやうな行偶に封し、ては、より購卦忙取締
rるg派M附閑k壷囚のもと纂さ


 れたものである.

      −1■−11・・・− − − − 一lll▲− −111⊥
 …法案の主な内容仙
                   ●ll 一,ll▲一一l1 − ●.■l■l1.1−■●■一.11


           ヽ ヽ ヽ ヽ  ヽ ヽ ヽ ヽ
 −本法は宗教囲鰻と宗教結址とに適川される.宗教
              一ん′か
 囲健とは、宗教の教義の宣布及び俵式の執行む目的とし
一定の罫件のもとに主務大臣又は地方鹿骨の認可を受け
 て設立された国債を謂ふ.そしてこの宗教囲健以外の、
 宗教の教義の宣布及び俵式の執行を壊す結批が即ち実数
 締杜なのである.従来「和似宗教園健」と稀して来たもの
 がこれに該常する.
              ヽ ヽ  ヽ ヽ  ヽ ヽ  ヽ ヽ  ヽ ヽ
  ニ 宗教朗健は教沃・采淡・教団・寺院・敢合の五種
 顆に分れる.このうち数次・宗沃・軟媚は寺院や軟骨尊を
       は▲7くわつ
 要素とすを包括囲鰭であるが、同じ包括周鰭を教況・宗
 派・救国と、なぜ異なつた名稀を川ひてゐるかといへば、
 それは全くその園鰭の率ずる宗教の如何によるもので、
 即ち、紳造む率ずるものを教溌、俳教を率ずるものを宗
 碑、基督致その他のハ紳造及び俳敢を除いた)宗教を率ず
 るものを教団と謂ふのである.
  ところで軟派・末流に閑しては、根本法規として、と
            だ‖じ†・’′ヽわん
 もかくも明治十七年太政官布達第十九耽が現に存して
1
 ゐるのに、苑督軟その他の宗教を奉ずる包.指圃鰻に至つ
                 L−●ヮぐわい
 ては、今日まで▲宗教法規の均外に曳胤かれてゐるやうな
                            ひ・′−
有様である.で、本案ではこれを教囲として均しく根本
故の巾に収めることにした.
 かやうに、一本案では、法上包括囲健として認める鮎忙
関する限り、紳・俳・基その他の宗教む同等に取扱つてゐ
るのではあるが、しかも各宗教の歴史上杜曾上の僻異性
            、▲▼●′−1】・
を考漉して、添案努珂第一忙「紳道教流、件数末流及基
督教共ノ他ノ慕教ノ敢闘」と、それ′r・・包括囲鰭の呼稀
を堪別し、さらにその頭に各宗教の名稀を怒した鮎、殊に
基督教忙ついては、従来「紳彿造以外の宗教」といふ漠然
たる官業を使つてゐたのむ、本案では明白に「基督敢」の
文字を用ひ、しかも「教媚」の名将を基督軟を率ずる包括
園健の礪占物としない鮎など、平等の中にも差別を加味
       び ●1,
し、立添上微妙なる考鹿が川珊はれてゐる.
 1ニ宗教園膿の設立には、一定の要件のもとに主務大
臣ハ軟汲・末流・故国)又は地方鹿骨ハ専院・軟骨)の認可を受
けることが必要である.どんなものでも、といふ繹には行
           ‖打▲
かぬ.相首の歳月を閲し、物心両面の基礎も確立して、
団家杜合に買叔を残すものでなければ、認可は輿へられ
 ないと思ふ.徒つて一方、認可を得て・宗教一国】慣となつた
 ものに封しては、国家は一定の保拡特此ハを輿へて、その
           ‡小
 教化活動をますく旺ん忙しなければならぬ.
  そこで本案では、ハ一)規鹿寺院等にのみ限られてゐる
 所得税の免除を廉く宗教囲健全般に及ぽし、(二)寺院の
 境内地と教曾の構内地とには原則として地租を免除し、
 ハ三)今日寺院・軟骨等の用に供する柁物やその境内地・構
 内地にのみ限られてゐる地方税の免除を宗教囲健の所得
 にまで横張し、ハ四)登録税の免除についても一段と範陶
  ひ与
 を接げて寺院の境内地や軟骨の構内地、寺院又は教曾
 の別に供する柁物の穿記には登録税む課さないこととし
 ハ五)采教団健忙おいて公衆鵡禅の用に供する建物やその
                         tしわ‡、
 敷地、寺院や敢曾の安物忙ついては原則として差押む
 禁止してゐる.
  凸 保護といへば、宗教囲鰻の法人に閑する特別規定
 を新たに設けたことも、また宗教囲健に封する新らしい
 保護の一つといへる.
 宗教園健のうち、寺院は法人でありながら、民法施行
 洪忙よつて、民洪中絶人に帥する規定が通則されてゐな
 いのが現状である.また教沢・采淡・軟周については、現


珊トトト‥…=
亜、添規上添人たり得る途が閃かれてゐない.
 そこで、本案では「寺院ハ之ヲ法人ナス」「軟派、宗▲派及
数詞放言数合ハ之ヲ法人卜馬スコトヲ得」といふ規定を初
めとして、この一種猫特の宗教故人に閲する多くの規定
む新たに設けた.ト即ちこれによつて、宗教圃鰭の汁上の
人格とその行くべき道が確立され、やがて財抒肘政の明
         lいぴん
朗化と教化糠能の銃教化とが期待される碍である.
 五 宗教津人に開聯して注意すべき鮎は、法人たる教
波・宗溌・教団は破産によつて解散するといふことであ
る.萱し、現行法上破産をもつて法人解散の一事山とす
ろことは尚より常然で、宗教囲鰻にのみその除外例を認
める理由は少しもない.しかし、教演・采派・軟圏のど
とき信仰囲髄が、真珠不能や倍抒超過といふ財的物的朕
因から直ちに解散するといふことは、常誇宗教潮健の目
           l一々し∫
的やその歴史・侍耗・由緒・賓状等に徹して、何だか割り切
れないところがある.
 そこで蛮では、法人たる軟派・采液・軟囲はひとまづ
破産によつて解散するといふ原則を認めた上で、その曹
律救済の一緒和算として一連の特別規定を設けること忙
した.即ち、ハ一)破産忙よつて解散した数次・宗流・救国
は、法人に非ぎる歓呼宗派・救国として設立を認可され
たものと帝徹され、ハ二)なほそれでも起死因生の見込の
沈たないものは主移大臣はその非法人としての設立の認
可を取滑すことが出来る、(三)そしてその設立認可の取
滑忙よつて初めて歓呼采準軟囲はづひに解散するとい
ふことになつてゐる.
 これなども、茸に軟派・宗演・教鋼なればこその特殊規
定であつて、従来め法理論に先脚しながらもなほ千枚高
く天の一方を指し、理想と硯賓、世間的なものとH世間的
なものとの二つが、いみじくも交錯し融合するものとい
ふべく、正に宗教囲礁法案中の一特質たるを失はない.
 大 さらに、本案には「絶代ハ寺院叉ハ軟曾ノ経督;
閑シ住職叉ハ軟骨主管者ヲ扶ク」といふ、やL風攣りな
            て・♪
一條がある.今さら喋々を要しないことだが、教化希教
の中心済場は寺院と軟骨であり、またその軟化布教の中
心済場たる所以を充分曹挿するためには、寺院・軟曾の経
費が慨滑に行はれることが必要である.もとく専院と
                           〃〜ん ●  ′
紙代、敢合と紙代との開係は誠にこまやかで、大梗郷・外
一r
穫者をもつてみづから任じ、寺続・教曾の経営に陶し大い.
             允▲丁■
に住職・軟骨主管者を軟けて氷たものである.ところが
ヽノ
▲「
l

′lヽ
時世の推移に伴ひ」漸くさうした‡へ風が薄らいで爽たか
のやうに息はれる.この規定の必要な朗以である.
               の・’し●■
 また、寺せ】健となり、能新一如となつて、奇綻・軟骨の
経営に参輿するといふことは、ひとり宗教囲健のためば
                     ムVt_・’
かりではなく、やがてこれが一郷→邑の和束協同の確石
となり萌穿ともな矛といふところ忙、この規定のもつも
           ひt
う−つの存魂理由が潜んでゐるのである.
 七 以上は、大憤において、本案中宗教圏健に封する
保葎特典に関する規定の大略を列挙したにすぎないのだ
が、これらの保確特典の有無といふことが、賓に宗教国
領と宗教結祀との間に存する一つの大きな相速鮎なので
ある.しかし、これらの保護特典がたとひなくとも、国
家の認打・虹受けた演歌嘲億だ、上いふ感懐を、みづから
も抱き、敢合一般にも抱かしめるといふことそれだけで
も、すでに−種の保護特典ではなからうか.
 さて、宗教結社の方は、代表者において規則を定め粗放
後十四日以内に地方長官に届出なければならないことに
なつてゐる.宗教国債以外で、いやしくも事賓上京軟の
教義の宣布及び儀式の執行を焦す結社ならば、たとひみ
づから宗教結社でないと主張しても、届出はやは打必す
しなければならぬ.もし十四日以一円忙鳩山Mをしない一場合
                   ヽ ヽ
又は柄杓むしてもうそとついた場合忙は、一罰金忙▲廃せら
れる.
 頼似寮歌・新興宗教忙封しては、これまで一般治安替
察上の取締にのみ委して来たのだが、思想界の茸情忙錠
み、そのすべてを宗教行政の硯野の中へも入れることに
なつたのである.届出制度その他本浜中采教給批に粥す
るくさJぐ・−の規定によつて、浄水忍の華を開き意の‡む
結ぶおそれあるものは、若牙のうちにこれを紗み町り、
                         一†んし●一,
・その蓉良なるもの忙封しては、健全なる教達への渦床と
もならうといふのである.
 本案においては、史小数結址から宗教囲池に池ずる途が
                つ●か
開かれてゐるから、温床において増はれた豪結敢は、
終発宗教団健にまで進むことが出来、しかも本法∬ょる
       ▲フ ーワ
保護助長の雨蕗に浴して、やがて参天の大樹ともなり得
る日が約束されてゐる澤である.
 「宗教囲健洪」といふ金看枚を掲げながら、しかも店頭
には「宗教囲他」の外に「宗教結批」までも並べてゐるで
はないか、と官ふ者があるかも知れないが、しかし、争
述べたやうに、宗教結社から宗教常盤への漁路が開かれ
ヽノ.
■ヽ′
l

′ヽ
てゐるといふことを明瞭に示すことになるから、宗教界
全般に清新の束を注入する給水ともなり、また宗教囲虚
                            ひ し
と宗教結眈とを同一舞真に低くことによつて、彼此便劣
の封照が如賓に現はれるといふ放浪すら生ずる.
 入 勿論、宗教園健や宗教結社に封する監督規定も種
印設けてあるが、こ1ではたゞ悪法第二十八億と仙関係あ
る方面にだけ憐れることにする.
 周知の如く、憲法第二十八條忙は「日本臣民ハ安寧秩序
ヲ妨ケス及臣民クルノ轟扮二背カサル眼二於テ信教ノ白
山ヲ有ス」とあつて、安寧秩序を妨げ又は臣民たるの義
    ‡.んり
彷に背く宗教行璃は、法律・命令いづれの形式によつて
でもよい、これを制限することが出来ることになつてゐ
る.しかし、折角憲法の條章がありながら、今日のと
ころ、か1る宗教行璃を制映する法律・命令が宗教法規
の中に見椚されないのは、何といつても法の鉄路であ
 」る●
 そこで本案では、教義の宣布、儀式の励行又は宗教上
の行事が安寧秩序を妨げ又は臣民たるの魂紛に背←とき
は、主持大位はこれむ制限することも禁止することも出
 水る.場合によつては常務宗教囲健の設立の認可を取泡∵

 すことさへ和木るといふことになつてゐる.
 九 次に監督官鴎の不常連法の虚分に封して訴囁訴訟
                  ひ′’
 を許し、新たに救済の途を拓いたといふことも、また本
   くわつlく
 案の別目すべき一両だといふことが伯氷よう.
  (一)宗教囲健の設立の認可が取消された場合、ハ二)
 安寧秩序を妨げ又は臣民たるの轟汐に背くものとして教
 養の宜布、儀式の執行又は宗教上の行事が制限・林“止など
 された場合、(三)公益を宰すべき行一環をしたものとして
 その停止・禁止などの虚分を受けた場合、その廃分に不
 服ある者は訴願を壊すことが椚来る.
                                                    ■手
 宗教囲健の設立認可の取渦虚分が速法なため権利を毀
 lてん
 均されたと思ふ嘗は、行政裁判所に椚許することが出来
 】る.
 十 さて、宗教囲健それ自健の法的組扱が笥備し財的



 でもなく教義の宣布及び儀式の執行に従事する者であ
                        ヽ ヽ
 る.従つてこの者ハ本案では教師と呼んでゐる)の素質如
 何といふことが重大間領である.
  しかし、本案では、教帥の資格に鮎川する規定は設けな
「いで、奈教函確の規則において銘々自由に富させる
 こと忙した.尤も、各自の自由にまかせるといつても、
 教仙叩の資格は低くてもい1といふ意思では断じてない.
 ヾ
 賓格の向上は多々益々】帝■笠してやまないところである.
 思ふに、教液・宗演・軟囲の如きはその教義・信條“腫史・
滑革・侍耗などを異にし、八衆九宗緒液藷流、その教師
 の資格忙納する方針もまた種々様々たるむ免れない.徒
 つて、これむしも本法忙おいて一律一様に規定するとい
ふことは、歴史・滑革等を異にする各宗各状の活動を却
              つの 九
つて妨げることとなり、角を矯めて牛を捜すやうな結果
を招くおそれがないともいへぬ.本案において教師の資
格に帥する規党を設けない所以も、全くこれに外ならな
 いのである.
                ▲▼ガ叩
 尤も、各宗各淡の月治に委ねた事項は、教師の資格の
みに止まらない.他にも多くその例を奉げることが川氷
るが、いづれもその意闘するところは、教化所動促進の
ための自治の食重であり、宗教囲健の黎蓬を息へばこそ
のい割丁主義の▲打破である.