第一〇〇号(昭一三・九・一四)
試練の嵐に耐へよ(巻頭言)
ソ連民衆の消費生活 企 画 院
戦場の実相と戦場心理 陸軍省新聞班
遂に蘆山の敵を破る 陸軍省新聞班
武漢をめざす我が海軍 海軍省海軍軍事普及部
チェッコ問題の発展 外務省情報部
海軍志願兵とは 海軍省海軍軍事普及部
「週報の友」第一号主要目次
週報第百号を迎へて
官庁刊行物だより
試練の嵐に耐へよ
時局は愈々長期建設の段階に入つた。われわれ国民は挙国一致堅忍不抜の
覚悟を益々固めて、到来するであらうところの幾多の艱苦を耐へ忍びこれを
克服しなければならない。来るべき東洋平和の黎明を見るまでは如何なる国
難をも断じて打開しなければならない。
明治維新後の僅か七十年間において、われわれ国民は日清、日露の二大戦
役に遭遇し、これにうち勝ち、今やそれにもまさる支那事変に当面してゐる
のである。しかも、一方わが国土は地震、風、水害等の自然的災禍多く、早
い話が本年の如き全国各地に甚大なる風水害が殆んど連続といつてよい程数
多く襲来したのであつた。これ等国を賭する戦争に対してもまた自然的大災
害に対しても、われわれ国民はその都度全力を挙げてこれを完全に克服して
来たのである。いはば、戦争も災害もわれわれ日本国民に課された大国民と
しての試練に外ならないのである。逆説的に言ふなら、さうした戦争や災害
によつて、われわれ国民は世界に冠たる優秀民族たり得たのである。
長期建設に備ふるための真の覚悟と実践力とを要するのは実にこれからで
ある。漢口が落ちても蒋政権はなほ抗日を続けることも一応想像出来ること
だし、従つてこれに依然顕正の鉾を進めなければならぬことも明らかであ
る。また、我が忠勇なる将兵の血によつて確保した膨大な占領区域の治安を
維持するためには長期駐兵も必至とならう。更に、今次征戦の大目的たる日
満支一体による東亜永遠の平和確立を期するための親日新政権を育成発展させ
るためには長期の年月と国力を集中しなければならない。
想へば、国難打開のための国民試練の嵐は更に一段と激しくなるであらう
ことが切実に感じられるのである。と同時に、累積される難関の一つ一つを
勇敢に突破して行く挙国一体の総力の強さも脈々と実感されるのである。
漢口陥落後、眼に見えて没落して行く蒋政権の姿に狼狽して、帝国の国力衰
退を故意に流布する反日第三国もあるであらう。しかしながら、われわれ国
民は戦時下に訓練を経た不動の姿勢をもつてこれに当れば、かゝる虚構のデ
マは忽ちにして雲散霧消するに相違ない。
もはや事変を論議するときではなく、国民の一人として分担した責務を専
心に実行するのみである。それは野にあると朝にあると、或ひは位置の上
下、職責の何たるかによつて毫も差異あるものではない。事変に処して万人
が同じ決意と実践力を有せば挙国一体の実は誠に易々たりと言ふべきで、た
だ心すべきは瞬時と雖も油断してはならないことである。国家の緊張気分を
恒久化することに留意することはこの際の肝要事であらうと思ふのである。