第九二号(昭一三・七・二〇)
  経済戦特集
  強化せよ経済戦        企 画 院
  経済戦の遂行は生活を通して
  代用品の話          商 工 省
  国民体力管理制度        厚生省体力局
  南部山西の掃蕩戦        陸軍省新聞班
  苦心の江上制圧        海軍省海軍軍事普及部
  パレスチナの擾乱        外務省情報部
  最近公布の法令         内閣官房総務課
  戦時経済の三大目標
  非常時国民実践事項
  亜鉛も重要な軍需資瀬
  昭和十二年の人口動態
  官庁刊行物だより

強化せよ経済戦  企 画 院

戦争遂行のために必要なことは、物資供給を確保することである。その物資需給問題のわが国
の現状は果してどうか。そして政府はこれに対してどういふ対策を強行しようとしてゐるか。
輸出の増進、物資の節約、貯蓄の励行、物価の抑制、生産の増加、かうした重要対策についてわ
れわれはどういふ心掛けを以て臨むべきか。経済戦の強化−それは政府だけの問題ではない。
国民全部の焦眉の課題であり、国民の責務である。

    一、経済戦は何故強化されねばならないか

 現代の戦争は全国力を挙げての戦ひである。従つて国防の要諦は単に兵力の優秀や兵器の精鋭
といふ点だけで足りるのではなく、広く国力全般を、戦争目的のために最高度に発揮できるやう
な態勢にしておくことにあるのはいふまでもない。支那事変は南京が陥落しても一段落を告げないで
あらうとは、当時からすでに予想されてゐたところであり、又徐州陥落で戦局は一大進展を見た
が、しかしその前途はなほ遼遠であることも、こゝで改めて述べるまでもないことであらう。第
三国の支援を恃み、あくまで長期抗戦の決意を抛棄しようとしない蒋政権を徹底的に壊滅させる
ためには、勢ひ兵力の増強、戦局の拡大は避けられない情勢にある。
 ところが世上には、「蒋政権の財政的破綻」、「蒋政権没落」、「反蒋勢力の擡頭」といふやうな誇
張した報道記事に眩惑されたり、或ひは又、「何しろ相手は支那だ」とみくびる傾向がいまだに
相当あるが、これは誤れるも甚だしいといふべく、遺憾に堪へないことである。現在では陸軍の
動員兵力も日露戦争当時以上に厖大な数に上り、海軍の方も事変以来新たに艦隊を増設してゐる
状況で、いまやわが有史以来の大軍は陸海空に奮戦を重ねつゝあるのである。そしてその戦線
は、支那だけで二千数百粁に及び、欧州大戦当時の仏独国境の戦線の七百九十粁の三倍に達し、
これにわが防勢正面ともいふべき、ソ満国境を加へるときは、わが第一線は約六千粁に達してを
り、艦隊と艦隊との海戦が行はれてゐない点を除いては、全く国の全力作戦に近いものといつて
も過言でない。
 かういふ現下の情勢をもつて、武力だけの戦ひであり、武力以外の国力の問題を閑却するのは、
余りにも事態を認識しないものである。「真に国運を賭しての戦ひ」寧ろこれがいま帝国が直面し
てゐる真の姿ではなからうか。従つて戦地における軍隊の整備だけを考へ、国内において、所謂
綜合国力戦蛮行に必要な経済勒、息想戦等の備へを貴が一にも怠れば、忠勇無比の皇軍がいかに
 速戦連勝しても、帝固所期の目的は烏局建成するととが出水孝く在るのである・

 特に、費濾の比枚的貧窮なわが固に赴いて、固力戦を轟行アるために第一ほ問題となるのは、
rとうして戦率蕗行に必要な物資の供給を確保するか」といふことである。革ひわが固は食壌閲
係では、殆んと自給自足の域に達し、との粘は戦争蛮行上最大の強みであるが、モの他の物資
 は多かれ少かれ海外からの供給に仰がねばなら瓜ものが相常ある。これらの不足賓源について
 は出水るだけ固内生産の増加をはかるやうにするのは勿論であるが、それだけでは到底必要な
       みた
 だけの需要を充すことは出水ないし、叉輸入ずるといつても諸般の事情から参会り多くを期待
 することが出水ない状態にある。モこで勢ひ岡内消費を強度に節約ゼねばなら瓜ことほなつて
 凍る0
 支那姦朝教以水、政府は非常時財政経済の諸方策を逐次賓行し、同氏挿紳組動員下に岡見の
 協カを求めて本たが、充分の効果を収めてゐるとはいひ得ない現状である。即ち、政府は本年初め
                 トh
 に物資需給に粥する計養を樹て、これによつて生産、滑費、配給、輸入等に関する各般の措置を
 志して水たが、兵力増強に伴ふ軍需品の需要はどしく増大してゐるのに反して、所要物資の
 開内生産は希望するだけには逝きデ、配給、滑費の統制も、新事態に封廃するに決して充分では
 ない●モればかりでな(本年初め以本の輸出不振によつで、物資の輸入に相官の制限を受けざ
 るを得ない賓備にも参り「このまゝに放置すれば、戦争港行上は勿論、固民経済運沓上に重大夜
 警水す廃れさへもある。







  そこで、かうした障審を排除し、事埠終局の目的を達するためには、萬難を排し七輪出の振
 興、生産の増加、配給消費の統制等の財政経済に関する諸方策の徹底張碓をはかる必要はいよ
  きんせつ                 ゆるが
 いよ緊切で参り、事率の目的貫徹のため一日もこれを忽ゼにずることは出水ない。政府が今度、
 長期持久の経済贈制を確立し、軍需品の調達、輸出原料の充足を第一義として物賓需給計董を改
 訂し、これが蕗行上緊要の諸政策の徹底、強行を期した所以も賓にこゝに参り、この際、国見一
般は耶靴郎蹴、極度の滑費節約をなし、幾多の不利不便を慈び、進んで政府の政策に協力し銃
 後経済戦線に自己の全部を捧げていたゾきたいのである。それは真に国民の責務である。
    ニ、卦が囲の経済財政の現状
 ひるがへ
 礪つてわが固現下の経済情勢はとうか。昨年は事墳朝費に伴ふ軍需増加が加はり、不足資源の
                          はくだい
 輸入は昭和十一年に此し、賓に十億の多きに達し、莫大な輸入超過となり、そのために金現迭を
.行ふの已むなきに至つた。今年も自鹿の成行に放任してあいたのではこの傾向はさらに増大し、
 到底所要物資を確保し、戦争遊行に邁械なからしめることを得ないので、政府は、これが封発と
 して、本年初めの物資需給計董にあいて、重要物資の固内生産、代用又は節約、配給の統制等を
計葺した。帥ち、特定の資源については固内にあける特別増産を計壬する外、棉花羊毛などは漁
想需要竺ハ割程度、銭材中盤集用の針のは三割、特殊のものは五働、牛皮革類は六割、その他の

 ものについても理想需要のこ割、三割、ある種の不急用漁のものに対しては十割といふ程度の代
 用、節約を行へば、所要物資を充足出家得るといふ計董の下に、それく配給、滑費の統制を進
 めて水たのである0ところが、その後・の情勢は、輸出の減退その他の理由によつて年頭に添定し
 た輸入量を確保することは到底出水ないと認められるに至つたので、これが封発として、固内に
 》ける増産、代用品の使用奨励、駒内現有品の同収等に金力を参げる一方、一般の固内需要の滑
 費節約を徹底的に強催する必要に泊られるに至つた。
 本年頭初の物資需給計婁は、南京昭落昔時の状況を基礎として算定されてゐたが、モの後徐州
 大倉戦へと進展し、さらに帝政樺の壊滅をはかるためには、今後とも大規模の作戦行動を堆積ぜ
                                                    ▲}◆りヽ■l
 ねばならないことにもなるで参らう。たとへ如何なる困難が参h首ノとも、徹底的藩政凝席捲の態
 勢を整へねばならないのである0モのためには、最初浄足し狸軍需物資の需要がさらに増加する
 ことも萱池已むを得ない0勿論、この物資の需要増加に対しては軍部でも大いに考慮し、極力伐
 用品を用ひたりして輸入増加の防止につとめてゐるので参つて、一例を参げると、牛皮革頼の輸
 入防止のためズック耽を調達した賓例も参り、又冬季酷寒の地にある部隊に対しても綿毛布を使
 はゼ陀例もある0その他金属類に対しては種々の代用品を用ひ、已むを得ヂ必要な施設まで一部
 く● の
 繰延べを行って需要額の減額をはかつてゐる程である。
  このやうに、軍部としても代用な牡繰延べなりをして苦心をしてゐるが、何しろ軍需として






 は、和音初の供給を確保しなければ作執行動を支持して行けない慮れのある乙とも亦動かすこと
                             hレゆんたく
 の出家瓜事賓である。その上、外国からの物資輸入も亦潤澤には出水瓜ことは▼前述の洩りで歩
          くわんてつ
 るから、戦寧日的を貫徹さゼるためには、軍需品の生産に直接間接必要な材料、横城、燃料類、
 輸出用原料品や国民生活に絶対必要な物資の最小限度以外は、これらが輸入品である限乳今後
 一定期間、直接消費を禁止するか、配給を止めるかといふ極度の制限そ加へねば在らないのであ
  る0


  攻にわが国の財政はとうか。今次事襲のため支出すべき経費としては、昭和十二年度換算中
 事増額関係分は線額二十五億飴萬喝、これに事襲費を除く換算を加へると約五十四億何に達し
  た0
  さらに昭和十三年度に》いては、軍事費が約凹十人億喝、これに一般合計の三十飴億河を加
 へると、預算合計は賓に入十億桝を突破する未曾有の互額に達してゐる。そして乙れらの財源
 として大領今後一ケ年間に教行する国債は五十億卸を越える見込である。しかもこの互額の再
   九んくhつ
 債が糾鰍ノ滑任されるかとうかは箕に事卑下にあける財政経済政兼の成育の分れ日である0モ
 の上、帝固としては日満を温ヂる軍需工業その他時局粥係産業の生産力携充をはか嬰「さらに
 進んで北、中支の開尊、振興の費用を考へねばなら瓜から、わが固経済の負据もをかく容易で

はないO
             lかな
 この亘額の資金を潮滑に賄ふ陀めには、南民の貯蓄に倹っょりほかな(今後なほ一屠これが
根底強壮をはからねばならない。
 もし貯背の増加が預期するやうに出水なければ、とんなことになるか、固債は消化されず、朗
珊感性インフ∨−yヲソを起し、延いては輸出カを減退し、軍需の供給に封して支障を来し、つ
ひに軍事像算の遜行難等を惹起ずるで参−箸ノ0だからこそ、貯蓄励行の徹底強枇は戦時財政経轡
を架定さゼるために賓に東大頂関係を持うわけである。
 礪つてわが国の物偶の現況はどうか〇一般物償は社務一騰落ちつきを見ゼてゐたが、事鬱故
 に仲ひ急騰し、すでにこ割乃至三割、高いものになると五割近くも高くなつてゐるものもある。・
今舷の物情の騰勢は、社務の世界的影響によるものと性質を異にし、原料材料だけでなく生
                                 ・▲T・フhてい
 柄必管叩芝で騰貧し、世界物偶の低落傾向の現状と反射の鴇勢を示してゐる。政府でも、この鮎
 に.鋸み、物僧騰食の抑制については非常な努力をはらつてゐる次第である。しかしながら、かう
                                           じんゐ
 した物憤は元本、複雑徹妙な経済関係にあいて自然教生的に出来上つたものだから、これを人為
   きせい
 的に規整して行くLとは難事申の難事ではあるが、わが国が直面してゐる難局を打開するために
 は、これも亦已むを椒ないところである0固民はよくこの粘を自費し、非常時局克服の諸政策彦
                                                                                                          ノ
 行に進んで協カしてい陀ゾきたい0いな、これに協カする必要があるのである。






      三、経済職の強化とその封策

  わが圃はいま、未曾有の互頼な換算を施行し、勒ひを進めつゝあるが、以上述べたやうに、国
 際収支の胱況より考へれば、輸入により充分の物資を得るのは中々困難で参り図内一般物債の騰
 勢も著しtかうした情勢は闘家の財政経済に重大なる関係を及ぽす虞れさへあるといふのが現
 下の状況である。従つて歩く空で反省しない帝政樺を徹底的に壊滅づぜる帝国政府の決意を貰ぐ
 ためには、物資需給計査なとも、大いに常初のものを襲史して新事態に封應させるやうにし、公
 債滑他のためにもさらに徹底的貯蓄奨励を行ひ、又物債の昂勝に封しては、極力これを抑制しな
 ければ到底この時局を轟切ることが出水ないのである。
 需給計童の修正咋賄しては、極力需要額の座縮を行ふはかないのであるが、作戦の進捗に件ふ
 軍需は却って増加する情勢に参軋この粕反する増減のl妻求を調整するためには、一面輸出の
 撮具に出水る限り努カし、他面国内需要に対しては
  1 軍の充足喬宰瀕となるものと、これが生産配給に必要な原料、材料、機械、辞典、駄科専
  1 放出晶原料、材料
  さ 村民生活雑持上租封必要な葉品、肥料等の最少臨庇
                               く●◎
 等のほか、原則として輸入を観めないこととし、各鍾工事の中止線獲べ、国内物資の同牧の増加等

 を計重し、輸入絶額を少なく食ひ止めて、本年の難局切り炊けを策することにし托のである。
  そのためには、いふまでもなく、今後一定期間物賓の班用に閑し徹底約制限策を断行しなけれ
 ばならないので参つて、政府がこの新たな物資需給計塞の下に賓施しよちノとしてゐる政策はおの
 やちノな渚粘である。

  − 物価騰★の抑制
   軍需資材の供給確保と馬沓相場の竪凝、輸出の振興と囲民(渦費者)の生活雄持とのため、現在以上の
  物傾跨貴を抑へるに必要な摺置を講ずるとともに、基準傾格又は公定僧格の設定等のほか、滑費節約と
  配給統制とを併せて強化し、物情の引下げを行ふこと.
   2 滑窄節約

   一般物資についてつとめて滑費節約をはかり、特に輸入物資については、必要に感じ使柑制限乃至禁

   止規則を制定し、代用品の使用を強制する等の方法で、国内不急用途に封する物資の滑費節約を強化す
   る.一般国内需要について使用制限又は渦費節約を強化すべき主な資瀬は次の如くである

    鋼材、銑繊、金、白金、銅、黄銅、魂給、鉛、錫、ニッケル、アソチモソ、水銀、アルミニウム、石綿、埋化、羊

    毛、バルブ、紋、棟類、皮革、木材、軍油、揮蟄油、生ゴム、タソ叫ソ材料、工芋塵、ベソゾール、トルオール、

  石浜酸、硝酸曹達、加旦、慧石等
r 。苦宗

                                                             【■l1






    輸仙叫増進のため綜合計寒の下にこれが】般的促進を強化するほかに
    イ 製品の輸出とその原料輸入とをサンクさせる方法等による輸出用原料、材料の輸入の確保
    甘 輸入原料と材料とを囲内滑費用と輸出用とに直別し、輸出用原料、材料の閣内消費を徹底的に
       防止する

  4 輸入、配給機構の完備

  5 貯蓄の普及徹底

  6 官民■性、簡素な非常時同氏生活様式を確立ナること
  丁 主要物資の埠尭殊に瀬童の卑加のための指定
  8 軍帝券務封‥策
  軍需工業生産能力埠進のため 交代制の採用及び技術点その他弊妙音の急速領充足に必要な措置
  9 廃品同収

   ■靡品等の同牧の徹底を期するため必宰な組織を確立する

  柑 樽菓、失業封策

   持薬及びこれに伴ふ失‖業者救済の必婁な封東を辞ずる

  〓 観象穂勅兵法の−部條項の費動

   前の緒鮎の政朱書行のため必要のときに蟄動する

 以上は、政府が諸般の施設を托ゾ一っ執事目的の遊行のために集中し、さし参たつては藩政樺
の徹底的壊滅のために、又新支郷の長期趣設のために、さらに叉洛衆駒カの飛椛的発展を期する
ために、苫難を排して一大決意を以て貸施しょうとする諸方策を参げたもので、とりわけ輸出の
棉進、物資の節約、貯背の励行、物倍の抑制、生産の増加は急務中の急務である。
 そ七て、これらの諸方策が貸現されるか否かは、一に岡民の具に時局認識の上に立っ自兇と、
         ▲すゆミフか・}
これに基づく賓践粥行の如何打かゝつてゐる。われわれはこの際、さらに堅弘持久の決意を凹
 め、進んで乙れをわれわれの生柄の上に賓捜し、.畢幽一致灘局の打開に邁進ゼねばならないので
                         ほこ ゆる
 ある。われわれは聖戦所期の目的を嘗徹せねば矛を緩めヂ、近術首和の言の如く、今次事埠はわ
                                     き〜▲・フ・−
 れらの時代において解決ゼねば断じて止空瓜決煮をさらに澤閑にゼねばなら瓜。