第九〇号(昭一三・七・六)
事変一周年特集
事変一周年に際し全国民に訴ふ 内閣総理大臣近衛文麿
経済戦の備へ 企 画 院
事変の回顧と展望 大陸作戦の戦果 陸軍省新聞班
制海制空の一年 海軍省海軍軍事普及部
波瀾の外交戦 外務省情報部
週報会結成を提唱す
官庁刊行物だより
昭和十三年前半期総目録
(付録)支那事変第一年戦闘経過図
経済戦の備へ
−長期国防経済の確立− 企 画 院
一 長期・大規模な総力戦
皇軍は徐州の陥落に引続いて、帰徳、蘭封、開封を相次いで攻略し、南支においても戦面はます/\
拡大しつゝある。これらの戦闘を遂行するためには、軍はもとより、国民一般もまた異常なる
努力と緊張を要することは論を俟たない。
さらに、北支をはじめ、中南支に罫よぶ頗大な占塘地域の治安を確保し、北支臨時政府と中支堆
いくせい
新政府とを育成統一し、北支の経済を開発し、中支経済を振興するためには、長期にわたり、大規
模な同家の絶カがこれに参加することが絶対に必要で参る。
†ゐか・)
のみならヂ、この封支政策を蕗行するに常つては、藩政樺を援助し、日本の封支政乗の遼行を妨
げ、我が圃の大陸政策を失敗に躇ゼしめるために、虎祀耽々として横をうかゾ以つゝ参る第三開の
よくあつ
存するととも忘れてはならない。この第三固の野心を未然に抑優し、その脅威に備へる陀めにも、
一¢
固カの和人官な部分を割かぬばなら瓜。
かくしん ケ・hいくhく
このやうに大観すれば、帝岡を柁心とし、満洲と支那とを外郭とする我が陸の圃防と西太平洋
における我が海の同防を完くし、さらに進んでは、日支互に相結んで明朗アジアを創造するといふ
孟・’き▲よ′ヽ
今次事埠の究梯の目的を達成するためには、長期にわたり大規模にあよぷ綜合図カの動員が絶対
に必要となつてくる。
この同家絶力戦1特に縛緒戦の立場から、二大支柱として強調されねばなら瓜ものは、いふ萱で
くhくじゆ・}
もな(畢備の急速な強化と生速力の飛締約鳩充で参る。
†・つとりく
今後の財政締沖政策は、すべて、この二大枢軸をめぐつて展開さ札、経済を本格的夜戦時憫制に
帯絹成するための舘工作は、乙の方向をめざして遂行されねばなら瓜。
〓 互額な戦費の調達 貯蓄は柁封に曲事てある
支那串襲のために必要な戦費は、非瑞に技粕なものとなる。
けふさん
すでに昨年第七十一同》よび第七十二同の純度の帝開講合に》いて協賛を経托臨時軍事費は二十
五億凧を超え、さらに本年の第七十三同和開講曾で追加された軍事費は川十人億五千笛潮におよ
は}だい
び、両者を合計ずると七十三億徐前例といふ柁大な鶴に達ずる。こ札を日露勒季の時の戦費十五億
に比べると五倍近くになることから見ても、いかに砧大在ものかゾわかる。
これをさらに購く政府の一般横川として見札ば、昭和十三年度の歳出橡算は三十二億凰、これほ
臨時軍事費の本年度追加分凹十八億五千常固を加へると、入十億凰に達ずる。乙れだけの金が大饉
今後→ケ年の間に使はれるので参る。最近年度の歳出珠算を、大憎二十一、二億と傾定すれば、賓
にそれの出倍乾くである。
この亘額な費用の財源として、第一に考慮されるのは租枕で参り、そのために政府は檜枕を敢へて
みた l■
行つたので参るが、租枕をもつてしては費用の一部分を充ずほ過ぎないので、大部分は公債に倹托
ねばなら瓜。そこで、今年度中に費行を漁定されてゐる公債横は、一般、特別、膀時軍事費の各曾
てうたつ
計を合はすと五十六億制にもなり、政府は先プこれだけの資金の調達を迫られてゐるので参る。
しかし、必要義金はこれだけに止らない。日満支を旭ヂる軍需工業と、それに閲耕する時局産
業の生産カを靖充するためにも亦、多額の資金を必要とずる。これをlニ十億と押へても、政府と民
間が今後一ケ年ほ必要とする資金は八十億を超える。
この調達は、ほとんと全部を固民の貯薔による専横費金に侯たねばなら瓜。
これは伸々容易なことではない。これまで、毎年の同氏貯蓄は、ざつと三、四十億と推算される
から、八十億の貯蓄はこれまでの倍額以上といふことになる。同氏が貯嘗に金力を畢げねばなら
ゆl叩ん
取柄以はこ1に参る0
今度の事故によつて所得の増加した者は、その増加所得の全部を貯蓄する義孝の参ることは、い
ふ空でもない.さらに、所得の、べつに増加しない者も、この際、我が国の非常時局に息ひを致し
お・フ∫ん
て、應分の貯蓄をなすことが絶対に必要で参る0貯蓄こそは変摘心の鮮針である・
その化めには、これ芝での生活水準を引下げる魔悼が必要で参る。生活程度の高い者は、うんと
切下げ、さほと高くない老でも可なり切詰めねばなら由が、それには必需品すら節用し、合理化し、
しかう小人 で土へ
被服焚、嗜好品費、出前、外出先の食串費や交際費・賎輿費なとは息ひ切って減らさねばならない。
はlノにん
これらを敢行することなしに、自然に放任するならば、公債は油化されデ、東栄資金の調達はで
苛んぶ は●)とう
きデ、政府の資金だけが柑布されて彼らに鵬剛凋カを増し、物資の不足を来し、物債は暴騰し、凧
モ し
は信粕を失ひ、ために同氏経済の例満な淫行は阻止され、図民生活は異常に鷹泊され、いはゆる慈
gや′ヽき
性インフレの状態を悲起ずるに吏るだらちノ。
こ†
これを未然に防ぐには、この際、開民が挙って貯背報朗に邁進する以外に途はないので参る。
lニ物資需給の調整 滑費節約の強行
現存の戦節目的を撞成し、戦果を速かに収めるためには、軍備を急速に強化しなければならない。
それには、わけても軍市費材を攫富に、しかも迅速に供給することが必要で参る。ところが、料率
か き
が非常に進歩し、大砲や機関銃なとの火器や航嬢磯、戦車等が異常に教達した今日では、勒替の形
態は堪だしく複灘多岐となり、乙れに要ずる軍需資材も翌た多種多様で、しかも莫大な量に上る
に至つた。
銀鋼はもちろん、白金、銅、鈴、照鉛、錫、ニッケル、アンチモエー等の非蛾金属、アルミヱク
ムやマ〆ネシクム等の畔金鷹、石炭や石油等の燃料、工業堕、ソーダ、硫酸アンキュア等の北畢串
品、棉花、羊毛、ゴム、皮革、麻、木材、紙類等は、わけても褒要な軍需資材で参る。
上すモん
これらの物資を紫宵迅速に軍事需要に提供しなければなら瓜が、それには、空陀、既存の物賓の
配給を胤滑にし、それを軍需に集中することが必要で参る。これらの物資についで配給の統制が強
行されるのは是がためで参牡これらの物資を取扱ふ来着がこの配給統制に協力ずべきは参ら陀め
ていふ斗dでもない0
ひんじ9く
ところが、既存の物資といふのがそれほど攫宮ではない。さうかといつて賓源の貧窮な我が国
では、モの生売を激増することも急速には望めない。さらにこれを外固ほ仰ぐことも容易でない。.
躇大な軍事需要に封しては不足がちで参∽ヽ 種々な困難が伴は瓜とも限らない。これらの物資に
あつしゆく †土】せい
封する民間需要が、今後さらに摩締されることは、免れない鳩勢で参るい銭鋼ほついていへば、戦
争藩行に直接必要でない趣築や土木工事のために銀鋼材を使用することは殆んと凛止され、日用品
に使はれる教材は他の代用品によつて取替へられねばなら瓜。銅、鈴、亜鉛、錫などについても、
同じことがいへる。殊に、軍需として多量に必要とされるに拘らヂ、その大部分を外国に仰がねば
なら瓜石油に至つては、その一滴は血よりも貧し、といふ心組みで節約する要がある。
これらの消費統制については、すでに多くの法規が制定された。統制をさらに済げ、これを強め
るためには、今後とも種々な法規が発令されるだらうが、より必要なことは、同氏の自尊的な滑章
節約である。滑費節約は、園民の自制によつてはじめて重きものとなる.
西 国隈収支の連合、検出貿易の境輿
軍常食材を急速に調達するためには、河内生産で間に合はないとすれば、勢ひこ≠を海外に仰が
ぎるを符ない。現に直接の罪礪資材だけでなく、さらにそれを生産するための生産財をも輸入に侯
たねばなら瓜とすれば、これらの輸入が増加することは常然である。
たて土へ
だが、間際収支を適合し、希宥和場を維持する赦前からいへば、入超額は極度に抑制されねばな
しゆくけ・ヽ
らヂ、従って輸入も無制限ほ恕めるわけに行かない。いな、輸入はできるだけ縮減すべきだ。こ、
にもいて、軍煎資材や生蔵肘以外の輸入品は梅度に爬締されることとなる。殊に今年初め以雑五
月までの輸出が十億に足らず、前年に比べすこ一億五千節制泣くも減少し、今後とも、世界景気の恵
むら−r叩小
催、開内の物僻水準の割高なとで、輸出伸長の容易なら瓜ことを考慮ずれば、輸入物賓が今後さら
ふ
に魔締さるべきことは、火晶るよりも明らかで参る。生売力按充用の資材はもちろん、軍縮用
賀材すら、参る程度に抑制を受けつゝ参る今日、圃内用民需品が殆んど絶射的に禁止される運命に
参ることは、むしろ曹然であらう。この粘からいつても、輸入品や輸入洩料による製品の内地消費
は極力節約されねばならない。
圃際収支を準曾ゼしめるためには、現に消極的に輸入を減らすだけでなく、なは積極的に輸出を
■つきん
伸ばすことが必要で参る。輸出撮興が喫緊の要務として叫ばれる所以もこゝに参る。輸出振興の托
はlノ書く
めには、耶軒を奉げて各種の方策が集出され、い空や貿際家の断行を待っのみ、といふ段階に達し
てゐる。莫者の→屠の自発と協力に期待するところが大で参る。
一入・)てい
輸川振興の要諦は、つ萱り、外貨の獲得による輸入カの増大に参る。とすれば、空づ、圃産原料
による加工品の輸出に仝カがそゝがれねばなら瓜。盤売品や水売品が特に着目されるが、海外原料
による加工品も、それが輸出に向けられる限り「これを輸入の許可を寛にずると同時に、それを糾
斗・けつ
内に特用する者に対しては、今後は厳重な制裁が加へられることもまた普然の締結で参る。
けんない
外貸の雄待といふ粘からいへば、い芝や固ブロック圏内に参る満洲や支那への輸出は、むしろ第
三固へ振り向けらるべく、前金の虞澄が礪ぜられねばなら瓜。
五 生麦カの棟充 − 喪集報国の箕践へ
軍需資材を鷺宮迅速に供給するために、或ひ灯その消費を節約し、或ひはその輸入を確保するこ
との必要は、すでに述べた洩りで参るが、さらに根本的にはその生薦を費宮碓賓にすることがより
必要で参る。モの陀めには、同防産業と基碓売薬、いはゆる時局蔵栄の生産力を摸充し、我が陶の
同防カの充菅期し、我が岡カの劃期的飛躍に備へ、我が勢力圏内に赴いて自給自足し得る乙とを
主いしん
目的として邁進ぜねばなら瓜0
この割期的大事業は一朝一夕に成るものでなも少くとも数年を要するが、さし為叱り凶、五年
を一期として限られるであらう。しかも、長期にわ叱るだけでなく、相互に粥聯するところが少く
にちAあは
ないとすれば、あらかじめ、前漁を見透し、相互を睨合す計董がたてられ、それに基プいて計重的
し 壱
に遂行される必要が参る。たとへば、浦洲の夜来五ケ年計塞が示唆してゐるやうな、計董される産
紫の今後数年後の生衆目稼が定められ、従って今後数年の間に按充されねばなら胎生髭カが算定さ
れ、その日的達成のために金力が洗がれることとなる。
この特定の計婁耗莱に封しては、その必要とずる原材料や械械器具が優先的に配給され、所要の資
金が乙、に托入され、必要な披術貝や券務者がこゝに集中されることとなる。そこで、この計査定
菓に関するかぎり、その生練物の箭箪と供給はもちろん、それが使用する生錬手投や技術家、雰務
者、さては所要の資金に至る慧で、少くとも肺水数年にわたつて大槻の見透しが輿へられ、就業の
てんは・)けいくhく
運螢は寄ら乙の展親計婁にもとづいて藩行される。いはゆる計室経済が登場するわけで参る。
しかも、計・茸される渡米が現下の我が固に温いて最も蚤要夜光碓的な耗米である以上、それらが
とそhつ
参る計轟の下に統轄されることは、それを枢軸として我が圃の仝経路に参る程度の計憲性が附輿さ
お
れることを意味ずる。固防閑寂の祉設、闘防経済の確立は、これを措いて他に漁はない。
乙の計婁尭は、もちろん、企養院を中心として政府によつて作成され、決定される筈であるが、
その賓施の将官者はむしろ民間の各常業者で参る。常罪者たる者が、経費者も技柵家も勤仙労音も挙
げて一憎となつて、生産力据充の計蓬実の賓施に協力ずることなしには、計尭経済は一歩も進み禅
ない。しかも、生箆カの班充は、今後にやうやく問題となるといふやちノ夜間題ではなく、すでに事
鍵の前後から個々的にはずでに資行の終にフいてゐる。とずれば、いよ〈以て、乙の事業の賓行
さ・)けん
カは藁者諸君の饗肩にかゝつてゐるといふべきで参る。各個の個人的創意を生かしっゝこの事業
に協力することこそは、蒸発報圃の中心的馳髄で参る。
六 拳固−致鴇制の強化
しよせい
上述の財政経終政策を遊行し、さらに進んでは今次聖戦の究極目的を達成するには、庶政官般の
し●青く
施策と固家の地力とを統合集結して、固を奉げて】憎となつて邁進ずることが紹封に必要で参る。
国民的囲結の威力のみが、この最高開発の達成を可能ならしめるのである。
ひと
この国民的陶冶のためには、政府は、一般閑民に封して時局の賓和姦しく線識ゼしめ、民間と
共にその仕事を分ち、或ひは進んで民間にその紫務を託ずべく常仝の努力を怠ら瓜で参らう。各所
に参輿を置き、随所に民間人を集めた委員曾を設けつゝ参るのは、是がためで参る。政府は具剣に
固民の協力を求めてゐる。
とき
この歌に参たつて、固民もきた金力を挙げて政府に協力すべく異常の熱意と戯身とを示されんて
とを熱望してや芝瓜。
協力の造は泣きに参る。
日々の支出を十鏡でも、l何でも切り詰めて、それを貯金箱に投じて欲しい。その貯曹は、やが
て戦費を調津し、公債を消化し、生発カを描充ずる資金となるだらちノ。
しやうl・’ カバン
常君が日々油耗しっゝ参る物資、木綿類、毛織物、牝、鞄等の革製品やゴム製品、鍋釜々との
金脇品、メスや刺ククのガソサンはもちろん、石炭や電燈にいたる芝で、その消費を節約し、モ
の新調は極カさけるやヶ「充分の江意を排はれたい。同時に、タ,キ錐、青銅、煙革の銀紙をはじ
せ・’き9′ヽ
め、台布、台ゴム、構紙類にいたるきで、死減したり焼却し叱りずることなく、直ちに梯下げて、
膚∩…岡収の漁姦ぜられたい。これらの物資は、或ひは軍常資材として緊急に必要なもので参牡
或ひは外岡原料品による製品で極めて入手困難なものである。
特に貿易に瀾係ある業者と時局蒸発に従事しっゝ参る常深部との任務は重大で参る。一同でも多
くの外貨資金を捲徹し、一トンでも多くの軍需資材を供給ずることに寄念されたい。これが戦節目
的を達成する托めの最も有力な弾丸である。
その職を奉ヂる場所が、官公砦たると、畢校、銀行曾敢、商店、工場叱ると、農村たるとを開
はず、何等かの業務に従事しっ・参る者は、その職場々々で、自己の金力を轟し、能率の向上に努
め、融合奉仕、動界報尚の念に燃えてこの時局に奮起していたゾき托い。そのことが、直接にか、
間接にか、開発の藩行に協力し開発の線に滑ふこととなるので為る。
すでに戦線に参る者は、文字漁りに不眠不休、生命まで亀岡に捧げて、報国の念に燃え立ってゐ
一▼の・’
る。固内にある者が、智カある者はその智カを、技能為る者はその技能を、雰力参る者はその券カ
を、さらに金力ある者はその金力を、同家に捧げて、奉公の施を致ずのは、むしろ理の常然で参り、
同氏としての責務で参る。