尽忠報国の精神

　　　　　　　　　　　　　　近衛内閣総理大臣



第七十二回帝国議会の開院式に当り

　天皇陛下には優渥(いうあく)なる勅語を賜ひ、帝國の向ふ所を明にし国民の進むべき道を御示しになりました。
　大御心眞に恐懼(きようく)感激の至りに堪へないのであります。
　帝國は東亞の安定を望み、常に日・支兩國が相提携して、之に依て世界平和の基(もとゐ)を樹てんことを欲して居たのであります。是は帝國の一貫した國是であります。然るに支那は常に隣交の誼を忘れ、信義を失し、永年排日抗日を以て國策とし、帝國の權�u(けんえき)を侵して暴状を極め、その結果遂に今回の事變を生ずるに至つたのであります。
　今や外に於ては出征の將兵膺懲の歩武(ほぶ)を進め、内に在ては銃後の國民奉公(ほうこう)の至誠を致して居ります。然し乍ら今回の事變は其の由つて來る所遠く事態の推移も亦豫め測り難いのであります。此の時に當りまして我々國民は斉しく時局の重大なることを思ひ、�u々堅忍不抜の志を堅うして、今後如何なる艱難が來ようとも之に堪へ、帝國の公正なる目的貫徹の爲に敢然(かんぜん)として邁進(まいしん)するの決意がなければなりません。
　凡そ難局を打開し国運の隆昌を圖るの道は、我が尊厳なる國體に基いて盡忠報國の�艶_を振ひ起し、之を國民の日常の業務生活の間に實踐するのに在ると思ふのであります。今般國民�艶_の總動員を行はうとする所以も亦茲に存するのであります。
　古來我が國民は一度艱難に遭遇しまするや、必ず之に打ち克(か)ち、国家を興隆せしめたのであります。此の重大時局に際しまして我々國民はよく以上の趣旨を體し、忠誠公に奉じ、和協心を一にし、日本�艶_を昂揚して擧國一致の實を擧げると共に、之を實踐に現して愈々國力の伸張(しんちやう)を圖り、皇運を扶翼し奉らんことを勉めねばならぬのであります。是れこそ我々國民の時局に處する覺悟でなければなりません。