第三八号(昭一二・七・七)
 アルコールの専売に就て      専 売 局
 列強陸軍軍備充実の展望     陸軍省新聞班
 新統治法の実施を頼る印度の政情  外務省情報部


列強陸軍軍備充実の展望

             陸軍省新聞班

 

一  はしがき

 政治的には世界大戦後ヴェルサイユ条約その他の平和条約により致命的な桎梏を負はされた諸国が、国家の名誉と自由と平等とを獲得せんがため、現状を改善せんとする努力、経済的には世界に於ける自由主義的経済の行詰りに伴ふ経済的国家主義、換言せば、自給自足的国民経済主義の台頭、更に思想的には自由主義の陣営、共産主義的人民戦線、ファッショ的ブロックの対立相剋等々、世界は紛糾と不安と焦燥の間に協調観念を消磨し、今や国際的の摩擦は益々激化せらるゝに至つて。
 かゝる転換期に際会して、列強は互に合従連衡の秘策を尽して有利なる国際的地位の展開を計ると共に、内は強力国家の建設に没頭し、特に変転常なき国際政局の現況に直面し、自国の主張を貫徹せんがためには、所詮は自国の力による外途なきを自覚し、国防力の充備に日も尚足らない有様である。以下具体的事例を引用して此の間の消息を明らかにしたい。

二  兵力量の増加

 世界大戦終熄以来、彼の国際聯盟に、不
戦条約に、或は軍縮会議に、平和の保障と
軍備の縮少とが論議せられ来つたのである
が、現実は皮肉にも軍縮どころか、却て世
界的軍軍拡の情勢を展開し、各国は競うて国
防軍備の充実に没頭しつゝある有様であ
る。主要列強に就て見るも、其の陸軍常備
兵力は五年前と今日とは左表の如くであつ
て、驚くべき膨張率を示してゐる。

  五年前 現在
ソ聯邦 130万人 185万人
25 70
55 65
34 39
32 35.5

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