第三七号(昭一二・六・三〇)
 国家と情報宣伝         情報委員会
 物価騰貴と家計         内閣統計局
 日英通商貿易の現状       外務省情報部
 最近公布の法令         内閣官房総務課


国家と情報宣伝         情報委員会

   一 情報宣伝の意義

 交通機関の進歩発展は地球を日々狭めて行く。汽車、汽船、自動車の発達乃至航空機の進歩は人間と物資を世界の隅から隅へ容易に、安全に、迅速に運んでくれる。郵便、電信、電話の整備乃至無線電信、無線電話殊にラヂオの発達は人の意志を須臾にして世界の隅々に迄伝へてくれる。此の無数の蜘蛛の巣を張廻らしたやうな通信網に依つて、人々は居乍らにして世界に起りつゝある大小総ての事件を知り得るのである。昨夏ベルリンで挙行された世界オリンビックに於ける我が選手の括躍振りが毎日ラヂオに依つて如実に我々の耳に伝へられ、全国民を興奮と感激の嵐の中に包んだことは今尚記憶に新らしい所である。
 併しオリンピックのニュースに一喜一憂してゐる間は無事であるが、現在の世界は斯る平和な事象ばかりに通信を利用してゐるのではない。今日全地球を掩(おほ)つてゐる国際政局不安の黒雲は、世界各国の神経を極度に緊張せしめてゐる。其の結果は各国共にあらゆる手段方法を傾けて正しい且詳しい情報の蒐集に努力してゐる状態である。
 又世界が狭くなつた為に、各国の相互関係が非常に密接となり、如何なる国と雖も、世界の動きを無視しては十分なる活動は出来ない有様である。世界大戦に独逸が敗れたのは、独逸が宣伝戦に敗れたことが最大原因の一であると云はれてゐる。満洲事変に際して、我国が国際的に孤立の状態に立たされたのも、当時我国の対外的宣伝が支那に比して拙劣であり立遅れた為である。最近の伊エ戦争及スペインの内乱に於ける宣伝戦が如何に激烈であつたかは言ふ迄もあるまい。結局、今日世界に有利な地歩を占めようとすれば先づ宣伝戦に勝つことが重要要件であると云へよう。而して世界は此の蜘蛛の巣の網の上に踊つてゐると云へよう。
 顧るに我が内外時局は愈々多瑞、国民上下一致して時艱を克服し国運の躍進を期せねばならぬ秋である。此の時に当つて。真の国策の樹立と遂行とを期する為には、広く情報を集め、之に対する公正なる検討取捨を行ふと共に、一方国民に時局に対する正しい認識を与へて其処に健全にして積極的なる輿論を培ひ、国民の十分なる理解と共鳴との上に明るい正しい政治を行はねばならぬ。又外に対しては我国に対する国際的諒解の増進を図り、世界の隅々に到る迄帝国の真意を徹底せしめなければならぬ。即ち今や我国内外を通じ情報宣伝は一歩も忽せに出来ぬ最重要事であると謂はねばならない。
 此処で情報宣伝と言ふ言葉に付て一言説明して置かう。国外に於けると、国内に於けるとを問はず、或る事件のニュースが入手された場合之を情報と云ふ。或る意思を発表し、又或る事件や事実の内容を発表するのは報道である。情報は之を発表する側からすれば一つの報道であり、又報道を受ける側からすれば情報である。
 宣伝と云ふ言葉は巷間やゝもすれば或る事を針小棒大に吹聴すること、或は相手方を胡麻化すこと等と云ふ一種の誇大又は欺瞞の観念の意味に取扱はれる傾向がないではなかつた。併し真の宣伝は「或る目的達成の為正しいことをその儘に、普(あまね)く伝へて一般の理解と共鳴を求める」ことでなければならない。即ち宣伝は其れ自身公正なる目的を有してゐるのである。此の意味に於て帝国の内外に対し真意、政策の徹底を図り、輿論の形成に努めると云ふのが政府の行ふ宣伝の本義である。
 情報宣伝の手段方法としては後に詳述する通信機関を初めとして、最も普遍性のある新聞紙、或は冊子、講演、更に新らしくは映画やレコード等種々のものが考へられる。殊に近代に於ける印刷技術の素晴しい進歩は交通機関の発達と相俟つて、迅速報道機関としての新聞紙の使命を非常に大ならしめた。云ふ迄もなく、今日の世界大衆が世界のニュースを一瞬にして知り得るのは、ラヂオを除いては、殆ど新聞紙上に於てゞある。而して新聞の記事なり論調は国内の政治、経済の動きに敏感に影響し、更に外国に転電されて外交、通商に微妙な結果を齎らすことが多い。是に於て新聞の使命は国家的見地からしても頗る重大となつたのである。
 宣伝手段としてのビラ、リーフレット、パンフレット等の印刷物も其の效果は甚大なるものがあり、殊に戦時に際しては之等の印刷物を飛行機又は気球に依り敵軍中に撒布したり、或はロケット、手榴弾等に依つても配布されることがある。
 最近に於ては映画が其の独特の大衆性を以て宣伝政策上重要視されて来たが、其の将来こそ確に刮目に価するものがあらう。

二 国際宣伝戦と通信機関

 戦争に宣伝が特に活躍するに至つたのは比較的近代のことで、世界大戦に於て、近代戦の斬新にして強力なる武器として宣伝は颯爽と登場した。聯合国側、殊に英国は世界の隅々に迄張廻らした自国系の通信網を総動員し一方に於て独逸の通信を完全に封鎖したばかりでなく、他方に於て自国の政治的見解乃至目的を多分に盛つたニュースを諸国間に充分に撒布した。即ち英国はノースクリフ卿を部長とするか宣伝部のあらゆる手段方法を尽した活躍に依り、世界の輿論を挙げて聯合国側に同情せしめ遂に独逸は帝国主義的侵略国の烙印を押され全人類の敵であるとされて了つた。又其の宣伝は相手国たる独逸の国内に侵入し、さしものヒンデンブルグ元帥をして次のやうな歎声を発せしめた程である。「我軍は敵と一生懸命に戦つてゐる。若しも兵数の優越が勝利を約束するものならば、独逸は夙(とつ)くの昔に一敗地に塗(まみ)れたであらう。敵は併し、独逸と其の与国を打破るには兵器のみでは駄目なことを知つてゐる。敵は我軍及我が国民にこもつてゐる精神が不敗の原因をなしてゐることを知つてゐる。従つて敵は独逸の兵器に対する戦闘と共に、独逸の精神に対しても挑戦して来た。敵は我々の精神を毒せんとしてゐる。敵は我が戦線を爆撃するに大砲の砲火のみを以てせず、印刷物の砲火をも併用する。其の上、敵は又我々の戦線に在る兵士の精神を攻撃することのみに甘んぜず、母国に居る国民の精神を毒せんとしてゐる。」斯くして独逸側は戦線の勇士も銃後の人々も精神的思想的昏迷に捲き込まれて了つた。
暫て潰滅が来たのである。
 情報宣伝の効果は、併し、何も戦争の場合のみ大きいとは限らない。否、現在に於ては世界は常時国際宣伝戦又は思想戦に依つて、此の不安な政局に処して自国を有利に導き、惹いては深刻な経済競争の覇者たらんと虎視眈々たる有様である。従つて各国共程度の差こそあれ、情報宣伝には国家自ら大いに意を用ひてゐるのである。宣伝及言論統一を以て国家存立の基礎条件としてゐる蘇聯邦の情報宣伝機関が整備されてゐることは云ふに及ばず、独逸及伊太利は特に夫々宣伝省を設けて、対外的にニュースの国家統制を名し、対内的には国内輿論の完全なる統一を期し、進んで国民の啓発教化に大童になつてゐる。伊太利のムッソリーニや独逸のヒットラーが国家統一に成功してゐるのも、情報宣伝を重要視したことが其の大きな原因であつたことは疑ふ可くもない。
 英国は自由主義の国柄から、現在では特に宣伝省の如きものは設けてゐないが、情報政策には昔から最も力を注いでゐる。今日の如く無線が発達しなかつた以前に於ては、国際間の通信は殆ど海底電信に依つて行はれたのであるが、英国は此の海底電信の重要性に夙(つと)に眼を付け、殆ど世界の海底電信網を独占して了つた。其の結果英国は世界の情報を逸早く手に入れ又は自国に有利なる報道を全世界に弘布するのに反し、他の国は何れも厳重な通信の検閲や故意に依る通信の遅延に遭ひ、其の為断えず著るしい不利を蒙り、其の利害英国と千里の開きがあつた。英国がかの世界政策の実現に成功したのも、此の海底電信に依存する所の甚大であつたことは歴史家の等しく認める所であり。尚茲に注意すべきことは英国は自由主義の本家と云はれてゐるものゝ、其の国民性の然らしむる所か、国民の言論は自治的に統制され、新聞の如きも常に自省的態度を失はないことである。
 幸ひ無線電信、無線電話の発明進歩は世界各国をして、此の英国の海底電信網の桎梏から逃るゝことを得しめ、夫々無線電信の自主独立を達成することが出来るに至つた。殊に近来、放送の威力は眼醒しいものがあり国内に於けるラヂオは単に国民の慰安、報道等の用に供されるのみでなく、国民教化の重要な鍵となり国論統一の楔(くさび)となつてゐる。更に各国はラヂオに依る海外放送に対しては採算を無視して大きな努力を少しも吝まない。海外放送は一には海外に在る自国民に慰安とニュースとを提供すると共に、一には他国民に自国の実相を報(しら)せ、文化を植付けんとするものである。
 一方、此のラヂオに依る悪意的対外宣伝になると、嘗ての浦塩及ハバロフスクからの赤化宣伝放送、上海事変当時の南京の日本語に依る怪放送等、未だ我々の記憶に新らしい恐怖を数へ上げることが出来るのである。殊に欧州の如く多くの国が接壌(せつじやう)してゐる地方では、各国は此のラヂオに依る悪意的国際宣伝の防止に日夜腐心してゐる状態である。
 ラヂオと似てゐるものに放送無線電信がある。即ち新聞ニュースを世界各国に一度に無線電信に依つて伝達し得るものであるから、一国内の新聞紙と同様一国の事情を世界に伝へるものである。是に於て、放送無線電信は世界各国共に之を国家の情報政策の下に於て対外報道、対外宣伝の用に供してゐる。而して其の内容は大通信社に作成せしめるもので、之が一名対外新聞放送と称せられる所以である。
 今通信社と云ふ言葉が出たから、一言通信社に付て説明しよう。
 新聞社の華々しさに比べて通信社なるものは殆ど一般世人が其の組織や働きを知らない。通信社は最初新聞の補助機関として、就中高価な外国電報を独立で購入する負担に堪へ得ず、況んや自社の特派員の通信のみには頼り得ない多数の新聞社に対して、外国新聞電報を比較的安価に供給する機関として生れた。其の後多数の新聞社が共同して此の通信社の制度を益々活用したことに依り、通信社は次第に発達して今日我々が新聞社で見たり、又はラヂオで聞いたりするニュースの大半は此の通信社のニュースであつて、通信社なるものは何れの国でも情報報道上極めて大きな作用を為すに至つてゐる。其の結果は一国を代表する所謂国家的代表通信社(ナショナル・ニュース・エージェンシー)の出現を見、之が各々自国の新聞の報道を支配するとともに、国際的には強大なる通信社相互が結んで世界通信網を形成し、ニュースを交換することに依つて他国の新聞をも支配するに及んで来た。即ち英国の「ロイテル」、米国の「A・P・(アソシェテッド・プレス)」及「U・P・(ユナイテド・プレス)」、仏国の「アヴァス」、独逸の「D・N・B・(ドイッチェ・ナハリヒテン・ビューロー)」、伊太利の「ステファニ」、蘇聯の「タス」等は夫々世界的通信社とし一国を代表し、所謂世界通信聯盟を結び通信界に一大勢力を形成してゐる。一の国家が世界の正しい且豊富な情報を蒐集し得るか否か、又自国を正しく世界に宣伝し得るか否か、一に懸つて通信社の活動に俟つことが多い。此の点よりして独逸の「D・N・B・」、伊の「ステファニ」、蘇聯の「タス」の如きは全く国家の機関として活躍してゐる。
 我国には曾つて比較的大きな二つの通信社が対立し、各々対外的にも対内的にも夫々の系統に拠り、対立競争を続けてゐた。其の結果やゝともすると全く相対立するやうな報道が新聞紙上に現はれ、我国の真相が内外に十分に諒解せられず、或は我国の正しき意図が海外に誤伝されたやうな実例が少くなかつたのである。夫の満洲事変の際、帝国の真意が外国に捕捉され難かつた為に、我国が如何許り不利な立場を忍ばねばならなかつたか、又之に乗じて支那では宋子文が真茹の無電台に立籠つて迅速に各種のニュースを世界に放送し、自国の立場をどれだけ有利に導いたか。思ひ起せば真に慄然たらざるを得ないのである。
 尊い数々の経験は識者の声と相俟つて漸く我国に於ても最近全国の新聞社と放送事業者の合作により同盟通信社の発生を見、通信事業の統合強化が完成された。爾来同盟通信社は全国新聞界の自治的共同機関であり而も我国唯一の代表的強力通信社として列国の代表的大通信社と共に世界通信聯盟を形成し、国際報道界に活躍して居り将来の発展を刮目されてゐる。

三 国策と情報宣伝竝に情報委員会

 凡そ政府が外交、内政、軍事各般の方面で正しい確固たる国策を樹て、之を周囲の情勢に照して最も適切に実施して行くには、どうしても内外の情勢に通暁し、最も正しい認識を有つてゐなければならぬ。正しい情報の上にのみ正しい外交、正しい政治が確立せられ、力強い国防が完成されるのである。内外の情勢に関する正しい認識なくして真の国策の樹立遂行は期し得られない。
 然るに情報の中には無用な報告、誤つた報道、誇張されたニュース等が多分に存在し得る。実情に対する不完全な認識、即ち不徹底な観察力或は不充分な批判力に依つて情報が正鵠を得ないことがある。或は特に何等か為にする不純な動機から、又は実質以上に見せかけんとして、情報が歪曲される例もないではない。故に情報事務が単なる情報の蒐集に満足してはならないし、又蒐集された情報を其の儘利用してはならない。個々の情報に就て、其の正しさを慎重に甄別検討する必要がある。而してそれは国家的綜合的見地に於て為されねばならないことは云ふ迄もない。
 国策の樹立遂行に情報が必要であると同様に、宣伝も亦必要である。宣伝の重要性に就ては、先に国際関係に於ても述べたが、国内的にも重要な地位を占めるものである。
 「民は依らしむべく、知らしむべからず」とは封建時代の政治の行ひ方であつて、現代の政治は「民は知らしむべし、依らしむべし」の主義でなければならぬ。即ち政治は民意を暢達し正しい輿論を土台として行はれるべきであつて、それには政府は其の政策を正しく一般に伝へて、十分な理解徹底を図ることが必要である。国民の輿論を反映せぬ政治は独善政治であり、国民の理解なき政治は仮りにそれが正しかるべき政治であつても、国民の不安乃至無関心は遂に其の実效を阻むであらう。常に国民に対して正しい知識を啓き、国政に対する理解を促して健全な輿論を培ふこと、更に国外に対しては国の真意を伝へ、国論を反映させて、国際的諒解を容易ならしめること、茲に宣伝政策が政治の重大なる要素たる所以がある。
 国民に対する宣伝の根本としては、一面国民の知識を啓くと共に国家、国民の大目的、進むべき目標を国民に提示して、以て国民の精神的団結と国民精神の作興を図ることが特に肝要である。茲に国家の宣伝政策の中に一般的な国民教化、国民精神の作興の含まれる所以がある。独逸の宣伝省は其の名称を「国民教化宣伝省」と云つて、国民精神の作興と国民教化を其の最大の目的としてゐる。
 対外的宣伝に就ても、一国の文化や産業其の他国の真相を外国に正しく伝へることは各国の相互諒解とこれに依る真の国際協力を実現し得る所以であり、茲に文化宣伝、観光宣伝等も重大なる意義を有つてゐる。
 国家にとり情報宣伝が重要性を増すに従つて、多くの国では情報宣伝政策を専門的に考究し、又実施上其の統制を図る機関を設けるに至つたのは当然である。我国に於ても、外務省に情報部が設けられて帝国外交の遂行に遺漏無きを期し、又軍事普及宣伝の必要に応ずる為に陸軍省に新聞班、海軍省に海軍軍事普及部が設けられてゐる。一方我国の文化を海外に紹介宣伝する意味に於て外務省文化事業部や鉄道省の国際観光局も設けられてゐる。併し之等の制度には其の仕事に於て一定の限界があり、立場が限られてゐる。
 情報宣伝が前述のやうな理由から愈々重要性を帯びるに至つて、国家的綜合的見地に基く国家の情報宣伝政策の確立と其の統制を図る必要が痛感せられて来た結果、其の為に何等かの常置的な機関が設けられねばならなくなつた。昨昭和十一年七月に内閣に情報委員会なる制度が設置されたのは全く其の為であつて、本年七月一日を以て満一周年を迎へるのである。
 情報委員会は其の官制に依り、内閣総理大臣の管理に属し、各庁情報に関する重要事務の連絡調整を掌ることを其の職能としてゐる。今其の任務を三大別にして見ると、
 第一は「国策遂行の基礎たる情報に関する連絡調整」である。前述の如く内外諸般の政治行政の運営は正しい情報の基礎に立脚せねばならない。又災害なり事変の起つた場合、或は一朝有事の際適切な対策を講ずる上に於ては尚更のことである。是に於て各庁の情報を綜合して、正しい情報、詳しい情報を得ることに努め、蒐集された情報に就て委員会に常勤する職員に於て絶えず之が検討を行ひ、連絡調整を図り統一保持を期してゐる。
 第二の任務は「内外報道に関する連絡調整」である。国の内外に弘布されるニュースが正確公平でなければならぬことは言を俟たぬ所朗であるが、各庁が提供する所の報道資料は、立場に依つて或は一面的判断に陥る虞がないでもない。是に於て委員会は政府内各部門の発表の内容を連絡して報道が豊富にして而も政府の一体性を害することのないやうに、又ニュースの正確公平を期する為に適切な措置を講ずることに努めてゐる。
 第三の任務は「政府の行ふ啓発宣伝に関する連絡調整」である。近代政治に於ける啓発宣伝の重要性は前述の如くであつて、情報委員会は政府の行ふ宣伝に関する一般的方策を作ると共に、又各庁の行ふ啓発宣伝の統一を保持せんとするものである。卑近な例を挙げるならば、現在各庁に於て「何々週間」「何々デー」の名の下に行はれる行事が数多く而も無統制に行はれてゐるが、之等を統一して其の効果を大ならしめる必要がある。そこで之等の統一を保持する為の基本的方策が情報委員会の連絡調整に依り最近決定を見た。又本「週報」も、公正なる輿論に基いて政治の行はるべき一端として政府の政策其の他国政に関し最も正確且権威ある事項を発表し、以て政府と国民との接触を緊密にし公明な政治の遂行に寄与しようとするもので、情報委員会で各庁提出の原稿を綜合的見地から連絡調整して、其の内容の統一を保持してゐる。
 情報委員会の組織は、内閣書記官長を委員長とし、委員には各省次官及特に情報事務に関係深い部局長、例へば外務省情報部長、内務省警保局長、陸軍省軍務局長、海軍省軍事普及部委員長、逓信省電務局長等が委員に任命されてゐる。又各庁情報事務の主管課長から幹事が任命されてゐる。更に此の委員会曾の特色は委員会に専任の事務官と共に外務、内務、陸軍、海軍、逓信の五省から一名づゝ事務官が委員会の事務所に常勤を命ぜられてゐて、日常各庁情報宣伝の連絡統制の事務を執つてゐることである。
 情報委員会の職能は右の如く各省の情報宣伝をして一省一部に偏することなく真に政府総掛り的のものとしようとするものであるから、本委員会は各省に対立するものではなく、各庁を包摂して各庁の情報宣伝政策の円滑と統一を図らうとするものに外ならぬ。我国の情報宣伝政策上此の情報委員会の現在の機構を以て固より足れりとは云へないが、本委員会は各庁情報宣伝事務の連絡調整を図り、其の結果を国策遂行に反映せしめるやう努力して居るものである。