第二号(昭一一・一〇・二一)
  電力統制の必要性              逓 信 省
  観艦式に就て                 海軍省海軍軍事普及部
  西班牙内乱を繞る欧州の政局(二)    外務省情報部

電力統制の必要性  逓信省

   一 電気の使命

 十九世紀の産業革命は機械の発明に依つて完成せられ、二十世紀のそれは電気に依りて成就されると称せられてゐる。近時世界諸国が電力政策の確立に腐心してゐるのも、かゝる時代の実相を反映してゐるに外ならぬのである。
 我国に於ては今日電燈は全世帯数の九割に達し、其の普及率は世界第二位を占め、工業用動力も其の九割近く迄電化せられてゐる。併し乍ら之は表面上の数字に過ぎないのであつて、実質的に観るならば、電燈、動力を合せた人□一人当りの消費量は、僅かに世界第九位を占むるに止まり、英、米、仏、瑞西等のそれに比して遙かに及ばず将来開拓の分野が大きい現状である。然るに電気科学の進歩発達は一瞬と雖も止まらず、近時勃興して来た電気化学工業の如きに在つては、電気は実に原料たるの役割をさへ演ずるやうになり、電気を外にして産業を語るべからず、正に絢爛たる電気時代を現出するに至つたのである。
 目下逓信省が実現の為全力を挙げて調査に当つてゐる電力国営問題も時代の要求として正に生る
べくして生れ出でたるものに外ならないのである。
 「真の意味の天然資源とは使へども尽きざる水力と科学的頭脳以外にはない。我々は水力を電力に
化し、依つて、資源を製造するのである。」と或る科学者は言つてゐる。我国の天然資源の乏しきを嘆
ずる者は多いが、かくの如く大切な水力に恵まれてゐることを何物にも増して天に感謝する者の少な
いのはどうしたことであらう。現に此の天恵を利用して、化学と水力電気が創作した硫安、石灰窒素、
曹達工業、アルミニウム等は、何れも近頃まで全部輸入に俟つた化学工業の製品であるが、国防上将
又産業上大いに其の振興を図らねばならぬ物のみである。更に電化の効用は石炭、石油等の燃料資源
を愛惜する燃料国策の点からも極めて大切なことである。我国の石油は一年の総産額は米国の一日分
の七割に過ぎないといふ貧弱さで、石炭液化工業によつて供給の独立を計る等対策の樹立が緊急事と
されてゐる。石炭とてもまだ我国内の生産量は決して豊富といふ事が出衆ない。今この石炭液化工業
が確立されるとすれば、その消費量も夥しいものとなるから、石炭も已むを得ざる用逸の外は費やさな
いやう心すべきで、所謂発電の水主火従は我国の電力政策としては不動の鉄則でなければならない。
また薪炭についても我国程多量に費す国はないのであるが、現在の状態では植林は到底伐採に追付か
ず、而も建築及工業用材料としての木材の需要は増加する一方とすれば、電熱の利用によつてこれ
が消費の節約を計ることが肝要となつて来る。
 近時疲弊せる農村振興の要望強きものがあり、これが手段として農村電化の必要が要求され、こ
れに依つて産額を増加すると共に、他方其の余剰労力を利用して副業の奨励、工業の分散を期せん
とするに至つて居るが、電気の重要性はかく種々の方面に於て加重されるばかりで産業に、社会生
活に、国防に、その特性は到る所に無敵の威力を発揮してゐる。世界の水力国たる我国はこの電気
時代の機運に際会して、確固たる電力国策を樹立し、水力開発上の都市計画を定め、低廉な電気を
豊富に供給して国利民福の増進に寄与する上に於て、苟くも誤る所なきことを期せねばならぬので
ある。

   二 電気事業現状の弱点と電力統制の必要

 我国の電気事菓は、明治二十年東京電燈曾敢が圃産七十五燈用凝電機を用以、電燈の供給を開始しね
のを濫腹として今日の凝展を途げたのであるが、現在では事業者絶敷八官三十、凝電出カ、水力三首
二十七常キーワツト、火カニ官十入苗キーワツト、合計丘官四十五常キ?ワツト、その絶資本金出ナ
九億潮、団定費本額五十七億胤を超ゆるの感況を不してゐる川
而してその吸壌池樫に於ける政府の鹿督方針は主として保安行政時代、傑護助長の時代を経て、暗

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和六年電求斡薬法が改沌され、漸く統榊帽代ほ入つて今臼に寅つてゐるが、更に敢近の牡禽憫勢、団
際憫勢に照磯して考へる時、なほ改むべき鴇多の鮎む材し、1のせせでは兆碓耗米、公益串菜たるの
位命を完金に果し得るものとは雷ひ靴いものとなつて尉るのである。
帥ち費行政の日機は究極する所低戊な電銘む胤常に供紛する1とであ鼻之が名には水盈滋の
娃命む計らねば卒り恥0現行節第法の狐つてゐる朗も回よらそ乙にあるのであるが、電力閑策の日
標は霊芸の保絶助長、椚椚常の暗批檜湛と云ふ粘からばか多でなく、岡民艶済上及凶防上の見地
からも見舵さねばならのので、乙乙に紬溌形態の椴本から改めて帝吋味の必要が生じ<凍たのであ
る。
以上の婚な料粘に立つて引粁制皆吟味して鬼やう。
ハl)我圃噂−の天然資混たる水カの合捜鞄開教転難なりと
水カの閑敬む沓利を念とする多数の私企米に委ねる阻阜、或ひは日前の珠第に桝はれ、或以は頼
亙協制の煩弊を漑ひ、粥歩的閑磯を怠る等、特桐河川の綜合的、有機的利用む徹底し雑い械があ
る。
(〓)料金を低顔にし且国民生活及購薮碁襲の夢豊に即した霊違切な料金政史を軍し拉いりと
岡民銀油の必顧である囁筑の料金は糾密る隈阜低廉に、供給條件は衝卒なるを宴し、又共確売発
の方両に在つては、之ほ倦存する各種熊発の態横ほ應じ、各々其の虞を得るやうな料金政兼む加塊
する串が、公恭串第としての欝然の黎帝でなければ字品。飴るに各個の余発が分立蹄凝して供給組
挽が蹄盛一せられの現胱では、忠衷料金は不靡壷え料金政発の妙味を凝拭する串が望み難く、
\〈
ノ〉」
且つ動もすれば料金は原倍の南いものに牽制牽引せちれ、億下を阻む蛾さへある。
ハ≡)・個々分食の企費形態は符卒を理想とする公孟日均に副はぬこと
昭気邦半の紳沓は預め一定の計尭ほ耗かず、概ね自飴の額壌に葬ねて許可せられて今日に至つて
ゐる錫、沸発の親横、組械、和互鞠係等ほ於て、著しく均衝を失し兢一聯絡む政いで、各個別々を
灸紫締騨む替む貸憫であつて、各個企策に封する業藩、食計、料金等ほ如何に頗密な鹿督を行つて
も、朗漁佃別貴義、分立主義の埼内で可及的に料金の低下、サービヌの改事等を淘る乙とが出凍る
陀渦ぎず、叉陀備の朗衆的統制も柵品仰上困鞄・最さ膠である。斯の如きは綜合鯨こを理想の形放
とする電気辟済の掃導原理に照らし、牌叉公非布発の黎靖ねる衝平と公益の理想に鋸み泡械であ
るL
(四)典村政策の賓行曙難なこと
坪近盤材閉増が斉しく釆要性を加へ、邦の解決の掛寿碓立が沌く要望せられてゐる折柄、低廉な
南気を供給して盤村に於ける囁戴利用の範駒を擁大し、紳済の更生額普周るの必妥は弊切なもの

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があるのであるが、現行制皮の如く僚利浪求を筋一日礎とする企栄形態の下では到底所翔の日的は
澄せられない。蕊し般村電化政貸の超行に常つ<は、電筑横辟に封する配窓は固よ阜、時とし<は
料金に於て僚利を鶴桃する要があるからである。
ハ五)同防目的の淫成に支曙あること
戦時に於て賓源動貝を敏速ならしめ<各穫髭紫の原動カである電力供給の碓保と、之が設僻の完
各な防衛方法を構ずる要ある乙とは改明を供たない朗であるが、其の蟹行は卒時に統一ある供電組
椅を完備する乙とに依つて初めて可憶となるのであヵ、更に水力資瀕の最大隈度の開敬は石泉其の
他の燃料賓源を変惜して、有串に備へる所以であるばかヵでなく、柴富低廉な電カを供給し<固防
の租幹となる宰常譜エ菜の凝撞を助長するが如き乙とは、凱れも閑防上不可故の間題であるが、上
述のやうに沓利本位の民螢企業群立の現胱では到底之を期待し得ないのである。
(穴)其め他の弱鮎
電筑事米はエ作物の施設保守等に閲し、種々の特樺を怒められてゐるが、互大賓本む擁する螢利
轟策であるといふ乙との角に、度々串を構へる者が出で、食にエ事の遽超とか不測の出費等有形飯
形の択審を漠る革例が稀でない。又公約金其の他の名日で種々の負拇も飴俵なくされてゐるが、而
も此の種の負蛸は究梯する所一般帝用家に封するサービヌや料金等の上に反映し、反公益的結果む
軒すものである。斯様に観て衣ると、著し此の上圃家意絨を明にし、現状に統制理禁二歩む遊め
るとしても、どうしても現在の企菜形態の改革に手を馳めねば賓行困難である事が察せられるので
ある。而して此に銘紀せねば軋ら氾1とは、我囲電来の源ねる水力郎本凍駒家天輿の費探であつ
て、水力凝電はもともと固絞自ら経沓すべきであるのむ一時私企発に特許し凍つてゐるに過ぎ氾と
云ふ乙とである。
三電力統制方策
小′
電力統制の紹封的に必要である朗以は上述しカ温阜であるが、其の方策に就て各方南に論訊されて
ゐるものに左の如旦蘭案がある。
民轡革麦基調と
ナる統制方宋
民沓を共駒とする集の代表的なものとしては(イ)五大電力曾敢合併轟と
(こ特殊曾敢尭を奉げる串が出水る。
(イ)五大雪力禽敢合併轟
本尭は本州中央に於て、十五億の固定費売を擁し仝明の大牛を占める凝電カを有してゐる東京
電燈、来邦電カ、大同電カ、日本電カ、字治川電窺の所網五大電力倉敢を合併して、凝迭電聯系
の確立、負荷の向上、預備設備の節減等に依ら略本邦電気節菜統制の日的を壇しょうとするもの

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である‘
ハロ)特殊粛敢姦
本稟は賓行上の便党の粘から民僚の兆調の下に眈存節米む打つイこ丸とした特殊禽牡む作え
帯菜統制の蟹を拳げやうとするものである。丙して方法としては飛悶な舵幣機柄を作阜、開毅的蛮
求を兜行せしめやうとするものである。佃政舶に池中の株式を所有させて所謂牛せ牛民的なもの
にしょう与るものも考へられてゐる0
園せ盈基調と
する統制方鐙
現行制度上の譜種の財鮎む赴正して、輿の図豪日的を撞しやう・与るには
結局企菜形態を図潜とするの外なしとして主粥されてゐるのが囲鮮巣であ
る。而して図沓案にも左の洩ム(ィ)閑有固潜案と(こ民有固怨彙のこがある。
ハイ)囲有也歴官轟
本轟は串薬総脅柿と典に設備の朗有樺をも併せて図に蹄展せしめ、完仝に図家の手に依つて凝
法電串栄の遊常む魚さうとするものである。
(ロ)民・軍閻官薬
本案は設備の所有は堆ら民間に委ね串栄鮭沓の中梶のみを図衆の手中に収めやう与る集であ
る。遽侶省の民有駒必巣の骨子を不せば左の組である。
山囲沓の範拘を敬迭電串発とし、之に必要な詑備は設備禽敢に提伏させる。
拗出薫の許僻に舵ては演常な耗準を法定して、朝野の柄戚を集めね許債奔貝倉に附請し公
正な許僧頼を決定する。何敢倍に就ては敢債梯者の横益を審せ氾やうに考慮し、惧重に且妥昔
な措抵を辞ずるい
桝政腑の魚す卸賓電気料金は灸般的に低減均術む岡るのは固よ鼻、敢禽政発、蔵薬政発等の団
家意響加味する乙ととする。
叫官民各方南の奔貝から成る電力審熊昏を設けて、凝迭電凝備の建詑計壷、電力料金其の他電
力政策等に槻し諮間に答へ、建韓む鹿させ、曾民一金の下に理想的遅沓を為さう与る。
桝政貯は詑備曾牡に封し設備倣用の封僻として和曹の使用料む交付する。投備使用料の算定に
骨つては設備の速設錐持等の方南に梯つね息最の企菜努カを反映せしめるやう考慮する。
倹ン備曾敢は政腑の樹立する凝蓬電計壷に基いて、絃備の赦設保守を魚す義務む有し、其の業
♯の薙行を容易ならしめる食土地使用資金調達等に槻し渚種の特樺を輿へられる。何必要に聴
じて附堺栄務をも行以得るもの与る。
M電力噂管の魚特別倉計む設ける。
電力翻沓は財政日的を有するものでない趣旨の特別禽計と希し、収支の吻合を明にして其の

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網潜む合理的ならしめる。
樺n方財政に及ぽす髭側簡に此ては和常考慮する。
電カの固螢に依つて可及的地方財政に歳入秋昭む生ぜぎるやう考慮し、電気串策柑別浄計に
於<も相常の方法を諦ずる乙と与。
桝配電串米は公沓叉は氏脅に委ねるが、配電囁域の整理統合とか、知繋料金を通じて行ふ料金
乾督の徹底等に依つて電力困沓の楠紳里質せしめる成配慮する。(完)